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「間違いないよ!あれは文明の煙だよっ!」
立ち昇る煙の色は白。
火事や何かしらの魔物が引き起こした魔法であれば、黒い煙が上がるはずだ。
「あっ。少し離れた所からも、別の煙が上がっています」
「ホントだ。これはいよいよだな」
「うん!第一村人発見だねっ!!」
それは所さんのやつやん。
何はともあれ・・・
「行こうか」
「うんっ!」「はいっ!」「漸くね」
一人輪を乱すモノはいるが、ぼっち歴が長過ぎたんだ。
許してやってくれ。
俺は転移魔法を発動し、煙の近くへとみんなを連れて転移した。
見えているところまでいけるって、この魔法ってつくづくチートだよなぁ。
「どう?」
魔力波による探査を行ったところ、聖奈がせっかちにも聞いてきた。
いや…聖奈も出来るんやで?
「反応はある」
「はってことは、何か引っ掛かるんだよね?」
「だな。引っ掛かっているのは、反応が少ないのに反応は大きいところだ」
一つ一つの反応が人族としてはみんな大きめなんだ。
魔族程ではないけどな。
「…そうなんだ。思う所はあるけど、とりあえず見に行こう?数が少ないのならそこまで脅威にはならないよね?」
「そうだな。思うところは気になるが、またハッキリしたら教えてくれ」
「異論なしです」
ミランも同意した為、俺達は反応へと向かった。
ここまで来て確認しないなんてないけどな。一応心の準備としての確認だよ。
「人だね」「人だな」「村よりももっと小さい感じですね」
俺と聖奈は見たままを口に出し、ミランだけがまともな感想を述べた。
反応は人で間違いなかった。
ただ、出発前のイメージとは程遠い、別大陸人の生活模様だった。
「えらく原始的な生活を営んでいるな…」
「あの服って恐らく手作りだよね?隙間だらけだし…」
「そういう部族なのでしょうか?」
服は何らかの植物を編んだ物を着ており、家は枝や葉っぱで造られている。
その見た目は、異世界人というよりもジャングルの原住民だ。
だが、なにか違和感がある。
何だろう……
「生活は原始的なのに、行動は現代的だね」
「それか…」
なるほどな。それが引っ掛かっていたのか……
原住民といえば、おまじないや特殊な宗教などがあり、非効率な装いや行動をするイメージがある。
だが、ここの暮らしにはその無駄が一切見られなかった。
建物は枝や葉なのに、レンガで造られた釜戸があるしな……
「チグハグだな」
「そうだね。現代人がツアーか何かで体験してるって言われたら納得しちゃいそうだね」
「もしそうなら仲良くなれそうもないな」
俺とは趣味が合いそうにない。
「一応剣は持っているみたいだから、気をつけて近づこう」
「そうだね。これ以上観察しても何も得られそうにないね」
「わかりました」
原住民観察ツアーは終わりを迎え、これからは接触ツアーの始まりだ。
身を潜めていた木の陰から姿を見せて、俺達はその集落へと近づいて行った。
「誰だっ!!」
姿を見せた俺達はすぐに見つかった。
まぁ…目立つからね。格好が。
俺に至っては顔つきが全然違うし。
すぐに余所者だと気付くだろう。
「俺達は旅人だ。話を聞いて欲しい」
「待てっ!近寄るな!そこで待つのだ!」
槍のような物を向け俺達を制止する男の口は、知らない言葉を紡いでいるように動いていた。
やはり大陸が違えば言語も変わってくるのだろうな。
「わかった。何を待てば良い?攻撃をされるのを待てばいいのかな?」
「くっ…貴様らは何者なのだっ!?」
俺は煽ったわけではない。
この男が俺達を見つけた時には、他の人達も俺達に気付き、何人かの男達が武器を手にして準備を始めていたのを、この視界に捉えたからこの発言へとなったのだ。
ちなみに少し離れた木の上から、弓のような物で狙われている。
ヒュンッ
俺達は男一人に女三人の集団だ。
男を殺せばどうにかなると考えたのだろう。
飛んできた矢は、正確に俺へと向かってきた。
パシッ
「んなっ!?」
まさか受け止めるとは思っていなかったのだろう。
男は驚きを隠せずに、目を丸くして身体を震わせた。
「残念だが、俺を倒すことは出来ない。わかったら武器を下ろして話をしよう」
「ふ、ふざけるなっ!みんな!やってしまうぞ!」
どうやら交渉は決裂してしまったようだ。
「「「おうっ!」」」
近くで機を窺っていた男達が武器を手に、猛々しく応えた。
「セイくん…相変わらずだね…」
「セイさん…交渉は私達に任せてくだされば……いえ。出過ぎた真似を」
やめろっ!俺は悪くないっ!
だって元々交渉の余地なんかなかったじゃないかっ!?
そりゃあ二人に任せたら、上手くいってたかもしれないよ?
でもさぁ…俺もネゴシエーターしたいじゃん?
「とりあえず、制圧するから待っててくれ」
「はーい」「治せない怪我は避けてくださいね?」
うん。一ミリも俺が負けるとは思っていないな。
まぁ当たり前か。
戦いは一分もしない内に終わった。
魔力は普通の人よりも多いが、特に魔法を使っては来なかった。
「こ、子供は!子供は見逃してくれっ!」
「頼むっ!妻は孕っているんだ!」
俺に敗れた男達だが、大きな怪我は負っていない。
今も元気に俺の足へとしがみつき、助命を懇願していた。
これだと俺が極悪非道な奴みたいじゃん……
「聖奈。任せた」
「はーい!みんなちゅうもーく!!」
俺は遂に匙を投げた。
初めから任せとけよと、ルナ様からの視線が背中に突き刺さる。
「というわけで、私たちは貴方達を害するつもりはありません。
わかってくれたかな?」
「あ、ああ」「済まなかった」
聖奈の説明は単純なものだった。
俺達は遠い地から訪れた冒険家で、この地を調べていたというもの。
説得には食べ物を使っていた。
食べ物を使った理由としては、このレベルの文明の時に起こる争いは、基本食糧事情に起因しているものが多いから。
聖奈は大量のパンを分け与えることにより、男達からの信頼を得たということだ。
そのパンを毒味ということで食べた一人から、美味しいという言葉が出た瞬間、この説得は成功を納めた。
「それで。私たちは話を聞きたいのだけど、良いかな?」
「勿論だ。勝手に襲撃と勘違いして攻撃した俺達にここまで良くしてくれたんだ。案内するから村に来てくれ。そこで話をしよう」
確かに聖奈の焼いたパンは美味い。
美味いのだが…俺の存在意義……
男達に案内されて村中に進む聖奈の後を、俺はトボトボと着いて行くのだった。
「へぇ。じゃあここ以外の集落については知らないんだな」
男達に連れてこられたのは、沢山の家屋が周りにある広場だった。
家と言っても、嵐にすら耐えられそうもないモノだが。
そこに村中の人達が集められ、聖奈が与えたパンを齧りながらこちらの質問に答えてくれていた。
「ああ。昔は交流があったみたいだが、それを覚えている年寄りはみんな死んじまったからな…」
「それは争いでか?」
「いや、病気だ。風邪をこじらせたり、怪我が原因の病だったりだな」
風邪と破傷風か。
風邪ももしかしたら蚊などが媒介する特殊なものかもしれないな。
俺は兎も角、ミランや聖奈のことは気をつけて見ておかないとな。
それにしても皆若い。
碌な医療などがなく、歳をとり免疫力や体力が落ちると、寿命を迎える前に病で死んでしまうのか。
原住民とか何とか言っていたが、その生活は現代人の俺からすると、とてつもなく大変そうに見えた。
「他の集落も似たようなものか?」
「ん?それは生活様式についてか?それなら似たようなものだって聞いているぞ」
「そうか。後一ついいか?他の集落はどの方角にあるんだ?」
俺の質問はそれで最後だった。
聖奈とミランも別の原住民から色々と聞いているようだが、それは後でゆっくりと情報共有しよう。
何故なら早くこの集落から出立したいからだ。
「聖。私、もう無理よ…」
「わかってる。直ぐにでも発とう」
ルナ様も、すでに限界のようだ。