会社のBBQイベントでビンゴがあり、俺は謎の大当たりを引いた。
その場では誰も何も内容を教えてくれず、何かもらえるわけでもなく、後日連絡するねと言われ待つこと1週間。
指定された場所に行くと、そこはチャペルだった。
友だちの結婚式でしか入った事ない。いい天気で、光があたたかく差して、水の流れる真っ白いチャペルは眩しくて綺麗だった。
ではこちらへ、と言われるままついて行くと衣裳室へ通され、あれよあれよと真っ白なタキシードに着替えさせられる。
これ何なんですか?と聞いても、後ほど説明いたしますねと言われるばかり。
髪も整えてもらい、用意ができたらしくまたチャペルに戻された。
スタッフの人がドアを開け再び目の前にあの明るいチャペルが現れる。
だけど、さっきと少し光景が変わっていた。
人がいる。
神父さま、オルガニスト、聖歌隊。
そして、神父さまの手前でこれまた訳がわからないという顔で立っている見覚えのある顔。
💙「村上!?」
🤍「渡辺さん!?」
向こうも俺に気付き、2人同時に驚嘆の声をあげた。
スタッフの1人が『僭越ながら、わたくしよりお式の趣旨についてご説明いたします』と前に進み出た。
動揺を隠せないままだけど、ひとまず静かに聞く。
『お2人様は本日より、当社のスペシャルプランにご参加いただいております。これからこのチャペルでお式を挙げていただき、その後当社がご用意いたしました新居にて、1ヶ月新婚夫婦として生活を送っていただきます』
🤍💙「「新婚夫婦」」
『はい。こちらのスペシャルプラン、芸能人の方が出会ってすぐに結婚式を挙げ、新婚生活を送るTV番組を模したものとなっております』
一瞬の間。
💙「はいいぃ!?」
今度は俺の声だけが響いた。
隣の村上真都ラウールという奴は、会社の後輩だ。そう言えばこいつもビンゴで大当たり引いてたっけ。
🤍「じゃあ、俺たち今から夫婦として振る舞えばいいんですね」
そしてこの状況をすんなり受け入れている。なんだその適応力。
『はい、左様でございます』
では早速ではございますが、お式を…とスタッフは下がり、荘厳なオルガンの音と透き通るような讃美歌がチャペルを包む。
『渡辺様、そのまま村上様のところまでお進みください』
スタッフに声をかけられ、まだよくわかっていないまま進み出る。
俺を待つ村上はベネズエラとのハーフらしく、背がすらりと高くて顔も綺麗で、まだ若いのに白いモーニングを着こなしていてまるでモデルみたいだ。
ちょっとちゃんとしよう、と背筋を伸ばすと『お美しいですよ』と褒められた。
向かい合い、スタッフに言われるまま村上が俺の手をとり腕に絡ませて神父さんの前へ。
3人で聖書に手を重ね、神父さんの言葉を聞き、そこまでは良かった。
『では誓いのキスを』
💙「ん?」
思わず声が出た。
スタッフに『渡辺様は少し右に顔を傾けていただくと綺麗でございます』とかアドバイスされたけど。
💙「だーーーーーー無理無理無理!!!!」
男とキスとか。なんでみんな普通に進めてんだよ。
村上もなんでやろうとしてんだよ。
至近距離でこの綺麗な顔に見つめられ、それだけで心臓が撃ち抜かれそうになる。
神父さんが『頬と頬でも良いですよ』と声をかけると、村上は俺に考える隙を与えず腕に手を添えて頬を寄せてきた。
🤍「渡辺さん」
💙「なに」
🤍「顔熱いですね」
💙「うっさい!」
讃美歌に『うっさい』を乗せたのは俺が初めてだろう。ハッと我に返り黙る。
そのまま村上と腕を組んでエスコートされながら退場し、服を着替え、リムジンに乗せられて俺たちはこれから新婚生活を送る新居とやらへ連れ去られ…いや向かったのである。
コメント
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おもろwww
えおもろいおもろい