テラーノベル
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リゾート気分をぶち壊され、俺達は一旦屋敷に帰ることとなった。
俺は自室のベッドに寝転がりながら、天井で回転するよくわかんないプロペラを眺めつつ、先程の話を考えていた。
「アクアレムがクーデター……」
こういった情報が耳に届くのが早いのが、王族の嫌なところである。
今回発表された声明は、他国のトップ向けであり、一般にはまだ公開されていない情報だ。
アクアレムの住民すら知らない情報を先に知って、他国の俺がもんもんとしている。
これから数週間かけて、オクタスは王族派を徹底的に排除して、議会を騎士派が完全掌握した後に一般発表が行われることだろう。
アクアレムがもし敵になったとき、どうなるかを想定する。
「絶対一国じゃ動かないだろうし、反リガルド派とくっつくだろうな」
小国ほどリガルドを憎んでいる傾向があるので、そういった国々を磁石みたいにくっつけて大きくなっていく可能性がある。
特にガレス共和国とくっつくのは問題で、自称正義の味方のタランチュラにアクアレムの資源が回るということだ。
それにタランチュラ、アクアレム支部みたいなのができる可能性も高い。そうなった場合切り離すことは困難で、本当に戦争に発展する可能性がある。
「リガルドが気に食わなくても、表面上は仲良くしときゃいいのに……」
セレーネ王女がトップだったら、俺がアクアレムには利用価値がありますとかいって、戦争にならないように働きかけるけど、これじゃ止める理由がないじゃないか。
リガルドとて自国を守るため、あんまり挑発されたら兵を動かさざるを得ない。
「そしたらまたウチが悪いって言われるんだろ。終わってるな、この世界」
アクアレムの資源目的で、リガルド帝国が侵略行為を開始とか絶対言われるわ。
毒蜘蛛に資源流してるからだっての。
くっだらねと思いつつ、今は行方がわからない王女のことを考える。
「セレーネ、気、弱そうだったもんな……」
紫髪の薄幸そうな少女。窓辺で微笑みながら手振って「民の幸せが、わたくしの幸せです」って言ってそう。
あのタコ騎士に詰められたら、何も言えなくなりそうだったし。
俺がアンニュイな雰囲気を醸し出しつつため息をつくと、同じくベッドで寝転がっているナハトが、身を起こして近づいてくる。
「ラウル、セレーネのこと考えてるの?」
「まぁな」
「ラウルは、ああいう大人しそうな子とヤリたいの?」
「俺がこんな深刻そうな顔して、セレーネとセックスしたいなとか考えてたら頭おかしいだろ」
お下品なナハトは「あの子絶対マゾだよ。男出来たら、ドレスの下にムチの跡とかついてそう」と性癖を予測してる。
知り合いの性癖など知りとうないわ。
「……かわいそうなマゾ王女か」
違う。ナハトに引っ張られて、ベッドシーンを想像してしまった自分を恥じる。
「あんな可憐な王女を……すまない」
「巨乳だったよね王女」
「やめろ! 俺のセレーネのイメージが、どんどん卑猥になっていくだろ!」
「ドレスパンパンだったよね。メロンが入ってるみたいで」
「やめろ、マゾのメロン王女としか思えなくなってきたじゃないか!」
「ラウル様、お休み中失礼致します」
政治だか猥談だかよくわかんなくなっていると、爺やがノックと共に部屋に入ってくる。
「メロンのお話ですかな?」
「あぁ、まぁ乳メロンみたいな」
「? また時期になったら取り寄せましょう。新たな見合いの書類が、本国より送られてきましたのでお持ちしました」
「また増えたの?」
「はい、追加で30冊ほどでございます」
256
瑞希 流星♟也中
372
🍎🥧アップルパイ
84
多いな。完成したハーレムも見に行かないとダメだけど、そういう気分じゃないしな。
「ありがと、テーブルの上置いといて」
「……ラウル様、お困りのようですね」
「セレーネはダークラインで仲良くなった王女だったからね。心配だよ」
「なるほど、そういうことでしたか」
「なー爺や、俺はいつか友人も殺すことになるのかな」
俺は寝転んだまま、天井に向かって手を伸ばす。いずれこのクリームパンみたいな手は、血に塗れたジャムパンみたいになってしまうのだろうか。
「……爺にはわかりませぬ」
「だとしたら、ジャガーやソニアとも一緒にいないほうが良い気がするんだ。俺、あいつらと戦争になった時、剣持てないよ」
「…………ラウル様、執政の結果孤独になられる王もいます。それこそメッサー王のように、全てを寄せ付けぬ強さを持つ方が、そうなられることが多いです。しかしラウル様のように、皆を引き付けるような心優しき王がいても、爺は良いと思います。自分の弱みを見せられる友とは、素晴らしきものでございますよ」
この休みでジャガーが泳ぎ下手とか、ソニアが自国の料理コンプがあるとか知ったな。俺もママ上やナハトとの関係話したし。そういう普通は教えないことを教える関係が、友達って奴なのかな。
「…………あんがと」
「はい、それでは失礼致します」
爺やが部屋を後にしようと踵を返した時、肘がテーブルに重ねられた釣書に当たってしまう。
釣書はバラバラと崩れ落ちて、床に散らばる。
「申し訳ございません!」
爺やはすぐに釣書を拾い上げると、おやっ? と首を傾げる。
「どうしたの?」
「ラウル様、これを」
爺やが見せた釣書。そこには、大渦の国章が描かれていた。
しかも王家の刻印付き。
俺は釣書を受け取って、中を開く。
「!」
そこには、セレーネの写真が映されていた。
薄暗い部屋の中、前に見た白いドレス姿で椅子に腰掛けている。
その表情はどこか悲しげな雰囲気がある。
「これは……」
釣書には彼女のプロフィールと共に、ハーレム入を望む文言が書かれていた。
「…………爺や、これをどう見る?」
「写真からして、恐らくどこかに監禁されている様子ですね。消印は一昨日……」
「もうその時には、クーデターは起きてたよね?」
「少なく見ても、3日前には起きていたでしょう。この釣書は、恐らく内通者を通じて送ってきたものと思われます」
「ハーレム入を望む。つまり」
「亡命を望んでいる可能性が高いです」
この釣書は囚われた彼女が、一縷の望みを賭けて送ってきた救援要請。
釣書にしてきたのは、確実に俺に届ける為。
「爺や、ジャガーとソニアにこのこと伝えてきて」
「ど、どうなさるおつもりですか?」
「アクアレムに行く」
「しかし、今リガルドがアクアレムに入れば、最悪開戦になりますぞ。王子を誘拐し、人質にしようとするやもしれません」
「なんで? 見合いしに行くだけじゃん、釣書も届いたし」
王女やめたなら丁度いいだろ。
爺やは小さく息をつく。
「ご友人を救いに行かれるのですね……」
「言ってることがわからん。俺は俺の嫁になりたがっている奴を迎えに行くだけだ」
「さすがでございます。見合いとあらば、タキシードの準備を致しましょう」
「頼む。あぁ腹が凹んで、足が細く見えるスリムタイプで頼むよ」
「畏まりました。靴も可能な限り厚底にしておきましょう」
コメント
1件
第40話、読み終えました…!アクアレムのクーデター情報から始まって、セレーネ王女の安否を想うラウルの心情、すごく響きました。特に「俺はいつか友人も♡♡♡ことになるのかな」って台詞、胸がギュッと締め付けられましたね…。ナハトとの下品なやり取りで緩急つけて、最後の釣書発見で一気にシリアスに引き込む流れ、めちゃくちゃ好きです。「見合いに行くだけ」ってクールに決めるラウル、かっこよかったです!