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風宮 むぅまろ🦇🍀︎ 🍬🍚
無限城の冷たい畳の上、胡蝶しのぶは絶体絶命の窮地に立たされていた。目の前で飄々と笑う上弦の弐・童磨。その圧倒的な力に抗う術もなく、彼女は床に組み伏せられる。童磨は慈愛すら感じさせる手つきで、しのぶの隊服を無慈悲に剥ぎ取っていった。抵抗しようとする指先も、氷の血鬼術による凍てつきと疲労で思うように動かない。
「ねえ、しのぶちゃん。毒なんてそんな辛いことしないで、もっと楽しいことをしようよ」
童磨が取り出したのは、妖しく光る液体が塗り込まれた異様な「モノ」だった。それは鬼の再生能力と、理性を狂わせる極めて強力な媚薬が調合された、この世の理を無視した毒物の一種。それがしのぶの内に侵入した瞬間、彼女の脳内は白い閃光に包まれた。
数秒前までの激しい憎悪や殺意が、暴力的なまでの快楽に塗り潰されていく。血管を駆け巡る薬液は、彼女の心臓を早鐘のように打ち鳴らし、肺からは熱い吐息が漏れ出した。
「あ……あぁ……っ!」
蟲柱として、姉の仇を討つために積み上げてきた全ての矜持が、ドロドロに溶けていく。瞳からは焦点が消え、潤んだ瞳はただ童磨の顔を追い求めてしまう。震える指先は、さっきまで引き裂こうとしていた男の肩を、無意識に縋るように抱き寄せた。
「いい顔だ。今の君は、どの柱よりもずっと素直で可愛いよ」
童磨のささやきが、今のしのぶには甘い福音のように聞こえる。頭ではこれが敵の罠であり、屈辱的な敗北であることを理解している。だが、身体の奥底から突き上げる熱情が、拒絶の言葉を飲み込ませ、代わりに快楽への渇望を溢れさせた。
意識の端で、守りたかった隊士たちの顔や、姉の微笑みが遠ざかっていく。残されたのは、氷のような冷たさを持つ男と、それに相反する己の内に燃え盛る熱い渇きだけ。
胡蝶しのぶは、毒を操る柱でありながら、最後には自分自身の抗えない「情欲」という毒に溺れ、無限に続く城の暗がりのなかで、ただ快楽を貪る人形へと堕ちていった。
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