テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
678
107
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「……あ」
向井は足を止めた。通路の天井、自分を見下ろすカメラのレンズと目が合ったからだ。その瞬間、背後から凄まじい足音が迫る。
心臓が跳ね上がる。向井は無我夢中で走り出したが、もつれた足が瓦礫に引っかかり、無様に地面へ倒れ込んだ。
「痛っ……あ、あぁ……!」
振り返った向井の瞳に映ったのは、愛用しているはずのピンクの髪を振り乱し、銃を構えてこちらへ突き進んでくる佐久間の姿だった。
一瞬で距離を詰められ、銃口が向井の眉間に突きつけられる。
「さっくん……?」
向井が震える声で呼ぶ。しかし、至近距離で見た佐久間の顔に、向井は息を呑んだ。
佐久間の瞳からは、大粒の涙が溢れ出し、頬を濡らしていた。歯を食いしばり、顔を歪め、指先を震わせながら、彼は必死に「自分の右腕」を左手で押さえつけていた。
「なんでよ、、、一緒にまた外の世界で生きようよ、な、ええやろ、?」
絞り出すような声。だが、薬に支配された指は、無情にも銃の引き金に力を込めていく。
「ごめんな……あの薬のせいで、体が言うこと聞かないんだ……!」
佐久間は泣き叫んだ。殺意など微塵もない、あまりにも悲しい謝罪。
「Snow Manに入ってきてくれて、ありがとう。俺、お前に会えて……本当に幸せだった。大好きだったんだよ……っ」
向井の瞳からも涙が溢れる。死の恐怖よりも、目の前で壊れそうなほど泣いている「兄貴分」の姿が悲しくて。向井は覚悟を決めたように、そっと微笑んだ。
「さっくん、、、」
「ごめんな。何年経っても、俺たちは一緒だからな……」
佐久間の人差し指が、限界まで引き絞られる。
「今まで、ありがとう。……さようなら、康二。最後にさっくんって呼んでくれてありがとう。ごめんね、愛してる」
――カチッ。
乾いた銃声が、冷たい廊下に反響した。
崩れ落ちる向井の体を抱きしめることすら許されず、佐久間はただ、自分の放った弾丸の重さに絶叫した。そうして血の海に倒れている向井の元を離れて次の逃走者を倒す為に歩いていく。