テラーノベル
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日曜の午後。
今日は珍しく、家にもカフェにも行かず、二人でのんびり公園を歩いていた。
春の終わりの風は少し強くて、イギリス――いや、英は何度かフランスのコートの裾にしがみつくようにしていた。
英「……そろそろ、半袖でもいい季節ですね」
仏「そうだね。こういうとこ歩いてると、季節がちゃんと変わってるんだなって思う」
英「あなたが詩的なことを言うと、ちょっとドキッとします」
仏「……え、普段からロマンチストだと思ってたけど?」
英「……自称ですよね」
仏「ひどい」
笑い合うと、空気がふっと柔らかくなる。
あの日、屋上で触れた指先の熱は、もうずっとここにある気がしていた。
仏「……ねぇ」
英「ん?」
仏「もしさ、もし僕が“このままずっと一緒にいて”って言ったら……どうする?」
英「……」
仏「いや、嫌ならいいんだけど。べつに、強制じゃないし。うん」
英「……言い方が回りくどいです」
仏「うっ……」
英「でも、もし“このままずっと”って言葉の中に、“一緒に住む”って意味が含まれているなら――」
仏「……含まれてる。うん。めっちゃ含まれてる」
英「じゃあ、答えは“はい”です」
仏「……本当?」
英「はい。フランスの部屋、散らかってなければ」
仏「うぐっ……! し、失礼な。ちゃんと片づけたもん」
英「私が行くと決まった日だけ掃除してそうですね」
仏「バレた……」
フランスはちょっと困った顔で笑った。
でも、その笑みはどこまでも穏やかで、今まででいちばん優しい顔をしていた。
仏「……じゃあ、引っ越し祝い、何がいい?」
英「そうですね……白いカーテンと、大きめのティーポット」
仏「了解。あと、ベッドはダブルな。文句は受け付けません」
英「……はいはい」
仏「なんだよその返事、つれないなあ」
英「……でも、顔はちょっと笑ってますよ」
仏「……あ、ほんとだ。かわいいじゃん」
英「うるさいです」
そのまま、春の風が二人の間をくすぐるように吹き抜けた。
同じ家に帰る未来が、もうすぐそこまで来ていた。
コメント
2件
うふふふふふ(変態)好きすぎる