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#幽霊
凛道桜嵐 新
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#日常
がくじゅつてき・あかげ
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わーい
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わあ、また心温まる回でしたね……! 千歳が「お礼を言う」って当たり前のことに気づいていく過程が、本当に丁寧でじんわりしました。あと、名前を呼ぶことの重みを、千歳自身が「あいつが幸せそうだったから」って言葉で説明するところ、すごく好きです。自分がされて嬉しいことを、ちゃんと相手に返したくなる——その素直な気持ちが伝わってきて、思わず顔がほころびました。深山さんと九さんの距離感も絶妙で、ほっこりするエピソードでした🌷
ワシが通された奥の部屋は、ふとんと座卓と座椅子が用意してある和室で、のんびり過ごせそうだった。
奥の部屋で、十日間何をするか、深山さんに説明された。深山さんはワシと距離を近くする間に術式を解析して、解呪の準備をすること。ワシは、深山さんと距離を近くするために、深山さんの膝に乗って組紐を作ったり、深山さんに料理を作ったりすること。
「いいですわね?」
『うん』
ワシは頷いた。祟ってる奴にさみしい思いさせて悪いけど、その分帰ったらいっぱい名前呼んでやろう。
深山さんは、一緒に来た九さんに話しかけた。
「九、あなたもしばらくわたくしのそばで、霊力を分け与えて手伝ってくださいまし」
「わかった。それと、お主たちが一緒に風呂も入らないといけないのについて、少し思いついたことがあるんじゃが」
「なんですの?」
「お主、変化を解いて狸の姿で入るのはどうじゃ? 千歳に毛皮を洗ってもらえば、ただ一緒に入るより距離が近いことになるじゃろ」
「ああ、なるほど……」
深山さんは頷いた。
「そうですわねえ……まあ、この姿で裸になるよりはいいですが、狸の姿は不器用で少し心もとないので……その……あなたも一緒にいてくれません?」
「よいぞ」
九さんはどんと自分の胸を叩いた。
「なら、そうしますわ」
「洗う前に毛皮を櫛でといてもらうと、なおよい。妾もたまに水香にやってもらっていてな」
『櫛あるなら、ワシ、櫛でとくのも洗うのもやる! ちゃんとやる!』
「うむ、櫛は深山のものを使え」
「じゃあ、お夕飯の後によろしくお願いしますわね」
佐和水香さんが来て、ペットボトルのお茶とお茶菓子を差し入れてくれた。ワシは子供の姿になって、さっそく深山さんの膝に乗せてもらった。うーん、祟ってる奴より柔らかいけど、あいつより小さくてちょっと安定感がないな……。
お茶飲みながら組紐を作っていたら、やっぱりお茶を飲んでいた深山さんに「ちょっと、怨霊。黙ってるだけも暇ですから、話をしなさい」と言われた。
うーん、いきなり言われてもな。
『どんな話すればいい?』
「まあ、とりあえず、和泉豊とどう暮らしてるか、もう少し詳しく聞かせなさい」
『うーん、特に変わったことは……。あいつは家で仕事してて、ワシは家事したり組紐作ったり……あと、あいつの楽しいこと増やす年間をずっとしたり』
「楽しいこと増やす年間?」
『あいつにも、いろいろあって』
ワシは、これまでのいろんなことと、祟ってる奴があんまり親に恵まれてなくて、自分が生まれてこなきゃよかったとすら思ってたことを話した。
深山さんは、かなり驚いた顔をした。九さんも細かいことは知らなかったらしくて、興味深げだ。
『ワシはあいつを子々孫々まで祟るつもりなのに、いなくなられちゃ嫌だから、あいつが生きてて楽しいように楽しいことをたくさん増やしてやりたいんだ。今のところ、飯作ってやるだけでも嬉しそうだけど』
「そうでしたの……」
深山さんは、ふと何かを思いついた顔になった。
「そう言えば、千歳って名前は和泉豊につけてもらいましたのよね?」
『うん』
「あなたは、和泉豊の名前呼んだことなかったんですの?」
『うん、なんか、『おい』とか、『お前』とかで済んじゃってたから……』
「あきれた! 楽しいこと増やすって言ったって、基本的なこと出来てないじゃありませんの」
『…………』
そうだなあと思って、ワシはしゅんとした。名前を読んだり呼ばれたりって、それだけですごくいいことなのに、なんで気づかなかったんだろう?
九さんがワシに聞いた。
「それがどうして、いきなり名前を呼びたくなったんじゃ?」
『えーと、こないだ、あいつの名前呼べないのに気づいて、でもしばらく様子見しようかなって思ってたんだけど、少ししてからあいつと花見に行って』
「ふむ」
『あいつのおばあちゃん、花の写真とか、あいつとワシのツーショットとか送ると喜ぶから、桜と一緒にツーショット取ろうってあいつに言われたんだ。そのとき、あいつに千歳こっち、って呼ばれたんだけど』
「ふむふむ」
『なんか、あいつがわしの名前呼んだ時、すごく幸せそうで、その時、ワシこいつに名前呼ばれて悪い気したことないなって思って、名前呼んだり呼ばれたりするのはすごくいいことな気がして、あいつの名前呼ぶために頑張りたくなった』
「ふーむ」
九さんは、大きく頷いた。深山さんも少し興味深げにワシを見た。
「……意外とまともな理由ですわね」
『十日間、あいつにさみしい思いさせちゃうけど、あいつの名前呼べるようになりたい』
そう言ったら、深山さんと九さんは顔を見合わせた。
「……九。一週間を目標にしますわよ」
「まかせろ」
『え、早くやってくれるのか?』
「あくまで目標ですわ、出来なくても文句言うんじゃありませんわよ」
『でも、ありがとう』
「あら、まともにお礼は言えますのね」
『そりゃ、そのくらい』
そう言って、そう言えば人に礼を言うようになったのは、祟ってる奴に注意されてからだなと思い出した。
そう言えば、あいつにまともに礼を言ったこと一度しかない。あんなにたくさん、優しくしてもらってるのに。
よくなかったな……お礼を言われて悪い気はしないのに、全然あいつにやってこなかったなんてな……。
ワシは大人になるのもしなきゃいけなくて、ちゃんとお礼が言えるって、言えないよりずっと大人なのにな……。
あいつに楽しいこと増やすためにも、ワシが大人になるためにも、お礼は……言うべきなんだよな……。