テラーノベル
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今日は学校に行かなかった。ただ川辺まで歩いてきて、流れる水をぼんやりと眺めていた。
川面は太陽の光を受けてきらきらしているのに、胸の奥は重く沈んだまま。
昨日、隠岐くんとブランコで笑い合ったあの時間が夢みたいに遠い。
『……やっぱり、無理だもんね』
小さく声に出す。
わたしがここに居ても、誰の記憶にも残らない。存在してはいけないものみたいに。
だって、もう知ってる。
クラスメイトたちの目には、最初から“わたし”なんて映っていない。
笑い声に混ざることも、呼ばれることもなかった。
それでも――。
『隠岐くんだけは……』
昨日、一緒に笑ってくれた。
昔話をするように、自然に隣にいてくれた。
あの温かさを思い出すだけで、涙が出そうになる。
けれど、それが一番怖い。
隠岐くんまでわたしを忘れてしまったら、もう本当に何もなくなってしまう。
川の流れは止まらない。
わたしの時間も、ここに留めてはくれない。
「……ごめんね」
誰に向けた言葉か、自分でもわからなかった。
ただ、水面に映る自分の姿が、少しずつ滲んでいった。
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