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【大人な夜】
夜の静けさに包まれた部屋。
乱れたシーツの上で、亮はまだ私を腕の中に閉じ込めていた。
頬にかかる髪を、ゆっくり指で梳きながら、伏せた瞳のまま小さく笑う。
「……だいじょうぶ? 苦しくない?」
その声はさっきまでより低く、柔らかい。
熱を帯びた肌がまだ触れ合っていて、そこから鼓動まで伝わってくる。
私は小さく首を横に振る。
「……このままでいたい」
亮は一瞬目を細め、ぐっと抱き寄せて、私の額に唇を落とす。
「……じゃあ、もう少しだけ」
呼吸も、心臓の音も、互いに溶け合っていく。
カーテンの隙間から差し込む月明かりが、彼の睫毛の影を長く落とし、その横顔をやけに綺麗に見せた。
「……〇〇、好きだよ」
低く囁かれたその言葉に、胸の奥がまた熱くなる。
私の髪に顔を埋めたまま、亮は小さく息を吐いた。
「……〇〇の匂い、落ち着く」
頬をかすめる吐息が、妙に熱い。
胸の奥に溜まっていた鼓動がまた早まるのが、自分でも分かった。
「そんなこと……言わないで」
「なんで? ……照れてるの?」
わざと耳元で囁くその声は、低く掠れていてずるい。
心の奥まで、声が染み込んでしまう。
彼の指先が、私の肩から背へとゆっくりなぞる。
その動きは決して急がないのに、触れるたびに肌が熱を帯びていく。
「……また、したくなった」
ふっと笑うその瞳は、月明かりに照らされて揺れていた。
私の返事を待つことなく、亮は身体を少し起こし、両手で私の顔を包み込んだ。
そのまま唇が重なる。
最初は優しかったのに、すぐに深く、強くなっていく。
「……だめ、まだ……」と小さく抗おうとする声も、唇の間で奪われてしまう。
「だめじゃない」
短く、低く、耳元で。
その声音に、背筋が震える。
腕の中の距離が、もうどこにも残っていない。
乱れたシーツが熱を閉じ込め、呼吸すらままならない。
「……我慢できない」
そう囁いた亮の瞳は、私だけを映していて。
次の瞬間、また強く抱き寄せられた。
亮の吐息が、首筋をかすめるたびに熱を帯びていく。
触れているだけのはずなのに、身体の奥がざわめき始める。
「……こんな顔、俺にしか見せないで」
低く囁く声と、指先が肌をなぞる感触に、喉がひとりでに鳴った。
「亮……」と呼んだ瞬間、唇を塞がれる。
深く、逃げ場を与えないキス。
そのたびに心臓が跳ね、息が苦しくなるほど近くなる。
「……もう、限界」
耳元で落ちるその一言は、熱を帯びた鎖のように、私を離さない。
月明かりの下、絡まる影がゆっくりと重なっていく。
外の世界が遠く霞んでいくほど、彼の温度だけが鮮明だった。
亮の手が、私の背をゆっくり滑り降りる。
その動きはあまりにも丁寧で、逃げ場を与えない。
爪の先がかすかに触れるたび、身体が小さく震えた。
「……力、抜いて」
低く響く声に逆らえず、肩から力が抜けていく。
唇が頬を伝い、耳元で止まる。
吐息が触れるたび、そこだけ熱を持ったように痺れる。
「……こんなに、俺を誘って」
指先が腰骨のあたりをなぞった瞬間、思わず息が漏れた。
亮は満足そうに微笑み、もう一度唇を重ねてくる。
深く、長く、甘い支配のようなキス。
「……もう離さないから」
囁きと同時に、腕の中の世界が熱で満たされていった。
亮の手が、ためらいもなく腰を引き寄せる。
布越しに伝わる体温が、じわじわと溶かすように広がっていく。
「……震えてる」
耳元で囁きながら、指先が背中をなぞる。
その軌跡が熱を刻み、呼吸が浅くなる。
唇が首筋をゆっくりと辿り、甘く噛む。
「……っ」小さく声が漏れると、亮の腕の力がさらに強くなる。
「そんな声……もっと聞かせて」
低い声が胸の奥まで落ちてきて、心臓が乱れる。
目が合った瞬間、深く口づけられる。
舌先が触れ合い、甘い熱が絡み合う。
世界が遠のき、亮の温度と呼吸だけがすべてになっていく。
「……もう止まらない」
その言葉の通り、彼の熱は夜の静けさを飲み込み、私をさらに深く求めてきた。
亮の腕に抱き寄せられ、背中がシーツに沈む。
そのすぐ上で、彼の瞳が私を見下ろしていた。
熱を帯びた視線は、一瞬たりとも私から離れない。
「……全部、俺に委ねて」
低く囁くと、唇が重なり、深く溶け合う。
吐息が混ざるたび、胸の奥が痺れるように熱くなる。
指先が肌をなぞり、確かめるように形を覚えていく。
触れるたびに、小さな震えが全身を駆け抜けた。
その反応を、亮は逃さず拾い上げる。
「……かわいい」
その一言が、羞恥と高鳴りを同時に煽る。
身体の隙間が、ゆっくりと埋まっていく感覚。
鼓動が重なり、熱が絡まり、息が整わなくなる。
月明かりの下、重なる影はもう離れられないほど深く結ばれていった。
亮の動きは激しさの中にも確かなリズムがあって、そのたびに身体の奥が熱を返す。
息を整えようとしても、彼の唇がそれを許さない。
「……もっと感じて」
囁きながら、背中を支える手がさらに強くなる。
視界の端で、月明かりが揺れる。
その光の中、汗に濡れた亮の睫毛がきらりと光っていた。
その美しさすら、もうまともに見ていられない。
「……〇〇」
名前を呼ばれた瞬間、胸の奥がほどけ、声が零れる。
重なった熱が高まり、シーツが何度も擦れる音が夜を満たしていく。
亮は目を離さず、まるで私のすべてを刻みつけるように求め続けた。
亮の動きがさらに深く、速くなる。
重なった息が熱を帯びて、もう呼吸と声の境目が分からなくなる。
「……〇〇」
低く名前を呼ぶ声は、震えるほどの熱を含んでいた。
その響きに全身が包まれ、意識が彼だけに染まっていく。
視界の端で、彼の額から汗が一滴、私の頬へ落ちた。
その瞬間、全身を駆け抜ける強い波が訪れる。
「……っ、亮……!」
声が零れ、彼の腕がさらに強く私を抱きしめる。
まるで離すことを許さないように。
やがて、荒い息だけが残った。
亮は額を私の額に重ね、深く息を吐く。
「……愛してる」
その一言が、まだ熱を帯びた胸の奥に沈んでいく。
乱れたシーツの中、彼の腕の中で、私は静かに目を閉じた。
夜の熱はまだ、肌の奥に残ったままだった。
亮はまだ私を腕の中に閉じ込めたまま、ゆっくりと呼吸を整えていた。
頬にかかる髪を指で梳きながら、ふっと笑う。
「……顔、真っ赤」
「亮のせいでしょ……」
「そうだよ。俺がそうした」
照れ隠しのつもりで視線を逸らすと、顎を軽く持ち上げられた。
月明かりの下で見つめられると、逃げ場がなくなる。
「……〇〇、かわいすぎて困る」
低く囁かれて、胸の奥がまた熱くなる。
亮はそっと私の額にキスを落とし、そのまま目を閉じた。
「このまま寝よ。……もう、離さない」
その腕の力は、優しさと独占欲が混じった温度を帯びていて。
私はその中で、静かに瞬きをし、眠りへと落ちていった。
彼の鼓動と呼吸だけを感じながら——。
カーテンの隙間から差し込む朝の光が、瞼をやわらかく照らす。
目を開けると、すぐ隣に亮の寝顔があった。
乱れた髪の間から覗く睫毛は長く、寝息は穏やかで、昨夜の熱が嘘のように静かだ。
少しだけ動こうとすると、腕がぎゅっと引き寄せる。
「……どこ行くの」
かすれた声で呟き、瞼を開ける亮。
その瞳はまだ少し眠たげで、それなのに視線だけは私を離さない。
「起こしちゃった?」
「起こされたくなかったら、腕、離すわけないでしょ」
そう言って、彼は後ろから抱き込むようにもう一度包み込む。
「昨日……〇〇、かわいかった」
耳元で囁かれ、顔が一気に熱くなる。
「やだ……言わないで」
「言う。忘れたくないから」
彼の胸の中で、朝の静けさが再び甘く溶けていく。
外の世界が動き出す前に、私たちはもう少しだけ、二人だけの時間を味わった。