樹とは、毎日楽しく生活してる。
おかげで、柊君への気持ちがだんだん薄れていくのがわかる。
ルームシェアを解消することなく、一緒に住むことを選んだ2人。
一応、私達は付き合ってる。
樹の彼女……なんだよね、私。
まだちょっと信じられないけど、毎日こうやって笑っていられたら、どんなに幸せだろうか……なんて思い始めてる。
「いらっしゃいませ」
バイト中、良介君の言葉に振り返り、私も「いらっしゃいませ」と言おうとした。
でも……言えなかった。
体が固まって声が出ない。
だって、その髪型は樹じゃない。
「柊君……?」
「柚葉、ごめんね、仕事中に。少し時間もらえないかな?」
「柚葉ちゃん、大丈夫?」
良介君は、柊君も樹も知らない。
私の態度を見て心配して言ってくれたんだ。
「あ……だ、大丈夫です。すみません、少しだけ外してもいいですか?」
「あ、うん。いいよ」
「すみません、すぐ戻ります」
カフェはまだ空いてる時間帯だったから、良介君の許可を得て外に出た。
心配しながら見送る良介君に何も言えないのが申し訳なかった。
「どうしたの? この時間は仕事でしょ?」
黙る柊君。
「体は……大丈夫?」
「うん……大丈夫だよ。ごめんね、突然。仕事で近くに来たから……」
ゆっくりと話す柊君。
「そう……なんだ……」
「柚葉、こんな場所でこんなこと言うのは変だけど……」
柊君は真剣な表情だった。
久しぶりに会ったけど、少し痩せた気がする。
「僕と、もう一度、やり直してくれないかな? 僕には、やっぱり柚葉が必要なんだ。柚葉だけを見られるように……努力しようと思ってるから」
柊君? いきなり何を言うの?
そんなの、今さらだよ……
「ごめん。私は……もう柊君とはやり直せない」
「樹が好きだから?」
え!?
どうして……
「樹から聞いた。柚葉に告白したことも、どうやって好きになったかも。僕を裏切ってたって、謝ってたよ」
「柊君、私ね。あれから本当にいろいろあったよ。正直、つらくて苦しかった。でも、真奈や樹さんが支えてくれたから……何とか立ち直れたんだ。本当にいっぱい助けられた」
「ごめん……悲しませて……」
「柊君のことだけじゃなくて、いろいろあって」
「山下専務のことなら、柚葉が辞めてから聞いた。樹と真奈ちゃんから。だから、彼はすぐに解雇したよ。つらい思いをさせて本当にごめん」
専務……解雇になってたんだ。
「そのことは、柊君は何も悪くないから。気にしないでね。解雇して、嫌がらせとかない? 仕事に支障が出てないといいんだけど……」
「優しいね、柚葉は。ホッとするよ。大丈夫、会社は何の問題もないよ。樹も……頑張ってくれてるから」
「……良かった」
柊君は、優しく微笑んでいる。
「柚葉……僕のところに戻ってきてほしい。側で僕を支えてくれないかな?」
本気で言ってるの?
私には、柊君の気持ちがよくわからない。
「柊君、さっき努力するって言ったよね?」