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#幽霊
凛道桜嵐 新
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#日常
がくじゅつてき・あかげ
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わーい
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正月気分が吹っ飛んじゃった。
元旦だし、祟ってる奴とのんびり飲み食いしながらまったりチルく過ごそうと思ってたのに、夕方に地震があって、ニュース見てみたら能登半島で震度5って聞いて二人でびっくりして、その震度5が震度7になってもっとびっくりした。
「……これは東日本大震災級かな……原発はやられてないみたいだけど……」
祟ってる奴が、固い顔でつぶやいた。
『また揺れてるって、津波も来るって』
Twitterを見てみても、Misskeyを見てみても、いっぱい警告が流れてくる。
「いや、落ち着いて千歳。こういう時ね、ものすごくたくさんデマ流れるんだ」
『そうなのか?』
「東日本大震災のときそうだったし。それとさ、今はさ、当時と違って、Twitterは見られれば見られるほどお金稼ぎできるようになったし、生成AIでフェイク画像作りやすくなったし、より刺激的なデマが出回りやすくなってる」
『え、こんな時にそんな、お金稼ぐなんて考えるやついるのか!?』
津波も来てるのに!?
「……いるんだよ、よほど揺れたところでないなら、絶対出る」
祟ってるやつの沈痛な顔は、心の底から言ってるってことを表していた。
「あのさ、神奈川は多分大丈夫だから、刺激的な情報を追いかけるより、落ち着いてから災害募金かなにかできるように用意しといたほうが、役に立てると思うよ」
祟ってる奴は、ワシを慰めるように言った。
『でも、落ち着かない……』
「ちっちゃくなって、俺に座る?」
『座る……』
子供の姿になって、祟ってる奴の膝に座った。背中をなでられて、少し落ち着いたけど、少しだけだった。
「……東日本大震災の時もひどいもんでさ。原発から放射性物質もれちゃったから、そっちの方のデマもひどくて」
頭の上から、祟ってる奴の声が降ってきた。
『そうなのか?』
「放射性物質に対する対応策っていうのは、基本的に触れない、触れたら除去する、ってなもんなんだけど、俺の親とか、過剰に放射性物質の危険を煽ってデマレベルの恐怖煽りした後、「放射能のデトックスにはこれが役に立ちます!」って、アロマとか塩水とか売りまくってさ。信じちゃう人もいるんだよね」
う、うわー……。
祟ってる奴は、またワシの背中をなでた。
「それが俺が高校の頃で、もう嫌になっちゃってさ。東日本大震災は、俺が実家出る遠因だったね」
『そ、そうだったのか……』
「ここまでひどくなくても、「被災地になにかしたい!」って気持ちがあふれちゃって、逆に迷惑かける、なんてのもあってね。なんの薬にも立たない古着送りつけまくったり、被災地に身一つで支援しに行く! ってやったはいいけど、自分の食べ物飲み物を自分でちゃんと用意してなくて、被災地の炊き出し消費しちゃったりとか」
『……そうなのか……』
そんなこと、あるのか……。
「だからさ、直接の支援は支援に詳しい人に任せるのが一番だし、不確かな情報なら拡散しない関わらないの方がマシで、詳しくないなら寄付だけしろっていうのが、俺が東日本大震災で得た教訓」
いろいろな意味で、すごくズシンと来ることを言われてしまった。そうかあ、逆に迷惑になることもあるのかあ……。
『じゃあ、落ち着いたら寄付とかするけど、落ち着かないな……』
「……意外と狭山さんのTwitter見てもいいかも。やっぱあの人、SNSの使い方ちゃんとしてる」
祟ってる奴はスマホをチェックしていた。
『狭山先生、何かしてるのか?』
「災害情報のRTはNHKのみに絞って、あとはクーちゃんのかわいい画像をちょこちょこあげてる」
へ?
『え、なんでクーちゃん?』
「千歳みたいになってる人のためだな」
『ワシみたいに?』
ワシは首を傾げた。どういうこと?
「特に災害に巻き込まれてなくて、落ち着いて生活を回してあとは寄付でもしたほうが役立てるんだけど、それはわかってても落ち着かないとかドキドキするとか、そういう人はたくさんいるんだよ。そんな人はね、落ち着くためにかわいい画像とか笑える映画とか見て、落ち着いて寝て、落ち着いて働いて稼いで、落ち着いて寄付したほうがいいんだ」
祟ってる奴は、またワシの背中をなでた。
『え、じゃあワシみたいになってる人たくさんいるのか?』
「今もたくさんいると思うよ。東日本大震災の時も、壊れた家とか津波で流される人とか、刺激的な情報摂取しすぎたせいで、被災してないけどメンタルに支障でた人けっこう出たからね」
祟ってる奴は、スマホの画面を消した。
「全然眠れる気はしないけど、俺、いつもの時間に布団入るよ。ちゃんと自己管理してちゃんと働けるようにしとかないと、こういう時逆に迷惑かけるだけだからね」
え、全然眠れる気がしないって、じゃあこいつ、これまでずっと落ち着いてワシを慰めてくれてると思ってたけど、こいつも全然落ち着いてないのか!?
『あの、もしかして、お前全然落ち着いてなかったのか?』
聞いてみたら、祟ってる奴は、自嘲するように苦笑した。
「全然落ち着いてない。すごく怖い。今話したの、半分自分に言い聞かせてた」
『…………』
そうだ、こいつ、優しくていい奴だけど、別に特別なことはなにもないその辺の人間だ。普通の人間だ。
そうか、こいつ、今まで普通に怖がってたのか。そうか……。
ワシは、祟ってる奴に強めにくっついた。
『ワシ今は寝る必要ないから、夜起きて番してるから、お前は夜ちゃんと寝ろ』
「大丈夫?」
『ワシはYouTubeでおもしろ動画とか見てるから、平気だ』
ワシはこいつを子々孫々まで祟るんだ。こいつが子孫を繋ぐために大事なのは、健康でたくさん稼ぐことだ。
だから、こいつを安心させてやって、ちゃんと寝かせるのは、ちゃんと子々孫々まで祟ることなんだ。
コメント
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地震の日の不安な空気がひしひし伝わってきました。特に「半分自分に言い聞かせてた」って告白はぐっときました。落ち着いて見えた人が実は一番怖がってたんだなあって。最後、「子々孫々まで祟るために寝かせる」って締めもこの二人らしくて好きです。寄付の話も、心に残りました。