ひとつの村に、ある神が祀られていた。
森の中に小さくある祠にその神は静かに佇んでいた。
その村は自然災害に苦しめられ、作物が不足する日々を過ごしていた。
ある日、誰かが言った。自然災害がおきるのは、神が怒っているのではないか、誰かを生贄に捧げようと
だが、誰もなりたいもの居ない。だが神に祀るものが必要であるため、悩んでいた頃、散歩中の村人が 森の中に眠っていた幼子を見つけた。、村人はその幼子を連れて帰った。
「ほら、よくお食べ」
その幼子は泣いて村人に何度も感謝しながら芋粥を食べた。
大人でさえも、味が薄く余り食べたくはない料理でも美味しそうに食べる姿を見て、村人達は心が傷んだ。
だが、仕方の無いことだと自分たちを許し、その幼子に、睡眠薬を飲ませると、足の骨を折り、小さな祠へと、夜遅くに置いて村へと帰って行った。
「…はぁ」
酒呑童子であり、ここに祀られた、神、いふは朝祠から出てため息をついた。
前々から、災害をなくして欲しいと願われていたのは知っていたが、其れはいふの専門の分野では無かった。
どうすることも出来ず困っている間に、今度は生贄を捧げられるとは思ってもいなかった。
生贄を捧げられた所でどうにも出来ないし、ただ邪魔なだけだった。
食いもしないし、虐げて遊ぶ趣味もいふには無かった。
「おい、起きろ」
肩を強く揺さぶると其奴はゆっくりと目を覚ました。
「村に帰れ、迷惑だ」
ハッキリと立ったまま、其奴に告げた。
だが幼子は言葉が分からなかった。なんで怒った顔をしているのか、迷惑そうなのか分からなかった。
「…はぁ…帰れあっちだ」
指を村の方に指し背中を押す。
幼子はわかったように俯き、そっと踵を返した。
だが、幼子は足を折られている。這い蹲って、村に戻ろうとすると、酒呑童子が静止をかけた。
「待て、お前、足が使えないんか?」
意味がわからなそうに首を傾げてまた村へと這い蹲って帰ろうとする幼子に酒呑童子は少子可哀想に思った。
「…止まれ、よし、1度、俺の祠に行こう。」
ゆっくりと幼子を抱きかかえて、酒呑童子は祠へと入っていった。
「…足を触らせて貰えるか?」
幼子に聞くと分からなそうに首を傾げる。
仕方がないから、そっと足を撫でると、折れている感覚が手に感じた。
「生贄のためにここまでするなんて、人間は愚かやな。」
可哀想だなと、頭を撫でると嬉しそうに微笑んだ。
足に包帯を巻き、椅子を持ってきて座らせると、酒呑童子は幼子に言葉を教えた。
幼子は理解が早く、2日弱で言葉を覚えた。
「これは分かるか?」
「…お、さけ?」
「そう、俺の名前は言えるか」
「いふくん」
「だいぶ理解出来てきたな」
幼子は撫でられるのが好きなようで褒められたり撫でられたりすると大変笑顔になってくれた。
そしてふと、酒呑童子は質問した。
「おい、お前の名前はなんなん?」
「なまえない、」
「…じゃあほとけな、」
「ほとけ✨」
嬉しそうに笑う幼子ーほとけにいふは心を打たれた。
最初こそ面倒くさかったが徐々に楽しくそして幸せな時間になっていったのだった。
「…ほとけも、大人になったらここを出るんかな」
「やーや!ずっといっしょ!」
「ははっ、ありがとな…今度、西の方に医学に詳しい俺の仲間がいるから足、治して貰おな」
「いく!あそぶ!」
「おん、歩けるようになったら一緒に遊ぼう。」
そうなったら早速取り掛かる方が早いだろう。
いふは伝書鳩で西の仲間へ向かうと連絡した。
「…なぁほとけ、今から西の方へ行くために、俺の仲間を呼ぶ。其奴に送ってってもらうから仲良くするんやで?」
「ん!いふくんは?」
「俺はここで待ってる。やからちゃんと帰ってくるんよ。」
「ん!わぁった!」
頭を撫で、いふは仲間の天狗を呼ぶと西へ行くように頼んだ。
「…ちっちゃい子だねお名前は?」
「ほとけ!」
「んー、ほとけっちにするかな。今からお空飛んで西に行くからしっかり掴まっててね。じゃあ、まろ行ってくるね、この子は任せて」
「おん、頼んだでりうら。」
ほとけと天狗ーりうらは空へと飛び、西へと向かったのだった。
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