※今回の話では⚠️弱⚠️R18内容が含まれま す。苦手な方はご注意ください。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
sideキヨ
2月14日。それは世界中の 誰かが、届けたい誰かに向けて「愛」と共に「あるもの」を渡す日。
「ふぁあ…ついに今日かぁあ……結局フジのやつ、俺に渡す素振りすら見せてなかったよなぁ……」
フジと付き合ってから初めての「バレンタインデー」を迎えた俺は、目が覚めてからずっとそわそわしっぱなしだった。
今まではチョコなんてものは交換し合ったりしなかったけれど、なんて言うか!今年は別だろ!!「頼むよキヨ〜チョコ渡したくて、少しでも会えないかなぁ〜?」とか、言って欲しかったわ!!笑
…まぁ、そんなことを自分で考えているのなら、自分がチョコを渡せばいいじゃないのかって最初は思った。だけど、俺はお菓子作りはできないし、某高〇屋にチョコを行こうかとも思ったが、俺が行ってしまうと騒ぎになってしまうと思ったのから俺は大人しくフジに貰えることを待ち望むことにした。
もしも、フジがバレンタインデーに何かをくれたら、お返しは何がいいだろう…。と、まだ貰えると決まった訳でもないのに、俺はあれがいいかな〜これだったら喜ぶかな〜と考えていた。
そんなことを考えた後、俺はいつも通り本業であるゲーム実況を取り終えふと一息つく前に、スマホを開いてみた。
もしかすると、フジから「会いたい」っていうLINEがきているかもしれないと思ったからだ。
少しの期待を胸に、俺はスマホの画面に目を向ける。
…。 …、、。
「なんも来てねぇじゃねぇか!!!笑」と思わず声を出す。
時刻は18時。2月の今、あたりはもうすっかりと暗くなっていた。
このままだとほんとにバレンタインなんもないまま終わっちまうぞ!゛笑 と思った俺は、フジが喜ぶかは別として、今日のところは手軽なコンビニでチョコの何かでも買って、自分から渡しに行こうと思った。
さすがに急に行くのは大人としてアレだし、一応連絡は入れよう。
「フジー? 今からフジん家行ってもいいー?」
送信もできたことだし、「よし、フジからの返信を待つかぁ。」と思った俺はテレビをつけ、空白の時間を過ごした。
1時間、2時間、3時間、と連絡をしてから刻一刻と時間は過ぎていくが、フジからの返信は一向に来なかった。
いつものフジであれば、遅くとも2時間ほどすれば返信が来る。なのに、今日に限ってこんなに返信が遅いということが不可解に思えた。
___もしかして、何かあったんじゃ、…
心配になった俺は、「今から行く」と連絡を入れた後、急いで自宅を飛び出した。
電車を乗り継いで、フジの最寄り駅から住んでいるマンションまでダッシュして、ようやくフジの部屋の前までたどり着いた。
何事もありませんように。と心で祈りつつ、×××室のインターホンを鳴らす。
ピンポーン
…。ピンポーンピピピンポーンピンポーン
ピピピピピピピピンポーン
狂気的なほどにインターホンを連打してみても、一向にフジが出てくる気配はなかった。
本当にフジになにかあったんじゃ…、と思った俺はフジの部屋のドアを強く叩いた。
ドンドンドンドンドン、
「フジー?いんのかー!?いるなら返事してくれ!!」と声をかけてみても返事は無い。
こんな時、合鍵とかを持っていたら良かったな…。と少し後悔した。その瞬間、 わんちゃん…ドア空いてねぇよな…?という考えが脳裏に浮かんだ俺は、ドアの取っ手に手をかけて、ドアを引っ張ってみた。
すると
ガチャ
いとも簡単にドアが開いた。
「…あれぇ?????ふつーに空いたんだがぁ?????」
まさか鍵が空きっぱなしだとは思ってもみなかったから、拍子抜けしてしまったが、フジが中にいるか確認できるし「 ラッキィィー!⤴」と思い俺はフジの家に上がり込んだ。
玄関を抜けてすぐ。一直線の廊下を通りリビングへ入ると、そこには床に横たわるフジの姿があった。
床!?なんで床で寝てんだよ!!と、まず1発目、ツッコミを入れそうになったが、その気持ちをぐっと抑えて、まずはフジの安全確認をすることにした。
鍵が空いていたんだし、もしかしたら何か危険なコトをされた可能性だって十分にある。
フジの身の回り、そしてフジの呼吸などをよく耳をすまして観察してみる。
「…すぅ…すー…」
フジの呼吸音がしっかりと聞こえてきた。苦しそうな様子もなかったので、心底ほっとした。
「なんだ、よかった。寝てるだけか、」そう、独り言を呟く。
「実況者」という職業は時間の指定が一切ない。働く時間の指定や、どれだけの量働くのかなどの指定がない分、人によっては頑張りすぎて体を壊してしまうこともよくあることだ。
きっと、フジは昨日遅くまで編集でもしてたんだろう。だから、今の時間まで寝てしまったんだろうな。と思ったが、なんだか妙な感じがした。
その妙な感じを突き止めるべく、五感を研ぎ澄ます。そして気づいた。
「…お酒と、チョコ、?の香り?」
フジの吐息から、お酒とチョコレートの香りがした。いわゆる、「ボンボン」というものでも食べたのだろう。ボンボンには、お酒が使われていて、その度数は1%も満たないものから10%程の物まで、様々だ。
フジが何粒食べたのかは分からないけど、こんなふうに床で倒れてしまうほど酔ってしまうようなものでも無いと思った。
フジって、こんなお酒弱かったかなぁ。
俺の頭の中で疑問が浮かぶ。
そんなことを、フジの顔の近くに座り込んで考えていると、今まで眠っていたフジがゆっくりと瞼を開けた。
「あれぇ、キよぉ、?おはよー。」とフジが言う。それにすかさず「おはよーじゃねぇよ。お寝坊さん。もう夜だっつーの!笑」とツッコミを入れる。それを聞き「あれぇ、?そうなの、ぉ?」と言いにへっと笑った。
「フジ、なんでこんな時間まで寝てたんだ?」と俺はフジがこんな時間まで、こんな所で寝ていた理由を尋ねてみる。
それを聞き「、、バレンタインのね、キヨに、ぃ、あげるためのもの、つく、ってたのぉ〜、それ終わったあと、気がついたら寝ちゃってたあ、」とどこか頭がふわふわしているような口調で、フジは答えた。
バレンタイン…。俺のために作ってくれてたのか、泣、…。今の俺はその事実だけで空も飛べそうなほど大きな幸福感に包まれた。
口からお酒とチョコの匂いがしたのはそういうことだったのね。フジはボンボンを作ってたのか。と思った俺はフジに「ボンボン作ってたんだ。めちゃくちゃ難しかったでしょ?」と言うと「それは違う、!ヒラがくれたんだぁ〜」と告げてきた。
ヒラがさっきまでいた、、?どういうことなのか、後でじっくり説明してもらおう。
それにしても…、2人きり、だったってことなのかな。…お酒が入った状態で密室に2人きりなんて、危険以外の何者でもないと思った。
だが、きっとフジのことだから、バレンタインのために手伝って欲しくてヒラを家に呼んだ…なんてところだろう。
そう考えた俺は、平常心を保って「ヒラからのチョコ、美味しかった?」と聞いてみた。すると、「とぉーっても、おいしかった」と言いニコッと笑みを浮かべた。
「そんなにうめぇーチョコだったなら、俺も食いたかったわぁ〜。ラーヒー、俺にもくれねぇかなぁ〜笑」なんて冗談交じりに言ったその瞬間。フジが俺の服を引っ張り、俺はバランスを崩した。
次の瞬間、 俺はフジにキスされていた。
いきなりで、心の準備なんてものは何一つ出来ていない俺の心臓は、今にも張り裂けそうなほどに速度をまして、ドキドキいっていた。
ただのキスじゃない、深く、甘いキスだった。息を吸う合間がなくて、多少くらっとくる。そして、少しづつ、少しづつ、お互いの唾液が混ざりあっていき、口がみるみるチョコレートと、お酒の芳醇な風味に包まれていく。
少しの間、そうしていた。
お互い、少し苦しそうに「…っは、…ぁは、…」と息をきらせている。
息をきらせながらに、いきなりのことで恥ずかしくなり照れている俺を見て、「どーだった、ぁ?美味しかったでしょぉ」とフジはいい、力の抜けた笑みを浮かべた。
寝ぼけてるとはいえ、こういうのは困る。俺の心臓こんなこと急にされたら、はち切れて死ぬわ。笑 なんてことを考えつつも、大切な恋人からキスされたということがとても嬉しくて、俺はきっと赤くなっている顔を見せないように、そっぽを向き「おいしかった、ありがと、」と告げた。
そこからさらに1時間ほどたった。
フジはみるみるいつも通りに戻っていき、さっきまでは「お酒」のせいで寝ぼけていただけだったことに安心した。
フジがさっきまでしていたの自分の行動は、ほぼ無意識だったらしい。余程寝ぼけてたんだなって、「こんなことされたんだ」って伝えたら、「…っ!ちょっとキヨぉ!!!俺、そんなことしないから、!!寝ボケてんじゃないの!?キヨのばか!笑」と言ってきた。それにすかさず「寝ぼけてたのはフジな!?笑」とツッコミを入れる。
そんなことを話していると、そういえば…とフジがキッチンへ向かう。そして、手に何かを持ってリビングへ戻ってきた。
これは、もしや…と、期待を胸いっぱいに抱く。珍しく目をキラキラと輝かせた俺を見つめたまま「え〜ど〜しよっかなぁ〜?あげよっかなぁ〜??」なんていいならがニヤニヤしてきた。
「おぉい!゛欲しい欲しい欲しいわ!!笑」とはっきり告げた俺の言葉を聞き、「しょうがないな〜」とフジは言う。
そして、「じゃじゃーん!ハッピーバレンタイン!」といい、丁寧にラッピングされたチョコレートケーキを差し出してきた。
それを手渡された瞬間、嬉しさでいっぱいになり「ありがとう。」と言いながらフジを力いっぱい抱きしめた。
その後、フジが入れてくれたコーヒーと一緒にケーキを食べてみると、本当に美味しかった。
所々、チョコが溶け切ってなかったり、「ん?」って思う箇所はあったが、フジが頑張ってくれたという努力の証が見えて、ますます嬉しくなった。
「俺のためにありがとう。今まで食った中でいっちゃんうめぇーわ!!」とフジの目をまっすぐ見て伝える。
それを聞いたフジの顔は、ぱっ と明るくなり「喜んでくれて良かった!」と安心しているような声色でそう伝えてきた。
こんなに幸せなバレンタインはいつぶりだろう。最初は若干ヒヤヒヤしたが、結果良ければ全てよし…だよな。
来年も、再来年も、その次も。
ずっとフジと幸せなバレンタインを迎えられますように。と俺は心の中で強く、強く祈った。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
sideメンヘラ彼女
昔の話をしようか。
今日は、2月14日。そうだね。世の中はバレンタインムードに包まれている。
みんなして浮かれちゃってて、ばかみたいだよ。…なんて言ってる私も昔はその「ばかな奴ら」の一員だった。
キヨくんと付き合って、初めてのバレンタインデーを迎えたあの日。必死に頑張ってお菓子を作ったんだ。キヨくんが喜んでくれる…って思ったら、お菓子作りの地味で退屈な作業ですら、天職だって思うほどに全てが楽しく思えた。
あの時の私はまだ、壊れていなかったのだと思う。
レシピを調べている時に「恋のおまじない」なんて言う犯罪者量産サイトみたいなものを目にしたけど、「何それ。犯罪じゃん。ばーか」なんて思ってスルーした。
だけど、今になって思うんだ。
あの時、あの「おまじ、な、い」をしてたら、私は今もキヨくんと一緒にいることができたのかな。って。
もう、お呪、いにすがって、過去の自分を憎むしかできない。
そんなことを思ったって、何も変わらないって、意味ないって、私が今行おうとしている計画は、悪いコトだって、ちゃんとわかってるよ。
わかってる、わかってるの。
わかってる…のに。
やめられないの、自分じゃどうにも止められないの。
私は操り人形のようなものなのだから。
もう、救いはないのだから。
今日、2月14日。今年もキヨくんへ向けてクッキーを作る。
「おいしい、美味しい」って、初めてキヨくんにクッキーを作ってあげたとき、キヨくんとっても喜んでくれたよなぁ。なんて、過去のことを思い出す。
キヨくんが喜ぶ顔をもう一度見たい。それは私のエゴでしかないけど、出来るのであれば私はキヨくんと…………………………に戻りたいのよ、
これも全部、あの人の指示。本当は本心じゃないけれど、私はこのクッキーへ「お呪い」を入れる。
いつになったら、終われるのだろう。
私、もうこれ以上キヨくんに嫌われるのは嫌なのになぁ、
キヨくんとの、「幸せだった」過去を思い出す度に、私の気持ちは揺らいでいく。これは、私の「本当にしたいこと」なんかじゃない、
キヨくんが、この計画に。この「気持ち」に早く気づいてくれますように。
そう、祈りながら私はキヨくんの家のポストにクッキーを投函した。
コメント
3件
え…?ラーヒーが彼女(元)になんか言ったの…?なんかそういうことにしか考えられん…
久しぶりに、🐱🗻で少しいちゃいちゃしてもらいました。🙏 なんだか、危険な香りがしますが、今日のところはハッピーエンド?ということで。 最近、文章の長さに自分でも驚いています……。読んでくださっているみなさんが「長すぎる」と感じるのであれば改善していきたいなと思います。 また、いつまで🐱🗻の小説を見ていたいか、良ければコメントで教えてください🙏(完結目安)