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ハンクはライアンの出ていった扉を睨む。


「鬱血痕にみえたろ」


ハンクはソーマに聞いているが答えが返らない。

ソーマは話題を変える。


「カイラン様がおられる邸でどう閨を共にするおつもりで?」


「任せる」


ソーマはため息をつく。カイランにはトニーという駒がいるのだ。そこにも警戒しなくてはならない。


「頻度は抑えてください」


ハンクから答えは返らない。

予定通りならば明日の昼にカイランが帰ってくる。こんな事態になるとは、元凶のカイランにはハンクの仕事を任せ馬車馬のように働かせよう。おかしなことを考えられないほど疲れさせれば思考も曇る。





夕食後の紅茶の時間、話しにくい子種の話はここでしてもいいかしら。私はハンクを見つめる。


「閣下、二日間子種をいただきましてありがとうございます。でもライアン様が診ると子種の状態が良くなかったと。閣下も聞かれましたか?」


「ああ」


そうよね。先に閣下と話していたのだから、そこで子種を確認したのよね。…どうやって確認したのかしら。思考に耽りそうになるキャスリンをハンクの声が呼び戻した。


「いやか」


定期的に閨を共にするのが嫌なのかと聞いているのよね。私は首をふる。


「いやなんて思いませんわ。また注いでくださいませ」


ハンクの目元は柔らかくなり頷く。


「孕むまで注ぐ」


良かった。ハンクはライアン様の話を聞いて納得の上なのだ。責任感が強いのね。面倒だと言われず安心したわ。


「今回は可能性が低いと、でももしかしたらいるかもしれないのです」


キャスリンは下腹を撫でる。もしかしたら実を結んでここにいる子を撫でる。ハンクは椅子から立ち上がりキャスリンに近づき、その手をとる。


「肩は痛むか?」


キャスリンはいいえと答える。薬が効いて動いても痛くはない。


「見せろ」


キャスリンは頷いて肩を開く。首を傾げハンクに見えやすい様にするとハンクは屈んで鼻を近づけにおいを嗅いだ。薬がにおうとカイランが疑問に思うと思ったのか。


「におわんな」


そう言って私のドレスを元に戻す。大きな手がくすぐったい。明日からはこの場にカイランがいる。こうして話すこともできなくなる。そう思うと少し寂しい。ハンクが頭を撫でる。するすると毛先まで、手触りが好きなのかしらとハンクを仰ぎ見る。そのまま口を合わせられた。顎を持たれ頭を固定される。ハンクの舌が入って私の舌を絡め合わせる、ハンクの唾液が上から注がれそのまま飲み込む。舌を吸い、くちゅくちゅと音をさせ舐め合う。気持ちいい。体の力が抜け下腹が熱くなる。手でハンクの服を掴んで引き寄せる。私の舌を咥えながら口が離れていく。とうとう舌も離れた。ハンクはまだ頭を掴み離さない。瞳が潤む、自然と口を開けるとまた舌を入れてくれる。食堂の中に水音が満ちる。やっと口が離れ、はあはあと荒い呼吸で息を吸い込む。ハンクは親指で私の唇を拭う。そのまま服を整え出ていった。私は立ち上がれず呆然と座っている。少しして意識の戻った私は近くに立つジュノをみる。驚かせたかと心配だったが落ち着いていた。しかし、なぜいきなりこんなところで口を合わせてきたのか。わからない。ハンクは何を考えているのか。残された私の下腹が疼く。



自室に戻り手紙を開く。夕食前にディーターから送られてきたのだ。兄がハインスの夜会に参加すると書いてある。婚姻してから一度もディーターには帰っていない。皆元気かしら。カイランの衣装は明日届くが私のドレスは当日になる。慌ただしくなってしまった。ハインスの夜会の後も社交は続く。小さいものには出なくても良い。大きなものだけ参加する。




昨夜はゆっくり休めたからか朝も早く起きれた。朝食を軽くとり、ゾルダークの家政の書類を読み一刻がたつ。そろそろ休憩するわとジュノと紅茶を持ちテラスに出ると門の方から馬に乗った騎士が走りこんできた。遠くて話し声も聞こえない、誰かわからないがカイランと共に領地へ行った騎士かもしれない。もう帰ってくるの?天気が良ければ馬も速い。ジュノを連れて階下へ行くとソーマがホールにいたので聞いてみる。あと半時ほどで戻ると報せに護衛騎士が先に帰ってきたようだった。

カイランの乗った馬車が邸へ入ってくる。扉を開けて使用人たちと共に出迎える。


「お帰りなさい」


馬車から先に降りたのはカイランだった。


「キャスリン!ただいま。何も変わりはなかったかい?」


私に近づき笑顔で返事をするカイラン。


「ええ、変わりはないわ。あちらはどうでした?」


邸に入りながら話をする。私達の後ろにトニーが続く。


「雨に降られたのは一度だけで後は天気は良かったよ、こっちより涼しいから過ごしやすかったしね。今度はキャスリンも一緒に行こう。町も案内したいし綺麗な湖もある」


なんだか機嫌が良い。一緒に領地へ?行かなければならない?顔に笑顔を張り付けてただ話を聞く。するとこちらにソーマが近づいてきた。


「お帰りなさいませカイラン様。旦那様がお呼びです」


カイランは表情を消し頷いた。後でまた話そうと私に告げ、トニーと共にハンクの元へ消えていく。私はそれを眺める。カイランの隣が苦痛なんて困るわ。ソーマがきてくれてほっとしてしまった。初夜の日からカイランが理解不能な生き物に感じる。彼は夫なのよ。私の夫、私の子の父親、人生を共にするの。心を強く持っていないと倒れてしまう。





ハンクは執務室の窓からカイランの帰還をみていた。馬車から降り妻に近づき笑顔で話す。それを見ながらカイランを呼ぶよう命ずる。


「ただいま戻りました」


「老公爵の具合は?」


「筋力が落ち疲れが取れず顔色が悪い。向こうの医師は老いはどうすることできないと、心穏やかに過ごしていれば良いとのことです」


ハンクは眉を寄せる。カイランを領地へ送る理由には弱い。


「領地は?」


トニーが後ろからカイランへ書類を渡す。


「絹製造の新しい工場を作る予定です。年々需要が高まり絹織物から衣料まで幅広くなりましたから」


書類をハンクへ渡す。


「土地は?確保したのか?」


カイランは言いにくそうに話し出す。


「スノー男爵領に広い土地があり安く借りられるようです」


「ゾルダークに土地がないのか?」


「いえ、ですが他領に中継地を置けば流通が…」


「却下だ」


ハンクは即断する。ゾルダークの物をわざわざ他へ運ぶなど、流通に男爵領は必要ない。スノーに旨味しかない提案だ。阿呆が。


「我領で探せ」


反対されるとわかっていたのだろう、カイランは食い下がることなく素直に頷く。


「スノー男爵とは手を切れ」


ハンクの言葉にカイランが黙る。アンダルとカイランの仲は長い。物心付く前からの付き合いだ簡単には切れないだろうが、ハンクの意思は伝えておく。カイランは諾とも否とも言えず黙る。ハンクはもう終わりだと手を振って示す。ソーマが扉を開けカイランを促し二人は出ていく。


「阿呆だな」


「却下されるとわかっていてなぜ聞くのでしょうか」


ハンクを知っていれば提案さえしない話をする理由は友情か、その妻への想いか他か。


「ライアンに時間を作ってゾルダーク領へ向かわせろ。見張りは継続だ」


また無理を言う主にライアンの都合も考えてくださいと諌めておく。






カイランは庭に出た。旅で疲れていたが気分を変えたかった。父は僕とキャスリンが閨を共にしてないことを知っている。公爵家の使用人を口止めなど僕にはできない。あの騒動の時の失態が知られていないのはなじみの御者が僕の言葉を信じたからだ。父やソーマに聞かれたら話してしまうだろう。なぜ、何も言ってこない。何かしら叱責は受けるつもりでいたのに。僕がいない間キャスリンに何か言ったのか。そんな風には見えなかった。アンダルには父に断られたとちゃんと言わなければ。父に打診する約束は守ったんだ。

笑い声に導かれ庭の奥へ進むと髪を風になびかせメイドと楽しそうに話すキャスリンが見える。真っ直ぐな髪を揺らして笑っている。一枚の絵画のようだ。

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