テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
次の日から
俺は
あいつより先に教室に入るようになった
前はいつも一緒だったのに
暸が俺ん家に来て
「おはよ」って並んで歩いて
それが当たり前だったのに
今日は わざと 早く家を出た
まだ誰もいない廊下
静かで
少し安心する
音が少ないと
「聞こえない」ってバレにくい
椅子引く音も
笑い声も
チャイムも
全部
怖いから
⸻
ガラッ
ドアが開く音
振動だけ伝わる
振り向いたら あいつ
目合った瞬間
ぱっと顔明るくなんの
その顔
昔から好きだった
『早くね?』
たぶん そう言ってる
口の動きで分かる
俺 とっさに目逸らした
「あー…ちょっとな」
適当
目 合わせたら
甘えたくなるから
⸻
昼休み
いつも一緒に弁当食ってた屋上
今日は行かない
図書室の端っこの 人が少ない席
一人でパンをかじった
味しない、
スマホが震えた
《どこいんの?》
《屋上来ないの?》
《体調悪い?》
通知が連続で来る
胸が痛い
優しすぎるんだよ
ほんと
既読つけないまま
画面伏せた
ごめん
でも
今 お前の隣にいたら
絶対
泣く
⸻
放課後
帰ろうとした時
後ろから 肩掴まれた
びくってする
振り向いたら
あいつ ちょっと怒ってる顔してた
『なんで避けてんの』
はっきり分かった
その言葉だけ
やけにクリアに見えた
心臓うるさい
聞こえないくせに
ここだけ爆音
「避けてねぇよ」
嘘
『じゃあなんで一緒帰んねぇの』
「……」
『なんか言えよ』
近い
顔 近い
好きな匂い
体温
だめ
これ以上優しくされたら
壊れる
だから
わざと
笑った
「お前さ」
「俺いなくても平気だろ」
「いつまでもガキみたいにつるんでんなよ」
最低
自分で言ってて
吐きそう
あいつの顔が 一瞬
傷ついたみたいに歪んだ
それ見て
胸 抉られた
でも
止まらない
「俺 これから病院とかあるし忙しいし」
「一人の方が楽なんだわ」
嘘
ほんとは
怖いだけ
暸の声が
聞こえなくなるのが
怖すぎるだけ
『……そっか』
小さく そう言った
たぶん
それだけ
それだけなのに
世界が しん って
静かになった
ほんとに
音が消えたみたいだった
暸が
『じゃあな』
って口動かして
先に歩いてく
背中
どんどん遠くなる
追いかければいいのに
足が 動かない
喉が 熱い
視界が にじむ
ごめん
好きだから
離れるんだよ
ばか
ほんと
ばか