テラーノベル
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晴美は思った、こんな侮辱・・・こんな辱めがあるだろうか、・・・
康夫が自分を裏切り続けた事実が、胸をナイフで抉るように突き刺さる、足元がふらついてまるで地面が沈み込むような感覚に襲われた、康夫は苦し紛れに叫んだ
「絶対お前をとっ捕まえてブタ箱に入れてやるっ!」
だが、真希はさらに声を張り上げて嘲笑を込めて叫び返す
「でも少しあんたに同情してるよ、康夫! あんたも可哀想に、自分の子でもない晴馬に振り回されてさ!」
キャーーーーーーーーッ!
「真希ちゃん! 言わないでぇーーーーーーー!」
晴美の叫び声が川面を切り裂く、彼女は両手で耳を塞ぎ、まるで狂ったように叫び、叫び、叫び続け、ついに膝から崩れ落ち、堤防の冷たい地面にしゃがみ込んだ、涙が止まらず、嗚咽が喉を締め付ける
―やめて、やめて!やめて!真希ちゃん、言わないで!―
「里中和樹!! 晴美ちゃんは和樹とやった後、三日後に康夫! あんたともやったんだって! 避妊してないから晴馬はどっちの子か分からないんだってさ!」
真希の声は鋭く、まるで刃物のように二人を切り裂く
「この子はあんたの子じゃないかもしれないよ、康夫!晴美ちゃんに相談された時、まるでロシアンルーレットだってあたしは言ったよ、どっちの弾が当たったんだろうね!どっちが父親でもこの子は不幸だ!」
「コイツはやっぱり頭がおかしいな! 何を言ってるんだ!和樹は俺の同期で大学時代の親友だぞ! 侮辱するな!俺達はいつも三人一緒だった! その二人がなんて!第一晴美がそんなことするわけないだろう!」
康夫がさっと晴美を見た、だが彼女は地面にしゃがみ込み、頭を抱えて震えている、涙が地面に滴り、嗚咽が止まらない
「なぁ! 君もあの女に言ってやれよ! 嘘も大概にしろって・・・」
うっうっうっ・・・
「ごめんなさ・・・ご・・・ごめんなさい・・・」
晴美の声はか細く、壊れたように震えていた、康夫の顔が凍りつき、信じられないという目で彼女を見つめ・・・ガクッと膝から崩れ落ちた
「・・・本当なのか?」
細川捜査官もまた、晴美が地面にめり込みそうにうずくまるのを、驚愕の目で見下ろしていた
堤防の上は一瞬、静寂に包まれた、パトカーのサイレンの音、ヘリのローター音、川のせせらぎだけが響く
真希は晴馬を抱きしめ、冷たく微笑んだ
「だから、あたしは晴馬を連れて行ったの、この子は、こんな嘘と裏切りしかない家にいるべきじゃないわ
彼女の言葉は、まるで最終宣告のように重く響き、晴美と康夫の心を砕いた。テレビカメラのレンズがその全てを捉え、冷酷に全国へと流し続ける