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噯 ロ .
噯 ロ .
初めはただの転校生からだった。
物覚えも早く技量もある。誰にでも優しくて懇切丁寧。
「いい人」多分みんながそう思う。
それでも、誰とでも仲を縮めることができるはずの四季は何故か近づけなかった。
今思えば本能が逃げろと警報を鳴らした結果なのだろう、けれどもあの時の四季には気付くことができなかった。
凍えるほどに冷たい眼差しに。
「…えぇ、頼むわね」
「わかった」
そんな声が路地裏から聞こえた。
たまたま練馬区に援護に来ていたその日は、偶然にも早めに終わったがために自由時間になった。
そんな中、外出届を出したのは俺と薺さんだけだった。
聞き覚えのある声だったから誰なのかとバレないようにそっと覗けば、薺さんがいた。
知り合いなのだろうと思い、その場を離れようと視線を動かした。
俺の目に写った話し相手は、桃太郎だった。
「ッ…」
見間違えるはずがない。
だって重要人物だと真澄隊長が言ってから、鬼を惨殺する一般市民にも危害を加えている。
そんな桃太郎だったから。
ただの隊員じゃない、桃太郎機関の隊長を任されている桃太郎だったから。
互いの正体に気付いていない可能性は0に近い。
薺さんだって資料を見てたから。
じゃあ俺と神門みたいな関係なのだろうか…?
きっと俺の本音は大方の予想はついているんだろう、でも俺自身がそれを否定したかったから気付いていないふりをしながら息を潜めて続きを聞くことに専念した。
「ふ…にしても鬼は馬鹿なんだろうな」
「こんな直ぐ側に居る内通者に気付かないなんてな」
「あら…そのバカの中に私も含まれてるんですけれど」
「お前は、堂々と俺に直談判してきたじゃないか」
「鬼機関の情報を伝えるのを代償に、後ろ盾になってくれって」
その言葉を聞いた瞬間頭が真っ白になった、と同時にやっぱり。と思ってしまった。
彼女は内通者だった。
遊摺部のように脅されていたんじゃない、自ら内通者になることを望んで行った。明らかに黒だった。
ムダ先に報告しなきゃ。と 二人に背を向けて地面を蹴った。
はずだった…。
「気付いていないとでも、思ったか?」
「っ…!」
首に注射器を迷いなく刺されて大量の血液を抽出された。
貧血によって動けなくなった四季は焦りを含んだ目でじっと肩を掴むその桃太郎を見た。
「…一ノ瀬四季じゃない」
「どうするんだ?コイツ」
「話を聞かれていたら困るわね…」
「殺すか?」
冷たい双眸が四季を貫き、何かを思いついたように口を三日月型に歪めて、開いた。
「私の身代わりになってもらいましょ」
「身代わり?」
「えぇ、一ノ瀬あんたは知ってるでしょ?」
「最近内通者が居るんじゃないかって噂になってるの」
「あぁ!そういうことかよ」
「えぇ…」
予想がつく、このあとの言葉を。それでも聞きたくなかった、桃太郎に抜かれた血液のせいでうまく体が動かせず、壁にズルズルともたれ掛かる。
「私に為にあんたは追放してもらいましょ」
「鬼機関顔が良いのが多いのよね〜」
「出来ることなら私も、イケメンは殺したく無いし」
「じゃあ俺の部下呼ぶか」
「何の能力だったけ…?」
「あぁ…猫咲波久礼みたいな変身だよ」
やめろ。と声に出そうとしたのにも関わらず口からは掠れた声だけが溢れた。
その声に青筋を浮かべた薺さんは俺の腹に思い切り蹴りを入れてきた。
桃太郎機関でも鬼機関でも習得したのであろう人を苦しませるのに有効な蹴りで。
「がッッ!!!…ぅ゛」
口からは血が唾液と共に飛び出して地面に飛んだ。抵抗もできずに数分が経過した。
慌ただしく足音を立てて桃太郎が来た、さっきの話から推測するに…ヒラの隊員。そして変身の能力を持つ隊員。
顎で俺を刺す隊長の命令をちゃんと聞き俺の姿声を模倣した隊員。そこから行われたのは眉を歪めてしまうような茶番劇だった。
『よぉ、調子はどうだ…?一ノ瀬』
『お久しぶりですね、隊長』
『犬としてちゃんと潜んでるか…?』
『当たり前ですよ…俺の飼い主は隊長だけですから』
『なら、アイツらの情報を言えるよな 』
『もちろん!』
『練馬区の〜は〜〜で……』
『良くやった…』
『お前は本当によく使えるスパイだな… 』
『だって俺自身が隊長に直談判したんですよ?』
『当たり前じゃ無いですか〜』
ピコンッッ
その電子音が聞こえた途端に下卑た芝居は終わって、携帯端末を持った薺さんは口元を吊り上げた。
それと同時に俺を模していた隊員は血飛沫を飛ばしただの肉塊となった。
「これ、提出するわね」
「や゛、…めで…」
「…?嫌よ」
「嫌に決まってるじゃ無い、あんたは私に為に嫌われてもらうの」
薺さんの笑った顔を最後に俺の意識は途切れた。ガンッと聞こえた音はきっと俺を思い切り殴打した音なんだろう……。
届かないのに俺は「助けて…」と脳内で反芻していた。
急に思いついた四季君嫌われ!!
多分きっとハッピーエンドだと思う…
一ノ瀬先生の方は明日出すね!!!
コメント
2件
嫌われ…四季くんには申し訳ないけどめっちゃ好きです、…笑 ハピエンか!ちょっと安心、でもバドエンでも歓迎なので楽しみです✨️ この小説も先生の方も続き楽しみにしてます☺️
心にとてもないダメージが...