TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する

目を丸くした二人をみて、高山が笑った。 「僕は何でもお見通しだよ」

高山がウインクしてみせた。

二人からキーホルダーとハンカチを受け取ると、高山はそれらを持って居間を出ていった。

「お祓いしてくるから、皆で遊んでいてね」

悟と優月の目がまん丸になった。

ーもっと、厳かで威厳に満ちているかと思った。

優月は高山の去った襖を見つめ続けた。

ーもっと怖いかと思った。

悟は隣のヨウくんを見つめた。

ヨウくんは羊羹のなくなった皿を見て唇を尖らせていた。

悟がくすくす笑った。

「ぼくの羊羹あげる」

悟が半分ほど残った羊羹を差し出すと、ヨウくんは、目を輝かせた。

「いいの!ありがとう」

パクっと、ヨウくんはあっという間に羊羹を平らげてしまった。

「ヨウくん。」

ヨウくんは、羊羹を頬張りながら、優月を見つめた。

目で問う。

『なに?』 

「お祓いって、こんなに簡単なの?」

優月の問いに、ヨウくんは羊羹を飲み込んで答えた。

「簡単じゃないよ。澱みを剥がして浄化しないといけないからね。」

「澱み?」

「うん。二人が言ってる呪いのことだよ」

ヨウくんが笑って、再び箱を指さした。

「この箱にも澱みがついているんだ。でも、僕には見えないん。高山には見えるけどね」

「どうして高山さんには見えるの?」

「高山が神力を持っているからだよ」

「しんりき?」

悟が首をかしげる。

「そう。神力。神の力だよ。」

「じゃあ、高山さんは神様なの?」

驚く悟にヨウくんは声を上げて笑った。

「高山は神主だよ。神の力を借りているんだよ。」

「へぇ…。なら神様の力があればお兄ちゃんも助かるかな?」

「それは無理だよ。神だってできないことはたくさんある。澱みの浄化だってそうだよ。神は澱みを浄化する力はあるけど、澱みが見えないから浄化はできないんだ。」

「どうして?見えなかったらできないの?」

悟の純粋な目に、ヨウくんはまた笑った。

「そりゃそうさ。君は見えないものを追い払えって言われてできるの?」

悟は口をとがらせて、小さな声で言った。

「できない」

「見えないからどうしようもないんだ。だから、神は神主たちに力を貸して、神主たちは神力を使って浄化するんだ」

優月が箱を見つめて、二つともを手に取った。

「澱みって、これについているのよね?」

「そうだよ」

「それって、他の人には影響はないの?澱みって呪いなんでしょ?」

「所有者とか対象者じゃないと影響はないよ。」

「対象者?」

「そう。澱みの対象者。つまり…その羊羹」

ヨウくんは、優月の皿に残った一口大の羊羹を指さした。

「その羊羹は、ゆづちゃんのものだよね。だから、ゆづちゃんしか食べられない。でも、ゆづちゃんが僕にくれたら、僕はその羊羹を食べられるでしょ?」

優月が羊羹を見た。

「この場合、ゆづちゃんが所有者で、僕が対象者になるんだ。」

悟が唇を尖らせて不満の声を上げた。

「わかんないよ」

「うーんとね…」

ヨウくんが腕組みをする。

「悟くんのことを大好きな女の子がいるとするでしょ?」

「うん」

「その子が、恋愛成就のお守り。…つまり、君と両思いになれますようにって願いを込めたお守りを持っていたとする。」

「うん」

「そのお守りに込められた、大好きって気持ちを持っているのは、女の子だよね?」

「うん」

「そのお守りに込められた想いが向けられているのは、君だよね?」

「…うん」

「このとき、女の子は所有者で対象者が君なんだ」

悟が頷いた。

「だから、お守りは二人に影響があるけど、他の人には影響はないよね?」

悟の顔がぱっと明るくなり、理解の色が浮かんだ。

「うん!」

「ヨウくん」

今度は優月が呼んだ。

「好きだって想いも澱みなの?澱みって呪いでしょ?」

ヨウくんは首をかしげた。

「そうだよ?好きも、心配も、悲しいも、嬉しいも、怒ったも、全部澱みだよ」

「全部澱みなら」

悟が言った。

「逃げることはできないの?」

ヨウくんが笑った。

「澱みに気づかなければいいんだよ」

その時、高山が襖を開けた。

「終わったよ。」

高山は二人にキーホルダーとハンカチを返した。

「ありがとうございます」

二人は、高山から受け取ったものをしげしげと眺めた。

「前と何にも変わってない」

優月がつぶやくと、高山が笑った。

「そうだね。澱みは見えるものじゃないから」

「でも、高山さんには見えるんでしょ?」

悟が目を輝かせて高山を見た。

「そうだね。人のものは、人だから見えるんだよ。」

高山が悟の手の中のサッカーボールのキーホルダーを見つめた。

その視線につられて、悟もキーホルダーに目をやった。

「そのキーホルダーはとても大切にされていた。けど、悲しい事故があって、そのキーホルダーには、悲しい想いがついてしまった。」

悟が頷く。そして、目を丸くした。

「…あ。」

悟の目が見開かれる。

「お兄ちゃんがサインしてくれたんだ。お兄ちゃんがね、お揃いだって買ってくれたんだ。これ、お兄ちゃんと遊んだサッカーボールみたいに、ほら、ここにマークが入ってるんだよ!」

悟は頬をピンクに染めて高山に話して聞かせた。

高山は優しく微笑んで聞いていた。

その時、掛け時計が低い音でボーン、ボーンと時を告げた。

「あ、帰らないと」優月が立ち上がった。

悟も慌てて立ち上がる。

「もう帰るのー」

ヨウくんが不満げに頬を膨らませた。

優月が笑ってヨウくんの頭を撫でた。

「ごめんね。また来るからね」

ヨウくんは一度唇をとがらせたあと、破顔した。

「うん!」

二人は、高山とヨウくんに玄関で別れを告げた。

「ありがとうございました」

二人は深くお辞儀して、玄関の戸を開け外へと踏み出した。

「優月、悟くん」

優月の母親が目の前にいた。

「お母さん!」

優月が嬉しそうに笑った。

母の目が見開かれた。

ーこの子の笑顔を最後に見たのはいつだったか。

「お祓い、うまくいったの?」

少しだけ潤んだ目だ母が尋ねた。

「お祓い?」

優月と悟は目を見合わせた。

そして二人同時に首を振った。

「神社で色々調べたけど、何もなかった」

悟が言った。

「でも、諦めないよね!」

優月が笑った。

「うん!明日から学校でも聞き込みするんだ!」

二人の後ろには、白い砂利の敷かれたきれいな参道がまっすぐに延びていた。

そして、その参道の先には、人々の行き交う神社が厳かに鎮座していた。


この作品はいかがでしたか?

23

loading
チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚