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学園全体は、どこか落ち着かない空気に包まれ始めていた。
廊下を歩けば、教室の中から聞こえてくる笑い声や話し合いの声。
放課後になれば、模造紙を抱えて走る生徒や、段ボールを運ぶ生徒の姿があちこちで見られる。
――本格的な学園祭の準備期間が、いよいよ始まったのだ。
各クラスや部活動が放課後の居残りを始めたことで、宮舘は目黒と会えない日々を過ごしていた。
昼休みになれば、いつも通り二人で宮舘が作ってきたお弁当を広げて食べる。
たったそれだけの時間でも、顔を合わせて言葉を交わせることが嬉しい、けれど。
❤️「(最近、放課後に池に行けてないな……)」
ふと、そんなことを思った。
以前は放課後になると、二人で裏庭の奥にある池へ向かった。
目黒がザリガニを釣るのを隣で眺めながら、他愛のない話をしたり、何も話さず静かな時間を過ごしたり。
あの場所で過ごす時間が、いつの間にか宮舘にとって大切なものになっていた。
❤️「(……ちょっと、寂しいかも…)」
それでも、学祭という大きなイベントを前に、そんなことを口にするのは少しだけ気恥ずかしさがあった。
宮舘は胸の奥に生まれた寂しさを、そっとしまい込んでいた。
***
――数日前。
宮舘のクラスでは、学祭の出し物についての最終的な話し合いが行われていた。
「やっぱり、うちのクラスは演劇でしょ!」
「賛成!」
「演目はどうする?」
いくつもの意見が飛び交った末、決定したのは、誰もが一度は耳にしたことのある物語。
【白雪姫】に決まった。
しかし、問題はその後だった。
「白雪姫役は……宮舘でよくない?」
❤️「……え?」
「絶対似合う!」
「うんうん!宮舘くん、顔綺麗だし!」
「白雪姫って感じする!」
なぜか、クラスメイト達から猛烈な推薦を受けることになった。
❤️「いや、でも俺……」
「宮舘がいい!」
「満場一致!」
❤️「えぇ……」
気付けば、宮舘は白雪姫役に決定していた。
「はぁーい!!!」
勢いよく手を挙げたのは、佐久間だった。
「佐久間、どうした?」
🩷「それなら王子様は俺だぁ!!」
立ち上がってカッコよくポーズを決めると。
🩷「俺が涼太を守る!!」
それは王子様というより、まるで戦隊ヒーローのような力強い台詞回しだった。
その言葉に、教室中から笑い声が上がる。
❤️「佐久間……笑」
こうしてーー
白雪姫役・宮舘涼太
王子様役・佐久間大介
黒板に書かれていた2つの配役は、あっという間に決まってしまった。
けれど宮舘には、1つだけ気がかりなことがあった。
❤️「(……これ、目黒に言いたくない)」
当然、白雪姫の衣装は本番になればドレスを着ることになる。
その衣装を身につけた自分の姿を、目黒に見られると考えただけで顔が熱くなった。
恋人の【フリ】をしているとはいえ、最近の目黒との距離は以前とは比べものにならないほど近くなっている。
❤️「(……恥ずかしい、かも)」
悪役令嬢として女子生徒の格好をしてるとはいえ、そんな気持ちが勝ってしまった。
.
.
.
そして、その日の昼休み。
いつもの場所で2人は昼食を取っていた。
そんな何気ない時間の中で、目黒がふと宮舘の顔を覗き込んだ。
🖤「そういえば、舘さんのクラスって演劇やるんだよね?」
❤️「う、うん」
🖤「舘さん、なんか役あるの?」
真っ直ぐな瞳が、自分を見つめている。
それだけなのに宮舘の心臓が大きく跳ねた。
❤️「えっ……」
白雪姫とは言えなかった。
ドレス姿を目黒に見られたくない。
頭の中に本番の光景を思い浮かべると、頬がどんどん熱くなっていった。
❤️「……あ、あの」
🖤「うん?」
❤️「俺は……大道具とか、裏方だよ」
とっさに、嘘をついてしまった。
自分でも驚く程、自然に口から出た言葉だった。
🖤「そっか、裏方かぁ」
目黒は少しだけ残念そうに呟くも、すぐに柔らかな笑みを浮かべた。
🖤「お疲れ様」
❤️「……うん」
目黒の手が、ぽん、と宮舘の頭に乗った。
❤️「……っ」
優しく頭を撫でられる。
まるで、頑張っていることを褒めるようなその仕草に、宮舘はますます顔を紅くした。
❤️「(……ずるいなぁ)」
そんなふうにされたら、余計に言えなくなってしまう。
宮舘は照れを隠すように、今度は自分から話題を変えた。
❤️「じゃあ……目黒のクラスは何をするの?」
🖤「俺のところ?」
❤️「うん」
目黒は少し考えるように瞬きをすると、どこか照れくさそうに笑った。
🖤「俺のところはね、執事喫茶」
❤️「……っ!」
宮舘の動きがピタッ、と止まった。
❤️「(し、執事喫茶……!)」
脳裏に浮かんだのは、黒い燕尾服に身を包んだ目黒の姿。
整った顔立ち、長い手足。
いつもより少しだけ大人びて見える服装。
🖤「……舘さん?」
❤️「えっ?」
🖤「どうしたの?」
❤️「な、何でもない……!」
必死に平静を装うも、胸の鼓動はまるで収まってくれない。
❤️「(目黒の執事姿……見たい……!)」
先程まで『自分のドレス姿を見られたくない』と思っていたはずなのに。
今はもう、それどころではなかった。
❤️「(絶対、見に行こう……!)」
そんな決意だけが、しっかりと胸の中に刻まれていた。
🖤「じゃあ、学祭の日さ。舘さん、俺のクラスに遊びに来てよ」
❤️「うん!」
🖤「俺の給仕当番が終わったら、そのまま合流してさ。一緒に学祭、回ろう」
❤️「……うん。楽しそう」
🖤「約束ね」
❤️「約束」
2人の間で、また一つ新しい約束が生まれた。
その瞬間、目黒が「あ」と声を上げる。
🖤「そうだ。ラウールがさ」
❤️「ラウール?」
🖤「『学祭までには絶対お揃いのモノ作り終えるから、楽しみにしてて』だってさ」
❤️「本当?……楽しみだな」
🖤「うん」
宮舘が目を輝かせるのを見て、目黒も嬉しそうに笑った。
❤️「じゃあ、その時はそれをつけて一緒に回ろうね」
🖤「うん、もちろん」
目黒と視線が重なり、どちらからともなく柔らかな笑みが溢れた。
放課後は会えないし、池にも行けない。
ほんの少し寂しいと思っていたはずなのに、いつの間にか、その寂しさは学園祭当日への楽しみに塗り替えられていた。
目黒のクラスへ行って執事姿を見る。
ラウールが作ってくれるという【お揃いのモノ】を身につける。
そして、二人で一緒に学園を歩く。
そう考えるだけで、胸が弾んだ。
その瞬間、聞き慣れた心地よいシステム音声が頭の中に響き渡る。
【学園祭の約束を交わしたことにより、好感度が5%上昇しました】
【現在の好感度は55%となりました】
❤️「……!」
――50%を超えた。
折り返し地点を過ぎてもなお、目黒との距離は少しずつ、確実に近付いている。
一緒にいることが楽しくて。
会えないと寂しくて。
次に会える日を、二人で楽しみにする。
そんな関係へと少しずつ変わり始めていた。
ただ、目の前にいる目黒が笑ってくれていることが嬉しかった。
――この時の宮舘は知らなかった。
学園祭という特別な一日が、2人の関係を更に大きく動かすことになる。
そして、思いもしなかった波乱が、もうすぐそこまで迫っている。
学園中が浮き足立つ、その祭りの日は静かに、確実に近付いていた。
コメント
10件
えぇぇ何が起こるのでしょうか!?🫣❤️🔥気になります💭👀 ていうか🖤さんメロすぎて天国行き特急に乗りかけましたよ!!!😇🪽 頭ポンは聞いて無いでこざいます!!😭✨️
や〜ん♡← 気になる終わり方!! それにしても🖤と❤️はすっかり恋人同士じゃん🥰🥰🥰 🖤と会えなくて寂しがったり、執事姿を想像してドキドキする感じとかもう❤️が可愛すぎる🥰🥰🥰 お揃いの物も気になるぞ!! ぜっちゃん、焦らす天才やん😍←!?
なんだろう…? すっごく気になります!⸝⸝> ̫ <⸝⸝
#渡辺翔太
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zetsu.
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