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私(A)がこの日記と写真を手にした理由はこうだ。九州の片田舎で教師をしている私の元に、妙齢のご婦人が訪ねてきた。何でも婦人はこの学校の卒業生で、恩師の消息を知りたいとこのところ足繁く通っておられた。英語の教師だったという彼女の恩師とは遂に連絡がつかなかったが、よく対応していた私とは、世間話だけでなく身の上話をする程の関係になっていた。先日、もう諦めましたと話す彼女は、少しだけ恥ずかしそうに(少なくとも私にはそう見えた)この日記を差し出した。この日記はなくなった祖父のもので、ずっと本棚にあったそうだ。祖父も生粋の日本人だが、戦争中は外交に携わっており、英語で日記を書く習慣があったらしい。中々に達筆で、一読しただけでは何語かわからない程だったが、彼女はその日記を翻訳して欲しい、せめてどんなことが書いてあったか知りたいと懇願した。私は困惑したが、周りで聞いている職員の手前無下に断ることもできず、はぁと生返事をして預かってしまったのだ。新学期が始まってすぐということもあり、写真が入っていることに気付かず、そのまましばらく手を着けずにいた。例のご婦人からも督促などなかったため、結局受け取ってからもう3ヶ月が経とうとしている。