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紅葉@物語作成中
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#能力
めんだこ
802
151
「っ…はぁ、はぁ……」
全てが逆だった。追うのも、追われるのも。
「おいおい若い兄ちゃんよぉ、最初はあれだけ威勢が良かったくせに、今は逃げるって、弱っちいなぁ」
既に腕が抉られて、大量の血が流れている。そのせいで血が足りていないのか、視界が少しぼやける。
一瞬の判断ミス…いや、一瞬の恐怖心だった。一発、たった一発撃てば出来たことなのに。手が震えて引き金が引けなかった。
「どこに隠れてるんだよぉ、なぁ、おぉ〜い」
自分を呼ぶ声。そして、手元にあるのは残り一発の銃とベルトに刺した一本のナイフ。勝ち目はよく見積もっても二割…といったところだろうか。二度はない、今物陰から出れば殺すか殺されるかだ。それに、相手は快楽殺人犯。殺しに慣れている。少しでも判断を誤れば死ぬ。
「あ、そこかぁ、見つけたぜぇ」
居場所がバレた。今しか、ない。
「っ…!」
痛む腕を力なく垂らしながら僕は相手の脳天目掛けて弾丸を放つ。貧血で照準がブレた。当たるかどうか、もう分からない。
「ブレブレだなぁ、それじゃ殺せないぜぇ?」
当たり前かのように、弾丸は相手を掠めることさえなかった。まずい、まずい、頼みの綱さえも呆気なくちぎれてしまった。
「ははっ、ボロボロだなぁ、俺はお前みたいなやつを嬲り殺すのが好きなんだァ」
ジリジリと後ずさる。ベルトに刺したナイフを取り出し、せめてもの護身として相手に向ける。
「…っ来るな…」
手が震えているのが分かる。どうしてだ、どうしてこうなってしまった。
「いただくぜェ!!」
釘の付いた鉄バットを振りかぶり、男が一直線に駆けてくる。 ――ああ、死ぬ。
「勝手にこんなとこで死ぬんじゃないわよ!」
夜空を裂くような乾いた銃声が響いた。
咄嗟に目を閉じた次の瞬間、誰かに勢いよく押し倒された。
「いっ、誰だ!」
痛みで狼狽えながらも目を開ける。目の前にいたのは緑の髪を持つあの人……アナベルだった。
「アナ…ベル………?その傷……血が!」
よく見ると彼女の目元から血が流れている。
「他人の心配してる場合?!あんたの方が重傷でしょ!」
そう怒った様子で言われる。確かに、自分の方が傷は深いかもしれない、だが、心配せずにはいられなかった。
「チッ……俺を無視するなんていい度胸だぜェ……このクソアマが」
撃ち抜かれた肩を抑えながらも、男は立ち上がる。
「あら、クソアマって呼ばれるのは今日はもう二回目ね」
「アナベルっ、僕が……!」
痛みを無視して立ち上がろうとする。だけど、
「あんたは座ってなさい。これ以上怪我されたら困るもの」
そう言って制止されてしまった。それに、もとより痛みで立てるような状況じゃなかった。
「レディ相手に釘バット?優しくないわね」
フィジカルバカが何を言っているんだ、という言葉が出そうになってしまったが、すぐに口を閉じる。
「はっ、鉄バットで嬲り殺すのが楽しいんだよォ。お前みたいなクソアマも、俺の前じゃただの肉塊同然だぜェ?」
さっき一撃食らったはずなのに、元気そうにアナベル目掛けそのバットを振りかざした。
「…構えがなってない。振り方も単調ね。そんな振りじゃ、止めてくださいって言ってるようなものよ」
避ける素振りすらせず、彼女はそのバットを軽々しく素手で掴んだ。少しだけ血が滲んでいる。
「はっ?!」
これが、彼女がフィジカルバカだと言われる理由だった。“普通”の人間では有り得ないから。
「さあ、罪を償ってちょうだい。私の、大切な仲間を傷つけた罪を」
バットを引き寄せ、相手のこめかみに銃口を当てる。男の体勢が大きく崩れる。
乾いた音が、響いた。
「ばああああか!!!ばか!!ばかああ!!!」
さっきまでのかっこいい雰囲気は一体どこへ…と思わずボヤいてしまいそうなほどわんわんと泣きながら僕に縋り付いてくるのは、もちろんのごとく、アナベルだった。
「ごめん、ごめんよぉ……」
震える手で背中を撫でる。それでも彼女は首を横に振り、泣き止む気配はなかった。
「心配っ、したのよぉっ!!あと、もう少し、遅れてたら…っ!ばかぁ!!」
本当に申し訳ないことをしたのはわかっている。自分でも、本当に死ぬのではないかと覚悟したほどには。
「私にはっ、あんたが居ないと……っダメなのっ、ぜったいぜったい、ダメなのぉっ!!約束、したでしょ…っ!」
泣いているせいか、いつもよりも幼く見えてしまう。ちゃんと、“約束”は守らないといけないのに。
「ごめん。約束、守らないとなのにね」
優しく背中を撫で続ける。
「ずっと、一緒って、約束っ、したでしょ…っ!!死ぬ時は、一緒って、約束したのに…っ!一人で、死のうとしないでよぉっ!!私を、ひとりにしないでっ…!!」
僕の服をぎゅっと掴む力は、さっき鉄バットを素手で止めた時よりも強かった。
「ごめん、ごめんなさい。これから絶対、約束は守るよ」
痛む腕を動かして、彼女を抱きしめる。彼女は、僕の胸に顔を埋めて涙が止まるのを待っていた。
月はこんなにも綺麗なのに、僕たちは既に紅い血に塗れてしまっていた。月華の下、人を殺める僕たちは、まるでただの“[[rb:踊り子 > マリオネット]]”のようだ。
コメント
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読了しました…! この第5話、めちゃくちゃ重くて美しかったです。 アナベルの“鉄バットを素手で止める”強さと、その直後のわんわん泣きながら縋るギャップがもう…心臓ぎゅってなりました。 「私にはあんたが居ないとダメ」って台詞、執着系好きにはたまらないです。 ラストの“月華の下の血濡れの踊り子”も、タイトルと絡んで鳥肌立ちました。 お互い死に場所を共有してる関係性、続きが気になります…!