テラーノベル
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まぶたを開けた瞬間、光が刺して、私は反射的に顔をしかめた。
柔らかくて、でも強い光。
人工のものじゃない――太陽。
……本物の、陽の光。
石化する前、
私は”未来”を何度も視てきた。
でも、こうして本当に「目を開けて見る」のは、
とても久しぶりで、少し怖くて――
でも、美しかった。
目の前にいた男の人が、私をじっと見ていた。
白衣。乱れた髪。強い目。
……彼は、知っている。
私が、最後に描いた”未来”の中に――
この人の姿が、あった。
「――千空だ。」
その人の唇がそう動いた。
私は読んだ。
千空。
科学の人。
私を――見つけた人。
私は喉を開けようとしたけど、声は出なかった。
……元々、出したことがない。
でも構わない。私は”描ける”。
手がかすかに震えながら、胸のスケッチブックを開く。
鉛筆はかろうじて握れた。
「これは、あの日見た未来」
そう書くと、
千空は少しだけ驚いたように眉を上げて、
それから、静かに、確かに――笑った。
「へえ……面白ぇじゃねえか。」
その一言が、すごく優しくて、
私は胸の奥がじんわり温かくなるのを感じた。
もうひとり、隣に立っていた長髪の男――ゲン、という名前らしい――が、
ノートを覗き込んで言った。
「ふふ、どうやら僕たち、君に予言されてたみたいだね? 美亜ちゃん。」
”未亜ちゃん”。
名前を呼ばれたのは、久しぶりで。
少しだけ、指先が震えた。
彼らは騒がしくなく、
でも私のことを「特別視」もしなかった。
私を「預言者」でも「奇跡の少女」でもなく、
ただ一人の”人間”として、見てくれている気がした。
石化前の世界では、
私はただ「未来が見える女の子」として利用されていた。
でも今、
ようやくちゃんと、「未来を見た私」を受け入れてくれる人たちに、出会えた気がする。
私はもう一度、ノートに書く。
「今度は、自分のために未来を描きたい」
千空が頷く。
「なら手伝え。”化学の未来”を一緒に描いてくれ。」
彼の言葉に、
私は、わからないまま――
でも、静かに頷いた。
声はなくても、
この胸には、確かに新しい”音”が鳴っていた。
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