テラーノベル
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第7話
「……ッ!」
私は、黒いナニカ――黒影に立ち向かっている。
かなりの数の傷を負った。
私の足元は、ボタボタと傷口から家出する自分の血で真っ赤。
かなり貧血だ。
でも、あともう一息。
攻撃は単純。
だけど、軌道を読ませてくれないナニカの術にかかった上、大きさと速さが物理法則に従ってない。
クソッ……
黒猫は、開始早々に避けきれなかった私の事を庇って……意識が飛んで端にいる。
朝日が眩しい。
まだ、起きてから二時間もたっていないのにも関わらず、この黒影はこの世の存在とは思えない程に強い。
「な、ナァ……人の子ヨ。コワク無いノカ?」
黒影は、急に喋り始めた。
……黒影は、元々人間の魂から、転生してこの姿に変わる。でも、体の制御が無い、と先生から聞いたような気がする。
でも、体という器が傷つき、効力が弱くなったのだろう。
「……怖い? そんな事で逃げ出したり、泣くなんて、疾うの昔に辞めた」
抑揚のない声で吐き捨てるように言った。
……もう、それも今世からか……
「ソウ、カ……仲間が傷ツキ、タオレ……カナシクナイのか?」
「悲しいか……どちらかというと、その仲間が傷ついたのは、私の力不足であって『しょうがない』って割り切っては……私が許さない」
「ショウガナイ……アァ……私がコウナル未来は必然ダッタという事……」
黒影は、膝から崩れ落ちた。
この世に失望するように。
でも嫌な予感が過る。これから強力な魔法が来ると。
私は、黒猫を猫のまま抱えて結界を張った。
その一秒後。
この世の物。そう表してはいけないような、突風だった。
「フィナーレだ」
私の結界に向かって魔法が飛んできた。
さっきと同じ威力。
笛で対抗しようとした。
……あの笛は使い過ぎると、副作用が出る。
でも、やむを得ない状況だ。やるしかない。
私は、大きく息を吸い込んで一生懸命に吹いた。
息が足らなくなったら、息継ぎ。
駄目だ。こんな所で、黒猫を失うなんて……嫌だよっ……
前世の仲間の死に様が瞼の裏に広がる。これの数百倍……いや、一億倍以上も強い黒影に、私の数百倍も強い仲間が束になって、私だけが生きて……
絶対に、許さない。あんな事なんて、絶対に体験させるなんて……私は、許さない。
私は、途中から、物理魔法を重複して出した。
「このクソったれぇぃ!!!」
「人の子ゴトキガァーッ!」
ナニカの光と、ナニカの影がぶつかり合って、ボロボロになって……影だけが残った。
ナニカの光……否、私は動けない。
あぁ……あと、二分。あと二分貰えれば、戦える。
私は、ボロボロになって立ち上がった影を睨んだ。
「人の子が、ココまで殺るト、ハ……最後に、オマエの知りたいジョウホウをツタエル」
情報……? こんなやつが?
私の頭の上に浮かぶ疑問符は無視して、黒影は続けた。
「俺のスミカには、『ハンナ』ッテ言う、オンナが作った墓ガアル。そこには『□□□』トイウ少女の墓が。ソノ隣には『□□□』またソノトナリには『□□□』。ドレモ、この黒影を倒したモノだ」
「分かった。貴方を斬った後に行ってみる」
私は、地面に横になりながら、ほほ笑みながら、そう言いかけた。
「アリガトウ。前世の私をスクッテくださったモノタチ。そしてアナタ」
そうして、目の前の黒影の鼓動は止まった。
ハンナ……私の昔の名前だ。この名前も、そこから取った。
……守れない人は、守れなかった人の名前でも名乗ってろ。
私は、体を動かして、虫の息の黒猫を抱いて赤い涙を流した。否、目から血を流している。
「ごめんっ……私が不注意なばかりに……怖かったよね……」
私は、頭を撫でた。意識があるのか、無いのか分からないけど、魔力の動きが柔らかくなった。
私は、真っ赤に染まった世界の中で黒猫だけがはっきり見えた。
魔獣の気配がする。
そしてまた別の黒影の気配。
でも、下位互換だ。今の私でも勝てる程に弱い。
「私は、いつまで弱いままで、哀れで……こんな自傷的に語る歳じゃないんだけどね。黒猫。私のようにならないで」
心なしか、コクリと頷いた気がする。いや、小さいけど、力強く頷いた。
私は、木陰にぐったりとする黒猫を寝かせて剣を持った。剣術は、あまり自信がないし、体術なんて以ての外。むかーし、私より弱いやつに、馬鹿にされたもん。
そして、むかーしむかし、寝たきりだったから……ね。
私は、もう泣けない程までグジャグジャにされた心の奥底に刻まれた記憶を呼び戻すように、自潮気味に笑った。
コメント
1件
こはるさん、第7話読了しました! めっちゃ熱いバトル回だった…! 黒影が急に喋り出したところから一気に引き込まれた。自分の弱さと向き合いながら「許さない」って立ち上がる主人公、かっこよすぎる。黒猫を庇うシーンにも胸が締め付けられたし、フィナーレの攻防で笛+物理魔法の重複という判断、戦略的で痺れた。 そして「守れない人は守れなかった人の名前でも名乗ってろ」…このセリフ、重すぎて刺さった。ハンナって名前の意味が一気に深くなったね。 次は黒影が遺した墓の謎も気になるし、まだ下位の敵が残ってるのも嫌な予感…。続きが楽しみだわ🔥
上野文
9,209
#探偵
橘靖竜
6,553
ライラ🔮🌸🌙
32,651
#シェイプシフター
柊遊馬
5,990