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#山中柔太朗
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「……で? 何。その、生まれたての小鹿みたいな立ち姿は」
病院の当直室。
着替えを終えた柔太朗が、ベッドの縁に腰掛けたままぴくりとも動かない仁人を見下ろして、クスッと笑った。
「……は? 小鹿ぁ? お前、相変わらず口減らず……ッた」
威勢よく言い返そうとした仁人だったが、激しい眩暈と立ちくらみで視界がグラリと揺れ、思わず頭を押さえてベッドに倒れ込んだ。
当直明けの過労と貧血。自分でも限界なのは分かっているが、仁人は「余裕ですけど?」という顔を崩そうとしない。
「柔太朗、笑うな。これは、急に立ち上がって重力が一瞬仕事ボイコットしただけだから」
「重力のだけせいにしないで。完全によっすぃーが限界迎えてるだけでしょ。顔真っ白だし」
柔太朗は呆れたように息を吐きながらも、迷いなく仁人の横に腰を下ろし、ベッドに転がっている仁人の長袖の袖口をひっぱって自分の膝の上に頭を乗せさせた。
「……ちょっと柔太朗、何、この体勢。キモいんだけど」
辛辣な言葉を吐く仁人。だが、自分から頭を引っ込めようとはせず、眩暈に耐えるように目をぎゅっと閉じている。
「…じんちゃん、どうせ『迷惑で心配かけたくない』とか思ってるでしょ。はやちゃんたちにバレたら面倒くさいから、冗談めかして介抱してあげてるんじゃん」
「……誰がそんなこと思ってると」
「思ってるよ。よっすぃーの取扱説明書は俺が一番読み込んでますから」
「どこからその自信がでてくんだよ」
柔太朗は軽口を叩きながらも、そっと手伸ばして仁人の額に触れ、優しく熱を測るように撫でた。
仁人は「……ふん」と小さく鼻を鳴らしたものの、柔太朗の膝の上の温もりと、適当なトーンで付き合ってくれる心地よさに、次第にこわばっていた体の力が抜けていく。
「……手、冷たくて気持ちいい。……ありがと、柔太朗」
ボソッと小さく呟かれた本音の感謝に、柔太朗はフッと柔らかく目を細めた。
「どういたしまして」
「…うるさいっ、」
「はいはい。じゃ、眩暈が収まるまでそのまま大人しくしててね」
強がりな先輩と、それを全て分かった上でサラリと受け止める後輩。
静かな当直室に、ふたりの信頼と優しさが心地よく漂っていた。
コメント
3件
今回もとっても素敵な作品をありがとうございます✨️✨️ じんちゃんとじゅうちゃんの信頼と一摘みの劇場版感がとっても好きですありがとうございます😊 じゅうちゃんのじんちゃんの取扱説明書でも読んでいるのでしょうか?それくらい扱い方が分かっていらしゃいますね!それにしても仁人さん、体調不良隠したがりますね?まぁまぁ私にとっては嬉しい状況ですが☺️ 次の投稿もとっても楽しみにしています😊 体調には気を付けてね☺️
第46話読んだよ〜!つよがる仁人先輩、最高だったなあ…。「重力が仕事ボイコットした」って言い訳、完全に強がりだし笑ったわw でも柔太朗が全部見抜いてて、「取扱説明書は俺が一番読み込んでます」って言い放つのがめっちゃグッときた。言葉はキツくても膝枕して優しく撫でるところとか、ふたりの信頼関係がじんわり伝わってきて良かった。強がりがふと見せる本音の「ありがと」にキュンときたよ🔥