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格安生姜
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逃走中編の完結お疲れ様でした! この🩷💛シリーズ大好きなので、続きが読めて嬉しいです😆 🩷💛の関係性もそうですが、5人の会話も楽しくて今回もニコニコしっぱなしでした! どんな続編でも私には需要しかありません☺️ 素敵な作品をありがとうございます✨
さわこ様、ありがとうございます!そう言っていただけて嬉しい限りです♪♪旅行いいですね!旅行編になるかは分かりませんがこれからもよろしくお願い致します🙇♀️

完結お疲れ様です まじで面白かったです! 続編として賞金使って5人で旅行行くとか書けませんかね? わがままでごめんなさい🙏 もしできたら続き待ってます♪
「……皆さんに、ひとつご報告があります」
収録開始から約一時間。
ロケ地の隅で、スタッフの黒田が真剣な顔をしていた。
坂「何ですか?」
黒「俺、今日の仕事が終わったら、しばらく逃走中の映像を見たくないです」
坂「俺はもう、ハンターを見るだけで佐野さんを思い出すようになりました」
黒「なんでですか?」
坂「ハンターから逃げてる最中も吉田さんのことばっかり見てるからですよ!!」
黒「それはそう」
坂「認めないでくださいよ!!」
そう。
逃走中の制限時間は150分。
最後まで逃げ切れば賞金を獲得できる。
途中で発生するミッションは専用スマートフォンに届き、参加するかどうかは本人たち次第。飲み物などは担当マネージャーが持ち歩いている。
そして、参加者は五人。
佐野勇斗、吉田仁人、塩﨑太智、曽野舜太、山中柔太朗。
ゲーム開始から一時間が経過した現在、五人ともまだ確保されていない。
ミッションもいくつか成功させている。
賞金獲得の可能性は十分にある。
ただし、スタッフにはひとつ問題があった。
佐野勇斗が、吉田仁人を気にしすぎる。
それだけなら、まだいい。
問題は、吉田仁人もそれを完全に日常の一部として受け入れていることだった。
黒「……坂田さん」
坂「はい」
黒「俺、今日、吉田さんに水を渡した回数より、佐野さんが吉田さんに水を渡そうとした回数のほうが多い気がするんですよ」
坂「いや、飲み物を持ってるのは俺と黒田さんですからね?」
黒「そうなんですけど」
坂「佐野さんが俺に『仁人の水ありますか?』って聞いてくるんですよ」
黒「自分の水を飲んでくださいよ……」
坂「本当にそれです」
その頃、五人はというと。
太「よっしゃー! まだ誰も捕まってへんやん!」
舜「俺たち、結構すごない?」
柔「まだ半分も終わってないよ」
仁「そう。残り約90分あるからな」
勇「90分も仁人と一緒にいられる!」
仁「言い方!!!!」
太「お前、逃走中を何だと思ってんの!?」
勇「え? 逃げ切るゲーム!」
舜「正解!」
勇「あと、仁人と一緒にいるゲーム!」
仁「不正解だよ!!!!」
柔「後半だけ、番組の趣旨が変わってるね」
太「いや、もう変わってるやろ!開始五分から」
仁人が呆れたようにスマートフォンを確認した、そのとき。
全員の端末から、聞き慣れた通知音が鳴り響いた。
ピロン。
舜「おっ、来た!」
太「ミッション!?」
仁「……いや、今回は少し違うかも」
柔「何だろう?」
画面に表示されたのは、これまでとはまったく異なる内容だった。
【緊急指令:賞金ボーナスを獲得せよ!】
指定エリアに設置された五つのボックス。
中には、それぞれ異なる金額が記されたカードが入っている。
参加者は一人につき一枚だけカードを獲得できる。
ただし、カードの金額は開封するまで分からない。
さらに、ボックスの設置エリアは一定時間後に封鎖される。
封鎖前にカードを獲得できれば、最終的な賞金にボーナスが加算される。
もちろん、ハンターもいる。
太「うおおおおお!! 賞金ボーナス!!」
舜「これは行くしかないやろ!」
柔「金額が分からないのが面白いね」
仁「でも、全員が同じ場所に集まるのは危ないな」
勇「じゃあ、どうする?」
仁「二手に分かれて、周囲を確認しながら向かおう。ボックスは五つあるから、焦って取り合う必要はない」
太「よし! 俺、先に行く!」
舜「俺も!」
柔「二人とも、ボーナスのために確保されたら意味ないからね」
太「分かってるって!」
舜「俺たちを誰やと思ってんの?!」
仁「騒がしい人たち」
柔「子供のまま大人になった人たち」
勇「元気な人たち!」
仁「お前は何でも肯定するな」
五人は作戦を立て、二手に分かれることにした。
太智と舜太が先行。
柔太朗は別ルートからボックスの位置を確認する。
仁人と勇斗は、周囲の状況を見ながら進む。
……ここまでは、至って普通の作戦だった。
しかし。
太「待って、これさ」
舜「ん?」
太「俺たち、同じボックス狙ってない?」
舜「……あ」
太「お前、別の場所行けよ!」
舜「いや、太ちゃんが行ってよ!」
太「俺が先に見つけたんやけど!?」
舜「地図見たの俺やから!」
太「地図は舜ちゃんのものじゃないだろ!!」
開始から数分。
賞金ボーナスを懸けた五人の友情は、早くも危機に瀕していた。
その様子を少し離れたところから見ていた柔太朗が、冷静に呟く。
柔「……あの二人、ハンターが来る前に喧嘩で疲れそう」
正解だった。
遠くからハンターが現れた瞬間、二人は同時に叫んだ。
太「ハンター!!」
舜「うわあああああ!!」
太「だから声がでかいって!!」
舜「太ちゃんもだよ!!」
結局、二人はボックスを諦めて全力疾走。
抜群の運動神経でハンターを振り切ったものの、目的地からは大きく離れてしまった。
太「……はぁ、はぁ……」
舜「……なあ」
太「何?」
舜「俺たち、何しに来たんやっけ」
太「賞金ボーナスを取りに来た」
舜「やんな」
太「……」
舜「……」
太「戻るか」
舜「戻ろう」
なお、この一連の出来事を見ていたスタッフは、誰一人として驚いていなかった。
問題は、別の場所にあった。
仁人と勇斗が向かっていたボックスの近く。
勇斗が突然、足を止めた。
勇「……あれ?」
仁「どうした?」
勇「ボックス、あそこじゃない?」
仁「……本当だ」
少し先に、目的のボックスが見える。
周囲にハンターの姿はない。
仁人はスマートフォンで残り時間を確認した。
仁「まだ余裕はあるな。先に取っておこう」
勇「うん!」
二人はボックスへ向かった。
仁人が先にカードを取り出す。
勇斗も続いて一枚を手にした。
そして、二人同時にカードを開く。
勇「……えっ!」
仁「……ん?」
勇「俺、ボーナス最大額だって!!」
仁「え、すごいじゃん!」
勇「やったあああああ!!」
勇斗は大喜び。
仁人も、自分のカードを確認して笑った。
仁「俺も結構いい額だな」
勇「ほんと!? 見せて!」
仁「ほら」
勇「おお! よかったじゃん!」
仁「うん」
勇「……よかったぁ」
仁「……何でお前が安心してんの?」
勇「だって、仁人もボーナス取れたから!」
仁「お前、自分の金額のほうが大事だろ」
勇「もちろん嬉しいよ! でも、仁人も取れて嬉しい!」
仁「…………」
仁人は一瞬だけ黙ったあと、勇斗の肩を軽く叩いた。
仁「……はいはい。ありがと」
勇「うん!」
仁「……その顔やめろ」
勇「え、何で!?」
仁「嬉しそうすぎる!」
勇「嬉しいんだもん!」
その瞬間、黒田の無線から坂田の声が飛び込んできた。
坂『黒田さん、聞こえますか』
黒『はい』
坂『今、佐野さんが最大額のボーナスを獲得したんですけど』
黒『はい』
坂『喜び方が、吉田さんのボーナス獲得を確認したときのほうが大きかった気がします』
黒『……』
坂『……』
黒『もう、賞金を二人で分けたらどうですかね』
坂『本人たちは別々に獲得してます!!!!』
しかし、二人がボーナスを獲得した直後。
勇斗のスマートフォンが震えた。
新しい通知。
画面には、追加の指令が表示されていた。
【特別指令:ボーナスカードを守れ!】
ボーナスカードを獲得した参加者は、カードを保持したままゲームを続行する。
ただし、カードを持った参加者が確保された場合、そのボーナスは失効する。
つまり、せっかく獲得したボーナスを守るためには、最後まで逃げ切らなければならない。
仁「……なるほど。これ、地味にプレッシャーかかるな」
勇「そうだね」
仁「せっかく取ったんだから、最後まで残りたいな」
勇「うん。絶対逃げ切ろう!」
仁「……お前、さっきよりやる気上がってない?」
勇「え? 賞金も増えたし!」
仁「それならいいけど」
勇「あと、仁人も一緒に取れたし!」
仁「そこは別に言わなくていい!!!!」
黒田は、無言でカメラから顔を背けた。
黒「……坂田さん」
坂「はい」
黒「今、佐野さんが『絶対逃げ切ろう』って言ったんですよ」
坂「はい」
黒「普通なら、賞金を獲得するために頑張ろう、ですよね」
坂「はい」
黒「なのに、佐野さんの『絶対』には、吉田さんが含まれてるんですよ」
坂「……」
黒「……」
坂「もう、俺たちのほうが二人のこと詳しくなってません?」
黒「最悪の職業病です」
その頃、柔太朗は三つ目のボックスを見つけていた。
柔「……あった」
カードを取り出す。
開封する。
柔「……おお、これも結構いい額だ」
満足そうにカードをしまい、周囲を確認する。
そのとき、遠くから聞き慣れた声が聞こえた。
太「柔太郎ー!!」
舜「そっち、ボックスあった!?」
柔「……」
柔太朗は、ゆっくりと振り返った。
そこには、全力で走ってくる太智と舜太。
その後方には、ハンター。
柔「……二人とも」
太「何!?」
柔「後ろ」
舜「……え?」
ハンターが迫っていた。
太「うわああああああ!!」
舜「またやんんんんんんんんん!!」
柔「だから、声が大きいって!」
柔太朗は素早く進路を変え、二人と別方向へ走った。
太智と舜太は、驚異的な脚力でハンターを引き離していく。
しかし、ハンターも速い。
先頭を走っていた舜太が、角を曲がった瞬間。
目の前に、もう一人のハンターが現れた。
舜「……え?」
太「舜太、どうした!?」
舜「……あ」
次の瞬間。
舜太の肩が、ハンターに触れられた。
確保。
ゲーム終了ではない。
しかし、ここで舜太の逃走劇は終わった。
舜「……えええええええ!? 俺!?」
太「うそだろおおおおおお!!」
舜「いや、待って! 今のは無理!!」
太「舜太あああああ!!」
舜「太ちゃん、賞金取って!!」
太「舜太、急にいいやつになるなよ!!」
舜「いいから!!」
太「……絶対取るからな!!」
舜太はスタッフに誘導され、確保者待機場所へ向かった。
太智は、悔しそうに拳を握る。
太「……くそ。絶対逃げ切る」
そして、数分後。
太智のスマートフォンが震えた。
別の場所で逃げていた柔太朗から、電話のコールが届いていた。
『無事?』
太「……」
太智は、思わず笑った。
太 (「……あいつ、こういうとこ優しいんだよな」)
『無事! 舜太は確保された! 柔も気をつけろ!』
返信は、すぐに来た。
『了解。賞金、取ろうね』
太「……よし」
太智は再び走り出した。
残り時間は、約六十分。
五人いた逃走者は、四人になった。
そして、ここからゲームは一気に動き始める。
仁人と勇斗のスマートフォンが、ほぼ同時に鳴った。
今度の指令は、先ほどまでとは違う。
【最終ミッション:賞金を確定させろ!】
逃走者は、指定された三つの地点のうち、いずれか一つにある装置を操作することで、賞金の一部を確定できる。
ただし、操作できるのは残り時間が20分を切るまで。
そして、装置のある場所はそれぞれ離れている。
装置を操作しなければ、最後まで逃げ切ってもボーナス以外の賞金は通常どおり。
操作に成功すれば、最終賞金を確定させられる。
ただし、装置の近くはハンターの巡回エリアだ。
仁「……なるほど。最後のミッションか」
勇「行く?」
仁「……どうするかな」
仁人は、地図を確認した。
装置の場所。
ハンターの位置。
残り時間。
自分の体力。
すべてを考慮して、作戦を立てる。
勇斗は、その隣で黙って待っていた。
先ほどまでのように、すぐに「一緒に行く」とは言わない。
仁人が自分で考えていることを、ちゃんと分かっているからだ。
仁「……よし。俺は一番近い装置に向かう。勇斗は、どうする?」
勇「……俺も同じところに行く」
仁「いや、お前は別の場所でもいいんだぞ。足が速いんだから、そっちのほうが成功率が高いかもしれない」
勇「うん。でも、俺は仁人と同じところに行きたい」
仁「……」
勇「仁人の判断が一番いいと思うし、俺もそこなら行けそうだから」
仁「……分かった。じゃあ、一緒に行こう」
勇「うん!」
仁人は、勇斗の顔を見て小さく笑った。
仁「……ただし」
勇「ん?」
仁「俺が疲れたら、ちゃんと自分の判断で動くからな。お前も、自分のことを考えろよ」
勇「……うん。分かった」
仁「本当に?」
勇「本当に!」
仁「……よし」
そのやり取りを聞いていた黒田は、静かに頷いた。
黒「……今のは、ちゃんと会話になってましたね」
坂「はい」
黒「佐野さんも、吉田さんの判断を尊重してました」
坂「はい」
黒「……」
坂「……」
黒「でも、結局一緒に行くんですね」
坂「そこは変わらないんですよ!!!!」
二人は、最後のミッションへ向かった。
残り時間は約四十五分。
ハンターの位置を確認しながら、慎重に進む。
仁人は、無理に走り続けることなく、必要な場面で速度を上げ、隠れられる場所では一度立ち止まる。
勇斗も、それに合わせて行動していた。
途中、ハンターが近くを通りかかった。
仁人はすぐに物陰へ身を隠す。
勇斗も続いて隠れた。
ハンターの足音が近づく。
仁人は息を潜め、じっと待つ。
勇斗は、仁人の前に立つようにして周囲を確認していた。
やがて、足音が遠ざかる。
仁「……行ったな」
勇「……うん」
仁「……よし、今なら行ける」
勇「分かった」
二人は、再び動き出した。
しかし、装置まであと少しというところで、仁人が足を止めた。
勇「……仁人?」
仁「……ちょっと待って」
勇「うん」
仁「……」
仁人は、腰の状態を確認しながら、ゆっくりと呼吸を整えた。
無理をすれば進めるかもしれない。
けれど、ここで無理をして動けなくなったら、最後まで逃げ切ることが難しくなる。
仁人は数秒考え、勇斗を見た。
仁「……先に行って、装置を操作してきてくれる?」
勇「……え?」
仁「俺はここで少し休む。装置までは近いし、お前ならすぐ行けるだろ」
勇「……」
仁「大丈夫。俺も自分で逃げるから」
勇斗は、すぐには答えなかった。
仁人の顔を見る。
無理をしていないか。
判断を急いでいないか。
そして、もう一度、周囲を確認する。
勇「……分かった」
仁「うん」
勇「でも、絶対に無理はしないでね」
仁「分かってる」
勇「……終わったら、すぐ戻ってくるから」
仁「いや、戻ってこなくていいから! お前は自分の逃げ道を確保しろ!」
勇「……」
仁「……勇斗?」
勇「……うん。分かった」
勇斗は、仁人の言葉を受け入れた。
そして、一人で装置へ向かった。
坂田は、その後ろ姿を見ながら、思わず息を吐いた。
坂「……佐野さん、ちゃんと一人で行きましたね」
黒「はい」
坂「すごいですね」
黒「ええ」
坂「……戻ってきそうですけど」
黒「……」
数秒後。
勇斗は、装置の操作を終えた。
賞金の確定に成功。
スマートフォンに成功の通知が届く。
勇「……よし!」
勇斗は、すぐに仁人のいる方向を確認した。
そして、走り出そうとする。
坂「佐野さん!!!!」
勇「はい!?」
坂「まず、周囲を確認してください!!」
勇「……あっ!」
勇斗は、慌てて足を止めた。
坂田の言うとおり、目の前の通路にはハンターが巡回していた。
勇斗は、別のルートへ切り替える。
焦らず、慎重に。
それでも、仁人のもとへ向かう足取りは速かった。
黒田は、その姿を見て小さく呟いた。
黒「……佐野さん、今、自分の賞金を確定させたんですよね」
坂「はい」
黒「普通なら、喜んでいい場面ですよね」
坂「はい」
黒「なのに、今、吉田さんのところへ戻ることしか考えてないですよね」
坂「……はい」
黒「……」
坂「……」
黒「……もう、好きにしてください」
坂「それ、今日何回目の諦めですか?」
黒「数えるのをやめました」
その頃、仁人は物陰で休みながら、周囲の状況を確認していた。
勇斗が装置を操作している間も、自分でハンターの位置を把握し、逃げ道を考えていた。
そこへ、勇斗が戻ってくる。
勇「仁人!」
仁「……お、戻ってきた」
勇「装置、操作できたよ!」
仁「よかったじゃん!」
勇「うん!」
仁「……で、なんで戻ってきたんだよ」
勇「え?」
仁「お前、さっき自分の逃げ道を確保しろって言ったよな?」
勇「うん!」
仁「……」
勇「……」
仁「……うん、じゃないんだよ!!!!」
勇「えっ、でも、ちゃんと周り見てきたよ!」
仁「そういう問題じゃない!」
勇「……ごめん?」
仁「疑問形にするな!」
勇斗は、少しだけ困った顔をした。
勇「……だって、仁人が一人でいるの、気になるんだもん」
仁「……」
勇「でも、ちゃんと自分のことも考える。約束する」
仁人は、しばらく勇斗を見つめたあと、小さく息を吐いた。
仁「……分かった」
勇「……うん」
仁「ただし、俺も自分で判断するからな」
勇「もちろん!」
仁「お前が勝手に全部決めるのはなし」
勇「うん!」
仁「……よし」
仁人は立ち上がり、再び歩き始めた。
勇斗も、その隣に並ぶ。
そして二人は、残り時間を確認した。
約二十五分。
ここからは、ミッションよりも逃走そのものが重要になる。
最後まで逃げ切れば、賞金を獲得できる。
ただし、ハンターに捕まれば終わりだ。
太智は、まだ逃走を続けていた。
柔太朗も、別のエリアで生き残っている。
舜太は確保され、待機場所で悔しそうにモニターを見つめていた。
舜「……太ちゃん、逃げ切ってよ」
そう呟いた直後、モニターに映ったのは。
太智が、ハンターを見つけて全力疾走する姿だった。
太「うわっ、危な!!」
太智は、角を曲がる。
ハンターも追いかける。
そして、太智は咄嗟に建物の陰へ飛び込んだ。
ハンターが通り過ぎる。
太智は、声を出さずに拳を握った。
太「……っしゃ!」
そのまま、慎重に移動する。
だが。
別の通路から、もう一人のハンターが現れた。
太「……え?」
太智は、一瞬だけ固まった。
太「……うそやろ」
逃げ道は、ない。
ハンターが近づく。
太智は最後まで逃げようとしたが、ついに肩をタッチされた。
確保。
舜「太智ちゃんんん!!」
待機場所で、舜太が叫んだ。
舜「いや、あれは無理やって!! 挟まれてたもん!!」
太「……くそー!!」
太智は悔しそうに笑いながら、待機場所へ向かった。
太「……柔太郎、頼んだぞ」
残る逃走者は、勇斗、仁人、柔太朗の三人。
そして、残り時間は十五分。
いよいよ、最終局面だった。
柔太朗は、スマートフォンを確認しながら、慎重に移動していた。
柔「……あと十五分か」
周囲を確認する。
ハンターの位置は、少し離れている。
まだ逃げ切れる。
そう判断した瞬間。
スマートフォンが震えた。
運営からの通知。
【残り10分。全ハンターが追加投入されます。】
柔「……えっ」
柔太朗は、思わず画面を二度見した。
柔「……増えるの?」
待機場所の太智と舜太も、モニターを見ていた。
太「いや、待って!? 増えるの!?」
舜「聞いてないんだけど!?」
スタッフからの説明によれば、終盤の特別演出として、残り10分からハンターが追加投入される。
逃走者にとっては、まさに最後の試練。
そして、残る三人のスマートフォンにも、同じ通知が届いた。
仁人が画面を見て、思わず呟く。
仁「……うわ、これはきついな」
勇「……増えるのか」
仁「残り十分钟からだって。今のうちに、隠れ場所を探したほうがいい」
勇「うん。そうしよう」
勇斗は、仁人の顔を見た。
勇「……仁人、今、どのくらい余裕ある?」
仁「……正直、全力で走り続けるのは厳しい。でも、まだ動ける」
勇「……そっか」
仁「だから、ちゃんと逃げ切る作戦を考えよう」
勇「うん!」
仁人は、地図を確認した。
建物の配置。
通路の幅。
ハンターの巡回ルート。
そして、最後の10分にどう動くか。
仁「……よし。ここからなら、ハンターが来ても逃げ道が二つある。最後まで隠れるより、状況を見て移動したほうがいい」
勇「分かった!」
仁「あと、もし俺が別の方向に逃げたほうがいいと判断したら、お前は自分の判断で動いていいからな」
勇「……うん」
仁「約束だぞ」
勇「……分かった」
勇斗は、今度こそ頷いた。
そして、残り10分。
ハンターが追加投入された。
場内にアナウンスが響く。
逃走者たちの緊張が、一気に高まる。
柔太朗は、建物の陰に身を隠していた。
太智と舜太は、モニターの前で祈るように見つめている。
仁人と勇斗は、別々の逃げ道を確保できる位置にいた。
そして。
ハンターが、仁人たちのいるエリアへ向かってきた。
仁「……来た」
勇「……うん」
仁「俺、右に行く。お前は左。向こうの通路なら逃げやすい」
勇「……分かった」
仁「最後まで逃げ切れよ」
勇「……仁人もね」
仁「当たり前だろ」
二人は、別々の方向へ走り出した。
勇斗は、何度も振り返りたくなる気持ちを抑えながら、目の前の通路を走る。
仁人も、無理のない範囲で速度を上げ、逃げ道を選ぶ。
ハンターが迫る。
残り時間、七分。
柔太朗が、別のエリアでハンターを見つけた。
柔「……っ、危ない!」
素早く方向転換。
しかし、曲がった先にもハンターがいた。
柔「……うわ、そっちも!?」
柔太朗は最後まで逃げようとした。
だが、ハンターの追跡を振り切ることはできなかった。
確保。
柔「……あー、悔しい!」
残り五分。
逃走者は、勇斗と仁人の二人になった。
待機場所では、太智と舜太が立ち上がっていた。
太「あと五分!!」
舜「二人とも、逃げ切れ!!」
太「勇斗、仁人を気にしすぎて捕まるなよ!!」
舜「いや、仁人も勇斗を気にしすぎて捕まるなよ!!」
太「どっちも気にしすぎなんだよ!!!!」
モニターには、別々の場所で逃げる二人の姿が映っている。
勇斗は、建物の陰を使いながら慎重に移動していた。
仁人も、周囲を確認しながら逃げ道を選んでいる。
残り三分。
ハンターは、二人の近くまで迫っていた。
勇斗は、通路の先にハンターを見つけ、即座に方向を変えた。
走る。
曲がる。
隠れる。
そして、再び走る。
仁人も、別の通路でハンターをかわしていた。
ただ、さすがに疲労は隠せない。
仁人は一度だけ立ち止まり、息を整える。
残り一分。
その瞬間、勇斗のスマートフォンが震えた。
残り時間の通知。
勇斗は画面を確認し、思わず声を上げた。
勇「……あと一分!!」
走り出す。
しかし、曲がり角の向こうからハンターが現れた。
勇「……うわっ!!」
勇斗は、咄嗟に方向を変える。
ハンターが追いかけてくる。
残り四十秒。
勇斗は、最後の力を振り絞って走った。
そして、建物の陰へ飛び込む。
ハンターは、目の前を通り過ぎていった。
勇「……っ、はぁ……!」
残り二十秒。
仁人も、別の場所でハンターをかわしていた。
残り十秒。
待機場所の太智と舜太が、声を張り上げる。
太「十秒!!」
舜「九!!」
太「八!!」
舜「七!!」
柔「ちょっと待って、二人とも数えるの速い!」
太「六!!」
舜「五!!」
勇斗は、隠れ場所でじっとしていた。
仁人も、最後の最後まで周囲を警戒している。
太「四!!」
舜「三!!」
柔「二!!」
そして。
150分、終了。
ゲーム終了のアナウンスが、ロケ地に響き渡った。
『逃走成功!』
勇斗と仁人、二人の逃走成功が告げられた。
待機場所が、一気に歓声に包まれる。
太「うおおおおおお!! 逃げ切ったあああああ!!」
舜「二人ともすげえええええ!!」
柔「……よかった」
勇斗は、スマートフォンの画面を見つめたあと、ゆっくりと顔を上げた。
勇「……仁人、逃げ切れた?」
スタッフが、無線で状況を確認する。
そして、返事が届いた。
『吉田さんも逃走成功です!』
勇「……っしゃあああああ!!」
勇斗は、両手を上げて大喜びした。
もちろん、自分も逃げ切った。
賞金も獲得できる。
ボーナスも確定している。
それなのに、勇斗は自分の結果以上に、仁人の逃走成功を喜んでいた。
数分後。
五人が再び集合した。
太智と舜太は、二人に駆け寄る。
太「お前ら、すげえよ!!」
舜「最後の十秒、めっちゃドキドキした!!」
柔「二人とも、本当にお疲れさま」
仁「……ありがとう。いや、ほんと疲れた」
勇「仁人、逃げ切れたね!!」
仁「……うん。お前もな」
勇「やったあああああ!!」
勇斗は、仁人の肩を抱くようにして喜んだ。
勇「ほんとによかった!!」
仁「……ちょ、近い近い!」
勇「え、だって嬉しいじゃん!」
仁「嬉しいのは分かったから!」
勇「俺たち、逃げ切ったよ!」
仁「……そうだな」
勇「賞金も獲得できた!」
仁「うん」
勇「ボーナスもある!」
仁「うん」
勇「……最高だね!」
仁「……うん。最高だよ」
仁人が笑った。
勇斗も笑った。
その瞬間、太智がゆっくりと口を開く。
太「……なあ」
舜「うん」
太「俺たちも一応、友達なんだけど」
柔「……そうだね」
太「俺たちが確保されたとき、勇斗、あんなだったっけ?」
舜「いや、俺が確保されたとき、勇ちゃんは『舜太ー!』って言ってたよ」
太「うん」
舜「そのあと、すぐ仁ちゃんのほう見てた」
太「……だよな?」
柔「俺のときも、最初に『お疲れさま!』って言ってくれたあと、よっしーのほうを確認してたね」
仁「……お前ら、何を検証してるんだよ」
勇「え? みんなのことも心配してたよ!」
太「うん、ありがとう」
舜「でも、仁ちゃんのことはもっと心配してたよね?」
勇「……え?」
柔「そこ、否定しないんだ」
勇「いや、だって仁人、腰痛もあるし、体力も……」
仁「……」
勇「もちろん、みんなのことも心配だけど!」
太「はいはい」
舜「分かった分かった」
柔「……友達って、奥が深いね」
仁「お前ら、絶対面白がってるだろ!!!!」
そこへ、黒田と坂田がやってきた。
黒「……皆さん、お疲れさまでした」
坂「お疲れさまでした。いや、本当に……お疲れさまでした」
坂田の声には、心の底からの安堵が滲んでいた。
勇「坂田さん、ありがとうございました!」
仁「黒田さんも、ありがとうございました」
黒「いえいえ。お二人とも、逃走成功おめでとうございます」
勇「ありがとうございます!」
勇斗は、賞金の話を聞きながら、仁人の隣に立っていた。
そして、仁人が少し疲れた様子で椅子に座ると、すぐにその隣へ腰を下ろす。
勇「……仁人、大丈夫?」
仁「大丈夫。さすがに疲れたけど」
勇「そっか。水飲む?」
仁「……うん」
勇斗は、坂田から受け取った自分の飲み物を持ち上げた。
しかし、その前に黒田が仁人用の飲み物を差し出す。
黒「吉田さん、どうぞ」
仁「あ、ありがとうございます」
勇「黒田さん、ありがとうございます!」
黒「……」
坂「……」
黒「……佐野さん」
勇「はい?」
黒「今、吉田さんに水を渡したのは俺です」
勇「はい!」
黒「俺、吉田さんの担当なんです」
勇「はい!」
黒「……」
勇「……?」
黒「……もういいです」
坂「黒田さん、諦めないでください」
黒「いや、もう十分頑張りました」
坂「俺もです」
そして、番組収録は無事に終了した。
五人は逃走中を終え、賞金を獲得。
舜太、太智、柔太朗は確保されてしまったものの、最後まで全力でゲームに挑んだ。
勇斗と仁人は、最後の最後まで逃げ切った。
……ただし、番組スタッフの記憶に残ったのは、逃走成功の瞬間だけではなかった。
後日、放送された番組は、予想を遥かに超える反響を呼んだ。
特に、勇斗と仁人のやり取りは、視聴者の間で大きな話題になった。
放送後、黒田と坂田は、番組の反響を確認するため、会議室に呼び出されていた。
黒「……坂田さん」
坂「はい」
黒「見ました?」
坂「見ました」
黒「コメント欄」
坂「……ええ」
黒「……すごいですね」
坂「すごいですね……」
画面には、視聴者のコメントが次々と流れていた。
『逃走中を見てたはずなのに、佐野勇斗の吉田仁人への愛情を観察する番組になってた』
『150分のうち、佐野勇斗が仁人を気にしてた時間を計測したい』
『ハンターから逃げながら水分補給の心配するの何???』
『吉田仁人、ちゃんと走れるのに四人が速すぎて相対的に体力ない人になってるのおもろいwww』
『「仁人の作戦で行こう!」←賞金のかかったゲームでこんなに素直な男いる???』
『賞金ボーナス獲得した瞬間、自分の金額より仁人の金額を喜んでるの何????』
『佐野勇斗、逃走中の参加者じゃなくて吉田仁人の専属警備員だった』
『黒田さんが水渡す前に勇斗が確認してるのほんま草』
『坂田さん、担当マネージャーなのに勇斗の行動を把握できてないのかわいそうすぎるwww』
『太智と舜太の喧嘩が小学生すぎる』
『柔太朗だけずっと冷静なの何? 保護者?』
『舜太の確保シーン、太智との友情が熱くて普通に感動したのに、そのあと勇斗と仁人が二人で逃げてて情緒が忙しい』
『最後の十秒、勇斗が仁人のほう確認しようとしてるの見て声出た』
『逃走成功した瞬間に「仁人も逃げ切れた?」って聞くの、まず自分のこと喜べwww』
『いや、友達って何??????』
黒田は、ゆっくりと椅子にもたれた。
黒「……最後のコメント、俺もずっと思ってました」
坂「俺もです」
黒「でも、本人たちは友達なんですよね」
坂「はい」
黒「……」
坂「……」
黒「……もう、次の企画では別々に参加させましょう」
坂「賛成です」
黒「別々の番組に出てもらいましょう」
坂「そこまでするんですか!?」
黒「だって、別々の場所にいても、佐野さんが吉田さんに連絡する可能性があるじゃないですか」
坂「……」
黒「……」
坂「……否定できないのが怖い」
そのとき、会議室の扉が開いた。
勇「お疲れさまでーす!」
仁「お疲れさまです」
噂をすれば何とやら。
佐野勇斗と吉田仁人が、二人そろって入ってきた。
黒「……」
坂「……」
勇「え、どうしたんですか?」
黒「……いえ」
坂「……何でもないです」
仁「……何かありました?」
黒「……吉田さん」
仁「はい?」
黒「佐野さんとは、仲がいいんですね」
仁「……え? まあ、友達ですから」
勇「そうそう! 俺たち、めっちゃ仲いいんですよ!」
黒「……」
坂「……」
仁「……?」
勇「……?」
黒「……もう、いいです」
坂「黒田さん!?」
黒「俺たち、頑張りましたよね」
坂「……はい」
勇斗は、きょとんとした顔で仁人を見る。
勇「……何か、俺たち変なことした?」
仁「……さあ」
勇「……まあ、いっか!」
仁「そうだな」
そして二人は、何事もなかったかのように並んで会議室を出ていった。
最後まで、友達として。
最後まで、自然体で。
最後まで、周囲の理解を置き去りにして。
黒田と坂田は、二人の後ろ姿を見送った。
黒「……坂田さん」
坂「はい」
黒「俺、今日で確信しました」
坂「何をですか?」
黒「この二人を担当すると、仕事の内容が変わります」
坂「……何の仕事に?」
黒「関係性の観察です」
坂「……」
黒「……」
坂「……それ、もう番組の企画になってません?」
黒「……」
坂「……」
黒「……次の企画書、作りますか」
坂「やめてください!!!!」
こうして、逃走中は幕を閉じた。
150分間の逃走劇。
五人の友情。
賞金を懸けた真剣勝負。
そして、最後まで解決しなかった、佐野勇斗と吉田仁人の距離感。
逃走中のスタッフは、最後まで二人を恋人だとは断定しなかった。
なぜなら、二人は本当に友達だと言い張っていたからだ。
ただし、視聴者の大半は、今も納得していない。
そして何より。
本人たちは今日も、まったく気にしていない。
逃走中・完結。
賞金獲得、おめでとうございます。
黒田さん、坂田さん、本当にお疲れさまでした。
これにて逃走中編終了です!皆様がくださるコメント等で私自身とても励まされました!!こんな駄作に皆様本当に暖かくて、、、改めまして本当にありがとうございました!続編は正直書こうか迷っている所ではあります、