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【彼女が起きなかったら】
「おーい、起きてる?」
カーテン越しに差し込む朝日と、キッチンから聞こえる低く柔らかな声。
まだ頭がぼんやりしていて、返事をしようとしても声が出ない。
ガタガタ、と食器の音。
その音だけで、今日は彼が先に起きて朝ごはんを作ってくれていることがわかる。
…それだけで、ちょっと嬉しい。
「…起きてるけど、まだ眠い」
枕に顔を埋めたまま言うと、しばらくして彼がベッドまでやってきた。
「ほら、これ」
差し出されたマグカップから、ふわっとカフェオレの香りが立ちのぼる。
「熱いから気をつけろよ」
カップを受け取ると同時に、額にそっとキスが落ちた。
「…ねえ、それ反則」
「え、これで目ぇ覚めたろ?」
彼はいたずらっぽく笑いながら、私の寝癖を手で直してくれる。
「もしかして寝癖、ひどい?」
「うん。可愛いけど」
そう言って、そのまま頬を撫でる彼の手があたたかくて、カフェオレよりも心がぽかぽかになる。
「今日は早く出るの?」
「ううん、休み。だからゆっくりしようと思って」
「じゃあさ…」
言葉の続きを探す前に、彼の腕が私の肩を包み込む。
「…二度寝しよ。朝ごはん冷めたらまた温めればいいし」
彼の胸に顔をうずめると、心臓の鼓動がすぐそこにあって、安心感に包まれる。
特別じゃない朝。
だけど、こんな朝がずっと続けばいい。
そう思った瞬間、彼が小さく笑って囁いた。
「今日も可愛いな。…ずっと一緒にいような」
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