太中連載
『君に認めてもらう迄』
太宰視点 side 𝔻
中也視点 sideℕ
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「太宰くんは本当に中也くんの事が好きなんだねぇ」
私がポートマフィアにまだ所属していた日
森さんにそう云われた。
「はぁ?何云ってんの!?」
「私があんな莫迦狗好きな訳ないじゃん!」
私は当然否定した。真逆好きな訳はないと。
私が顔を真っ赤にしながら拒否しているのを森さんは机に行儀悪く肘を付きながら何時も通りの真相が分からない笑みを浮かべ
「否、君は中也くんの事が好きな筈だよ。今は拒絶しているのだろうけど体と心の奥は正直見たいだね。」
「中也くんと喋っていると太宰くんは何時もほんの少しだけど雰囲気も表情も丸くなっているのだよ?」
そう云った。
「なッ!?」
私は瞬時に死にたいと思った。
森さんの所へ行く前に入水はしたけどもう一度あの川へ行って今度こそ息の根を止めたいと心底思った。
其れ程恥ずかしかったのだ。
私が何とも云えない声を発している間に森さんは云った。
「今は分からないだろうけど、きっと20歳を超えた辺りで自覚してくるよ」
私は「そんな訳無い!!!!」と断固否定した。
それから数年経った22歳の今。
森さんの云う通りになっていた。
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人々が降誕祭に向けて動き出した12月。
私は元相棒中原中也の家に転がり込んで居た。
「おい、手前…!」
中也が眉間の皺を寄せながら私を呼んだ。
是から中也が云う言葉なんて想定が付いている。
『んで手前が俺の家に居んだよ』だ。
「んで手前が俺の家に居んだよ!!」
ほらね。
ほぼ毎日私は中也の家に入り浸っているのに毎回毎回必ず最初にこの言葉を投げかけてくる。
飽きやしないのかこの子は。
そんな思いを胸の中だけで唱えながら私は口を開いた。
「今日は何時もより帰りが遅かったのだね」
現在時刻は午後12時30分。
良い子ならもう疾っくに寝ている時間だ。
「少し長引いたンだよ」
矢張りポートマフィアの五大幹部とも成れば仕事も多いらしい。
私が居る事にぐちぐち云いながら中也は上着、シャツ、靴下を脱いでいった。
其の儘風呂場へ行き、風呂へ入ってから寝る気なのだ。
「あ、一寸待って中也」
私は中也を呼び止めた。
「んだよ」
中也は滅法面倒くさそうに返事をし、此方の方へ顔を向けた。
「はい、是。此の間君が欲しがってた入浴剤」
私はそう云い中也に手渡した。
私が手渡したのは中也が前々から欲しいと云っていた大手企業の入浴剤。
何でも薔薇の香りが強く、安眠効果、疲労回復、血行改善等々色んな効果があるらしい。
発売されても短時間で売り切れる品物なので中也も入手に困っていたのだ。
「これ!!俺がずっと欲しかった入浴剤じゃねぇか!」
中也がそう云う。
私は少し笑ってしまった。
あまりにも無邪気に、そして可愛らしく中也が喜ぶものだから。
「何笑ってんだよ…気色悪ぃ…」
ポートマフィア五大幹部様には笑いの意図が分からなかったらしい。
「早めの降誕祭贈呈品。受け取ってくれる?」
「手前にしては良い贈呈品じゃねぇか!」
目をキラキラさせながら私を褒める中也は本当に五大幹部とは思えない程幼かった。
「其れじゃあ私の事認めてくれる?」
私は云った。
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sideℕ
「クソッ…仕事長引いたせいで帰るの遅くなっちまった…」
最近連勤で勤めていたせいか少し体が怠かった。
俺は重い体を引っ張りながら漸との思いで家へ辿り着いた。
「はぁ…疾く風呂入って寝よ…明日は久しぶりの休暇だしな…」
そう云いながら俺は鞄に手を入れ鍵を取り出し、鍵穴に差し込んで鍵を回した。
いや、正確には”回そうとした”。
鍵が空いていたからだ。
「…ふゥゥゥゥ…」
俺は深いため息を吐きながら急ぎ早にリビングへ向かった。
俺がリビングに着くと矢張り予想通り、まるで其処に居るのが当たり前かのように太宰が座り込んでいた。
太宰の前の机の上には冷蔵庫から取り出したのであろう葡萄酒が置かれていた。
「あ、お帰り中也〜♡」
呑気にも少し酒の入った声で顔を赤らめながら俺を呼ぶ。
唯でさえ顔だけは良いのだからこんな姿を女性達が見たら失神するに違いない。
だが今気にするのは其処では無い…
「おい…手前…!」
「んで手前が俺の家に居んだよ!!」
もう何回も何回も入り浸られてるからなのか怒るのも面倒くさくなってきた。
「ったく…本当に…」
そうブツブツ文句を云いながら俺は服を脱いでいった。
疲れたのだ。連勤勤めの体に太宰に向けるような体力は殆ど残っていない。
「あ、一寸待って中也」
太宰に呼び止められた。
(めんッッどくせぇ…)
早く風呂に入らせろよ。
そう思いながらも俺は太宰の方に顔を向けた。
「んだよ…」
「はい是」
そう云いながら太宰のくそ鯖が手渡してきたのは俺がずっとの間探し求めてた大手企業の入浴剤だった。
前に1度姐さんから貰って使った時に凄く気に入ってしまったので其処からずっと探していたのだ。
「これ!!俺がずっと欲しかった入浴剤じゃねぇか!」
俺は体が疲れたと悲鳴を上げているのにも耳を傾けず入浴剤の方に気が向いていた。
太宰にしてはやるじゃねぇか!!
そう思った。
中々手に入らない代物なので素直に関心だ。
1度だけポートマフィアの伝手で手に入れようかとも思ってし待ったものなので今自分の手にあるってだけで幸福感に包まれる
勿論素直な気持ちでその事を太宰に伝えた
そうして帰って来た言葉が
「其れじゃあ私の事認めてくれる?」
だ。
俺は瞬時に高揚感から掛け離れた(またか…)と云う呆れに移り変わった。
何故太宰がこんな事を云うのかと言うとつい1ヶ月前の事から始まった事だった。
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1か月前
「中也」
夜の街。
隣で並んで歩いていた筈の太宰が何時の間にか立ち止まって俺を呼んだ。
太宰にしては酷く緊張した様な声色と顔で何が如何したら其んなになるんだと云いそうになった。
俺が「なんだよ」と云って太宰の目の前に行くと
「私、中也の事が好き。付き合って下さい」
そう云い彼奴は手を差し出してきた。
勿論俺はそんな事になるともつゆ知らず少しの間固まっていた。
「あの…返事…欲しいのだけど…」
遠慮がちに云う太宰の言葉ではっと我に返った。
返事と云っても勿論俺は太宰に恋心なんて持ったことないし、太宰が持っているとも思ってなかった。
唯7年間の付き合い(嫌悪)だっただけ。
真逆こんなになっているとは誰も想像が付かないだろう。
「一寸中也!?返事は!?固まっていられても此方が恥ずかしいだけなのだけれど!?」
此奴の割には珍しく真っ赤にさせた顔で太宰が云った。
でも俺は付き合うなんて考えはないし、そもそも好きじゃない。
何方かと云うと嫌いな方だ。
「悪ぃ、無理」
率直な感想だ。
無理なものは無理なのだ。
でも其れを伝えた彼奴の顔と来たら
酒の肴になりそうな程間抜けな顔だった。
「…え?」
え?って何だよ、そりゃ此方の台詞だ。
急に告られて「はい、お願いします」なんて気軽に云う訳ねぇだろ。
「君も私の事好きだと思ってた」
否何でだよ
毎日毎日顔を合わせれば口喧嘩で周りの奴ら全員困ってたのに何で其処で両思いって思えるんだよ
俺はあからさまに顔を顰めた。
其れでも彼奴は懲りずに。
「じゃあ!如何したら付き合ってくれる?」
そんな事を云い出した。
如何したらというのは此方が聞きたい
「じゃあ如何したら付き合って貰えると思えるんだよ」
このやり取りをしているのが莫迦らしくなってきた…
「でも…諦めきれない…」
あまりにも悲しく云う太宰に俺は少し同情してしまった。
此奴がこんなにも自分の思ってることを主張するのは珍しいし、今まで見たこともない表情も今日だけで何回も見せてきたから。
「じゃあ…」
「俺が手前の事認めたら付き合う…」
云ってしまった…
同情したとは云え云ってしまった…
その言葉を太宰に伝えたら太宰は急にパっと顔を明るくしあからさまに機嫌が良くなった。
「ほんと!?」
「じゃあ私、中也に認めて貰えるように頑張る!」
そう云う太宰が何故か怖くて、不気味だった。
此奴は元ポートマフィア最年少幹部。
頗る優秀だったのだ。
認めてもらう為にどんな手段を選ぶか想像もつかない。
だが云ってしまったものは取り返しがつかない。
「…おう」
これからどうなってしまうのかが分からない…
コメント
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早く付き合っちまえよ中也……ッッッッ!!!!!あ、ツンデレなのか〜しょうがないねぇ〜🥰💕✨(重力がくるまであと3秒)ノベルもかけるだなんて尊敬します…!!語彙力くださいッ!!!次も楽しみに待ってますっ!
1コメ取れませんでした、、 今回も♡1000しか押せませんでしたけどこれからも頑張って下さい! 文ストとかあんま見ないのでアニメ見て勉強します、、
めっちゃ神です!太宰さんの一方的な感じの愛大好きです!どうやったらそんないい話かけるんですか!?続きも楽しみに待ってます!