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リナの準決勝が終わり控室に戻る。その道中で例のミカゲが送り込んだ刺客『スズカ&ハナカ』そのコンビだ。こちらに気が付きスズカはちらりとこちらを見たかと思えばすぐに視線を外し彼女は会場にと足を運ぶ。
(やはりあれがミカゲさんの刺客で間違いはなさそうだな。)
(スズカと言ったか?彼女のあの瞳……。確実に殺る気に満ちていた。一般的に聞く「やる気」ではなく、殺意とかの方の『殺る気』……。次は私らだってそういう瞳だった。)
(すでにもう次を見ているのか!?てか物騒すぎるでしょ殺意の方の殺る気滾ってるのは……。ミカゲさんも変わり者だけどその部下ともなれば彼女も変わり者となるのか……。)
不安を感じながらも二人は控室に戻って武装の調整をし彼女の試合を見守ることにした。
一方その頃すれ違ったスズカは……。
(こ、こわいぃぃぃぃ……。男の人怖いぃぃぃぃ……。今私とすれ違った人最初に目が合ったときからずっと見てきて圧があって怖いよぉ。私よりも大きい人は総じてみんな怖いぃ……。毅然としてれば大丈夫って言ってましたけど、やっぱり怖いものは怖いですよミカゲさぁぁぁん……。)
「……。ほら、怯えてないで行くわよスズカ。」
白衣の胸ポケットからひょこっと顔を出し声をかけるは彼女の戦姫ハナカであった。
「は、はいぃ……。」
「あんたの能力とその才能の方が一般人は怖いわよ。」
「……。そう、ですよね。」
その発言の後スズカは一気にテンションが落ちていき、明らかに落ち込んでいるという雰囲気を醸し出す。
「あー……そういう意地悪じゃないから。戦姫大戦するときはってこと。今のあんたは小動物と変わらないわよ。ハムスターとかと変わんないくらいにか弱いし可愛いから大丈夫だから……。」
「ふぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇん……。ハナカァァァ……。」
ミカゲの放った刺客。本職『戦姫大戦の武器開発部門期待の新人スズカ』彼女は人知れず傷ついていた……。
第二準決勝であるハナカVSアルルの試合が始まる少し前。例の会場を煽る司会のパフォーマンスが行われるが、スズカ本人はそれどころではなかった。もともと開発部門に所属しているためか大衆の目に晒されることに対する耐性が限りなくゼロに近いために彼女は壇上でずっと顔を真っ青にし涙目をしプルプル震えていたのだ。一回戦の時も同じようにパニックにはなっていたが会場の熱気はコンロで言うところの中火程度だったが、今はひとつ前の試合の熱が抜けていないために強火を超えて中華とかで見る極強火みたいな状況になっていた!しかし無情にも司会は大会運営のために与えられた役割をこなしていく。そして遂に彼女が恐れていた試合前の一言を話す時間が来てしまった。一回戦はパニックになりながらも何とか言葉を紡いでいき、ありきたりな返答をすることに成功したが今回はその時の比ではないほどに緊張している。ゆえに……パニックと緊張ゆえに口から出たその言葉は望まぬ煽りの言葉を会場にいる観客皆に伝えることとなった……。
「……では、準決勝の意気込みをお願いしますスズカ選手!」
「……私は、早く帰りたいのです……。」
そう……。出た言葉は本心、紛れもない本心である。表舞台に顔を出さない人物がこうして大衆の目に晒されればそのストレスは計り知れない。安息を求めるのは至極当然のことではある。彼女にとって安息の地とは開発部門の部署、さらにその部署の中でも研究員たち個人用の部屋。つまるところ自室のベッドの中である。そこが安息の地であり彼女が戻りたい場所なのだ。そこに帰りたいという本心が心を超えて喉を通過し口から声として出て会場に届けてしまった。そしてそれを聞いた観客はその言葉をこのように理解した。『自身より弱い相手に使う時間がもったいない』そう解釈してしまった。だから会場はまた一気に盛り上がりを見せることとなる。
(やらかしたねスズカ……。)
(……。ハナカァァァタスケテェェェ)
(あんたはまた変わらず見てなさい。)
その後試合開始の合図が出される。両者ともに大地に立った後すぐさまビルの中に隠れる。
今回相手するのは遊撃員の名を持つアルルという戦姫。前回の試合を見るにギリギリではあったが勝利を収めていた。彼女の戦法は名の通り奇襲を仕掛けたりするわけだ。で、彼女のメインウェポンはスナイパーライフル、近接はコンバットナイフにサブウェポンにデュアルハンドガンとハンドグレネード。武装はとにかく小型の物を選び機動力の確保に努めてるようだ。そして相手の装備もまた遊撃員の名に相応しいものばかり。ブースターも小型だが出力は申し分ないものを採用している。とにかくあの戦姫は隠密からの一撃や、奇襲など暗部のような動きをメインに武具共に構成されてる。今回マップがシティなのが不幸中の幸いだが、それでも脅威なのは変わらない。いくらスズカが未来を視れるとはいえあの特殊能力は多用ができない。彼女自身もその力が優れていることは理解してるがその能力のすべてを本人さえ理解できていないため多用することが彼女自身にどんな影響を及ぼすかは分からない。ゆえに基本的な戦闘は私依存となる。一戦目は力を証明し圧を与えるために無理をしてもらった。この試合は私だけの力で切り抜ける。
「ミッション開始……。目標|《ターゲット》確認。狙い撃つ……!」
ビル群のわずかな隙間を通しハナカ目掛けて弾が放たれる。すぐに気が付いたハナカはライトシールドで身を防ぎ射線から逸れる。
「……。遮蔽に隠れられた。ポイントを変える。」
あの隙間を確実に通してくるとは、底辺のランクだと思っていたが年々戦姫やその所持者の質が上がっているというデータは本当だったのか。スズカの資料を読んでて正解だったね。が、初撃を避けられた以上相手は焦りが出るはず。それに今の一撃でどの程度かはなんとなくわかった。質が上がってるとはいえ所詮程度が知れてる。普段やってる武器試験による模擬戦の方がまだやりごたえがあるってもんだ。とはいえ、少し遊んであげるのも悪くない。こういったスナイパーとやり合う機会は少ないからね。
「スズカ?」
「ふぇ!?な、何かなハナカちゃん?」
「この試合少しばかり遊んでもいいかしら?」
「えっと……ほどほどにね?私こうしてステージの上にいるの恥ずかしくて……。」
「わかったわかった……。五分でいいから遊ばせてよ。」
「う、うん。」
「それと、例の先読みは今回いらない。私だけであれは十分。」
「……信じてるね。」
「私が負けたことあった?あんたはこの後のカナ対策を考えておいて。」
「う、うん……。」
さて、スズカからの許可も下りたし五分だけ遊んであげよう。