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#コスプレ
#ドS
#言葉責め?
「……本当に、来たのね」
翌日の日曜日
私のマンションの玄関には、数つの大きなキャリーケースと、それを持って平然と立つ真壁くんの姿があった。
「約束ですから。今日から俺、ここの住人なんで。よろしくお願いしますね、怜さん」
彼は私の許可を待たず、土足同然の勢いで部屋へ上がり込む。
昨日までは私一人だけの、静かで完璧な「聖域」だったこの空間に
男物の靴が並び、彼のシトラス系の香水の匂いが混じっていく。
その事実に、心臓が嫌な音を立てて跳ねた。
「ちょっと、勝手に寝室を見ないで!荷物はそこの客室に置いてちょうだい!」
「え? 夫婦なのに寝室別なんですか? 疑われますよ」
「偽装でしょ!? 普段は別々に決まってるじゃない!」
ムキになって言い返す私を、彼はどこか楽しげな眼差しで見つめてくる。
「まあ、いいですけど。……それより、お腹空きません? 契約成立の祝杯、あげましょうよ」
真壁くんはキッチンへ向かうと、手際よく冷蔵庫の中身を確認し始めた。
……意外。この子、料理なんてできるの?
仕事中の不遜な態度からは想像もつかない、慣れた手つきで野菜を切る背中。
その広い肩幅を見て、一昨日の夜の熱い感触が脳裏をよぎり、私は慌てて首を振った。
「……あ、あの。コスプレの衣装とか、勝手に見ないでよ。クローゼットの奥にまとめてあるんだから」
「分かってますって。見たいときは、怜さんが投稿用の撮影してるときに覗きに行きますから」
「なっ……!?」
背中を向けたまま、さらりと言ってのける彼に、私は顔を真っ赤にして立ち尽くす。
リビングのソファに座っていても
キッチンから聞こえる包丁の音や、彼の存在感が気になって仕方がなかった。
◆◇◆◇
一時間後
テーブルに並んだのは、彩り豊かなパスタとサラダ。
「……え、美味しい」
「でしょ? 胃袋掴むのも、契約のうちかなと思って」
真壁くんは私の向かいに座り、ワイングラスを傾ける。
会社では「氷の女王」と「生意気な部下」。
でも、ここでは「偽りの新婚夫婦」。
この一週間で、私の生活は劇的に変わってしまった。
目の前でパスタを口に運ぶこの男は、味方なのか、それとも私を破滅させる悪魔なのか。
「……ねえ、真壁くん」
「なんですか?怜さん」
「会社では、絶対に、絶対に今まで通りにしてよ。……もしコスプレのこととかバラしたら、その瞬間にこの契約は破棄だから」
「分かってますよ。スリルがあったほうが、面白いですしね」
彼は不敵に笑うと、テーブルの下で、私の足を自分の足で軽く小突いた。
オフィスでの冷徹な仮面を維持できる自信が
早くも崩れそうになるのを感じて、私はワインを喉に流し込んだ。
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