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夕方。撮影が終わり、メンバーたちは控室で帰り支度をしていた。
❤️「仁人くん、今日もありがとう!」
💛「お疲れさまでした。曽野さん、明日の集合時間、少し早いので気をつけてくださいね」
❤️「はーい!」
💙「ねえ仁人くん、今度おすすめのご飯屋さん教えてよ」
💛「いいですよ。塩崎さん、辛いもの大丈夫でしたっけ?」
💙「大好き!」
🤍「俺も行きたいかな、」
💛「じゃあ、今度みんなで行きましょう」
そのやりとりを聞いていた勇斗が、何気ないふうを装って口を開いた。
🩷「俺も行きたい」
💛「……佐野さんもですか?」
🩷「うん」
💛「……スケジュール確認しておきます」
🩷「いや、普通に誘ってよ」
💛「仕事の予定があるので」
❤️「え、勇斗って仁人くんとご飯行きたいん?」
勇斗は一瞬固まった。
🩷「……まあ、みんなで行くなら」
🤍「ふーん?」
山中がまた意味ありげな顔をする。
仁人は気づかないふりをして、荷物をまとめ始めた。
そのとき、勇斗がふと声をかける。
🩷「仁人、今日帰りどうするの?」
💛「電車ですけど」
🩷「駅まで一緒に行かない?」
💛「……方向、違いますよね」
🩷「遠回りすればいいじゃん」
💛「……佐野さん、明日も朝早いですよ」
🩷「それは仁人もでしょ」
💛「俺はは大丈夫です」
少しの沈黙。
メンバーが心配そうにこちらを見ている。
そして、仁人は視線をそらしながら、小さく言った。
💛「……駅までなら」
勇斗の顔が、ぱっと明るくなる。
🩷「ほんと?」
💛「ただの業務上の移動ですから」
🩷「はいはい」
💛「……何ですか、その返事」
思わず、仁人の口元が緩む。
驚いたような表情をして口元に手を当てて顔を赤くした。
その笑顔を見た瞬間、勇斗は胸がいっぱいになった。
ずっと見たかった。
自分に向けられる、仁人の笑顔。
駅までの道。
二人の間には、少しだけ距離があった。
街灯がぽつぽつと灯り始める。
🩷「……今日、ありがとう」
💛「何がですか?」
🩷「一緒に帰ってくれて」
💛「……別に」
💛「マネージャーとしての仕事の一つなので」
仁人は前を向いたまま答える。
しばらく沈黙が続いた。
やがて、勇斗がぽつりと呟く。
🩷「昔さ、こうやって一緒に帰ってたよね」
仁人の足が、一瞬止まる。
💛「……そうですね」
🩷「覚えてる?」
💛「…忘れるわけないじゃないですか」
思ったよりも早く返事が出てしまった。
仁人はしまった、という顔をする。
勇斗はそんな彼を見つめた。
🩷「……そっか」
💛「……」
🩷「俺、あの頃のこと、全部覚えてる」
仁人は答えない。
🩷「仁人が寒がりだったことも、帰り道にコンビニ寄ってアイス買ってたことも。俺がオーディションに受かった日、めっちゃ喜んでくれたことも」
💛「……もう、いいです」
🩷「仁人」
💛「そういう話、しないでください」
声が少し震えていた。
💛「……仕事中に、そんなこと言われても困ります」
勇斗は、何も言えなくなった。
仁人は一度だけ勇斗を見た。
その目は、怒っているようにも、泣きそうにも見えた。
💛「……俺だって、忘れたくて忘れたわけじゃないんだからっ、…」
その言葉を最後に、仁人は駅の改札へ向かった。
勇斗は追いかけなかった。
ただ、遠ざかっていく背中を見つめていた。
改札を通る直前。
仁人のスマホが震えた。
勇斗からのメッセージだった。
『今日はありがとう。明日もよろしく』
仕事の連絡としては、何の問題もない文章。
なのに、仁人は画面を見つめたまま、なかなか閉じられなかった。
少し迷ってから、返信を打つ。
『お疲れさまでした。明日もよろしくお願いします』
送信。
それだけ。
それだけなのに、スマホをしまったあと、仁人は小さく笑ってしまった。
💛「……ほんと、ずるいな」
誰にも聞こえない声で呟く。
昔と変わらない笑顔も。
少し困ったときに眉を下げる癖も。
自分の名前を呼ぶ声も。
全部、ずるい。
そして、そんな勇斗を今でも好きな自分が、いちばんずるかった。
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コメント
2件
jnt!!!!いっぱい笑って!!!!
第11話、読み終わりました…!控室でのやりとりが全然違って見えた後の駅までの道、仁人の「忘れたくて忘れたわけじゃない」の台詞にじんと来ました。仕事の連絡として完璧な「明日もよろしく」のやりとり、それだけで胸がいっぱいになる感じ、すごく伝わってきます。最後の仁人の「ずるいな」に全部詰まってる…。次の話、気になります。