テラーノベル
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サーチライトの白光が、降りしきる雪を銀色の矢に変えて降り注ぐ。
志摩が掲げた無線機は、中臣の震える吐息を拾い上げ
新宿中に配置された機動隊、パトカー
そしてスマホを握りしめる群衆の耳元へと、その「恐怖」をダイレクトに送り届けていた。
「……言え。お前が拓海をどう殺した。親父をどう売った」
俺の声は、自分でも驚くほど静かだった。
怒りはもはや、形を変えて純粋な「執行」へと昇華していた。
「わ、私が…私が直接手を下したわけではない!!私はただ、国益のために、邪魔な汚れを掃除させただけだ!」
中臣の叫びが電波に乗る。
「汚れだと?拓海には産まれてくる子供がいたんだ。親父はあんたを信じて、三十年も影で支えてきたんだぞ!」
「極道の家族など、社会の寄生虫だ!駒がいなくなれば、新しい駒を補充する。それが政治だ……ああっ!」
俺はドスの刃を、中臣の掌に深く突き立てた。
スピーカーから、鼓膜を震わせるような絶叫が響き渡る。
「……聞こえたか、新宿。これが、お前らが一票を託した男の本音だ」
俺はカメラ付きのスマホを中臣の顔に向け、その無様な姿をリアルタイムで世界に晒し続けた。
上空のヘリが、証拠隠滅のためにミサイルを放とうと、機首をこちらに向けた。
「黒嵜、危ない!」
志摩が俺を突き飛ばす。
直後、資材置き場のコンクリート壁が爆音と共に弾け飛び、熱風が俺たちの全身を叩いた。
瓦礫が降り注ぐ中、俺は中臣を掴んだまま、崩れ落ちた鉄骨の隙間へと潜り込んだ。
中臣のスーツはボロボロになり、エリートの面影は完全に消失している。
ただの、死にたくないと喚く老いぼれがそこにいた。
「志摩……っ、生きてるか」
「…ああ。だが、この無線機もここまでだ。回線が遮断された」
志摩が壊れた端末を投げ捨てる。
だが、その顔には確かな達成感があった。
「……十分だ。街の空気が変わった。もう誰も、警察も、中臣を守ろうとはしない」
建物の外からは、怒れる群衆が機動隊の壁を突き破り、こちらへ向かってくる足音が地鳴りのように聞こえてくる。
国家安全保障局のヘリも、これ以上の民間人の暴徒化を恐れたのか、高度を上げて旋回を始めた。
「…中臣。お前の審判は、俺じゃない。この街の奴らが下す」
俺は中臣の首根っこを掴み
資材置き場の外、群衆が押し寄せる大通りへと引きずり出した。
「殺さないのか」
志摩の声に、俺は一度だけ振り返り、親父のドスを地面に突き刺した。
「……死なせるのは、勿体ねえよ。こいつには、地獄よりも長い『余生』を味合わせてやる」
俺は中臣を、怒りに燃える新宿の街へと放り投げた。
崩れ落ちる秩序の中で、俺の復讐は、誰も予想しなかった「結末」へと向かっていく。
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