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ノアに僕が玉座を譲った経緯を話した。もちろん、詳しい理由は伏せたままだ。

リアムも、さすがに自国民に王族の問題は話せないので、僕と一緒にいるために城を出てきたとだけ、話していた。

ノアは賢く素直だから、「お二人とも重責から解放されてよかったですね」と深く追求もせずに喜んでくれた。

一通り話を聞いてから、僕の向かい側に座るノアが、こちらに身を乗り出す。

「ところで、フィーはどこに住むの?よかったら俺の家に…」

「なぜおまえとフィーが一緒に住むのだ。俺と住むに決まってるだろう」

ノアがちらりとリアムを見て、不服そうに椅子に座り直した。

「えー?リアム様は母方の領地に行かれるんじゃないんですか?そちらの領主様には跡継ぎがいないから、リアム様が継がれると噂を聞いたことがあります」

「噂だろ。それに伯父上は、まだまだ健在だ」

「では…フィルと一緒に?どこに住むんですか?」

「ふふっ」

僕はノアの反応を想像して、思わず笑ってしまった。

ノアとリアムまでもが、不思議な顔で僕を見る。

「どうした、フィー」

「フィル…なんか隠してる?」

「ごめん。僕、浮かれてるのかも。ふふ、実はねノア、リアムが僕と住む家を用意してくれたんだ」

「二人の家ってこと?」

「そう。しかもここから近いんだよ!四半刻もかからない。馬ならすぐだよっ」

「えっ、ほんと?じゃあ毎日フィルに会えるってことか?」

「そう!」

「やったあ!嬉しい!俺さ、初めて会った時から、フィルのことが好きだったんだ」

「おい…ちょっと待て」

「はい?」

再び身を乗り出して僕の手を掴もうと伸ばしたノアの手を、リアムが掴む。

ノアが目を丸くして僕とリアムを交互に見る。

「あのぅ、痛いんですけど」

「おまえ、今聞き捨てならないことを言ったな。やけにフィーに親切だと思ったら、フィーが好きなのか?」

「好きですけど?」

「おまっ…!俺を敵に回すとは、度胸があるな」

「敵?え、なんでそうなるんですか?」

「とぼけるのか?」

「リアム…リアム!」

僕が絡むと、ラズールよりもリアムの方が面倒くさいかもしれない。もっと冷静に判断して行動してほしい。王子としてのリアムはとても優秀なのに…。

僕がリアムを見上げながら「座って」と腕に触れると、リアムが素直に座った。

「フィー、俺はおまえがこの者と仲良くしたいだろうと思ったから、近くに家を準備したが、後悔している」

「どうして」

「ノアはおまえのことを好きだと言ったぞ」

「うん、そうだね。僕もノアが好き」

「え?」

「でもそれは、人として好きだってことだよ。ノアが僕に対する好きも、それと同じ」

「…俺は?」

「リアムのことは愛してる。特別に思ってる。もうっ、口にしなくてもわかってるくせに…」

僕は照れて目を伏せた。しかししばらく経っても反応がないので、ソっと目を上に向けると、リアムがとても甘い目で僕を見つめていた。

「そうか…そうだよな。いや、すまない。フィーのことになると、どうしても冷静な判断ができなくなるんだ。以後気をつける」

「そんなことで、これからフィル様を守れるのか」と後ろで呟く低い声が聞こえたが、無視しておく。

僕は「そういえば」とノアを見る。

「リコは?出かけてるの?」

「姉ちゃんはいないよ。フィーが運ばれてきた少し前に結婚して、今は街に住んでるよ」

「そうなの?そうかぁ…リコ、幸せなんだね。おめでとう!」

「ありがとう。よかったら、また姉ちゃんにも会いに行ってやってよ。フィルのこと心配してたからさ」

「うん。お祝いもしたい」

「フィルの顔を見せるだけで、十分だよ」

僕は微笑みながら頷いた。頷いた拍子に涙がこぼれ、自分でも驚いて慌てて手の甲で拭う。

「フィー?大丈夫か」

「うん…なんか胸が詰まって…嬉しくて」

「そうだな」

リアムが僕の頭を抱き寄せる。

嬉しい。僕と関わった人が、幸せになることが嬉しい。姉の幸せを嬉しそうに報告するノアも幸せそうで嬉しい。リアムもラズールも、トラビスもネロも、レナードやゼノやジルも、みんなには幸せになってほしい。辛いことがあっても、それを乗り越えた先には必ず幸せがあると信じてほしい。僕がそうだったから。呪われた子として辛い思いをしてきたけれど、しぶとく生き続けた先に幸せがあった。愛した人に愛されるという、大きな幸せがあった。長くは一緒にいられないけれど、十分だよ。欲を望めばキリがないもの。

「フィル…大丈夫?」

「…大丈夫。ノアは、一人になって寂しくないの?」

「全然。街に出る度に姉ちゃんに会いに行ってるし、友達も遊びに来てくれるから。それに、

これからはフィルも来てくれるんだろ?」

「うん。僕たちの家にも遊びに来て」

「え?いいの…ですか?」

ノアが僕ではなくリアムに聞く。先ほどリアムにいらぬ誤解で睨まれたからだと思う。

「…いい。だが俺がいる時にだ。まあ家にフィーを一人で置いて出かけたりしないがな!」

「はあ…わかりました」

僕はリアムとノアを見て笑った。

誰かと話していると、気持ちが紛れて落ち込まなくていいし全身の痛みがマシになる。だけど着実に痛みの間隔が短くなっている気がする。背中の痣に赤い花が咲く前に、やっておきたいことがある。本当は今日にもノアを家に呼んで一晩中語り明かしたいところなんだけど、時間がない。やっておきたいことは明日でもいいかなと思っていたけど、やはり今日にしよう。

ノアが食器を片付けに部屋を出た時に、僕はリアムに頼んだ。

「リアム、お願いがある。前にリアムが連れて行ってくれた湖に行きたい。リアムの母上の故郷にある…」

「ん、いいぞ。いつにする?」

「今…今すぐに行きたい。お願い」

僕は無意識にリアムの腕を掴んでいた。

僕の必死な様子に何かを感じ取ったのだろう。リアムが「わかった」と深く頷いた。

銀の王子は金の王子の隣で輝く

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