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やっば!
忘れてた〜
誕生日近いんだ〜
行ってらっしゃい!!
体育館の中は、いつもより少しだけ騒がしかった。
「パス、こっち!」
「はいはい、今行く!」
ボールが床を打つ音が、一定のリズムで響く。
ちぐさは、入口の近くで立ち止まっていた。
「……すごい音。」
「慣れると、これが落ち着くんだよ。」
横であっきぃが笑う。
「心臓の音みたいじゃん?」
「……そうかな。」
ちぐさはそう答えながら、胸に手を当てた。
確かに、似ている気がした。
どくん、どくん、と。
「おっ、転校生!」
ぷりっつが気づいて、手を振る。
「ちぐ!らお!見に来てくれたん?」
「少しだけ。」らおが答える。
「ええやんええやん!ほな、近くで見とき!」
まぜたはコートの端でストレッチをしていた。
ちらりと視線を向けて、軽く会釈する。
「……来てたんだ。」
「うん。」
ちぐさが答えると、まぜたは一瞬だけ、ちぐさの足元を見た。
「……今、風。」
「え?」
「いや……なんでもない。」
まぜたはすぐ目をそらした。
そのやりとりを、あっとが少し離れた場所から見ていた。
「……」
隣で、けちゃが小声で言う。
「ね、あっちゃん。」
「なに?」
「ちぐ、なんか……ここにいるの、当たり前みたいだよね。」
あっとは少し考えてから答えた。
「……そうだね。」
そのとき。
「よし!次、あっきぃ入るぞー!」
「はーい!」
あっきぃがコートに走り出る。
「ちぐちゃん、見てて!」
「う、うん。」
試合が始まる。
パス。
ドリブル。
シュート。
その動きの中で。
ちぐさは、はっきりと感じた。
(……流れ)
誰がどこに動くか。
次にどこへボールが行くか。
わかる。
理由はわからないけど、
*風みたいに、先が読める*。
「今だ!」
あっきぃが跳ぶ。
シュート。
「――入った!」
ぷりっつが声を上げる。
「ナイスや、あっきぃ!」
「今の、やばくない?」
「今日キレてる!」
あっきぃは少し照れたように笑った。
「たまたまだって!」
でも。
ちぐさの胸が、また小さく震えた。
(……たまたま、じゃない)
その瞬間。
ふっと、体育館の空気が変わった。
ほんの一瞬。
風が、*内側から巻いた*。
「……?」
らおが、すぐに気づく。
「今……」
「……感じた?」
ちぐさが、小さく聞く。
らおは答えなかった。
ただ、ちぐさを見る目が、少しだけ鋭くなる。
あっとも、目を細めていた。
「……妙だな。」
「え?」けちゃが首をかしげる。
「今、ちょっと……」
言葉を探すように、あっとは間を置いた。
「空気が、重なった。」
「重なった?」
「うん。二重、みたいな。」
けちゃは笑う。
「むずかしいこと言うね、あっちゃん。」
試合が終わる。
「はー、疲れた!」
あっきぃが戻ってきて、ちぐさの前に立つ。
「どう?バスケ。」
ちぐさは、少し迷ってから言った。
「……あっきぃ、すごかった。」
「え?ほんと?」
「うん。」
その言葉に、あっきぃはぱっと笑った。
「やったじゃん!」
ぷりっつが肩を組んでくる。
「ええセンスしとるで!なあ、まぜた!」
まぜたは腕を組んだまま、静かに言う。
「……あっきぃの動き、今日は変だった。」
「え、なにそれ。」
「いい意味で。」
まぜたはそう付け足した。
その場の誰も、理由を知らない。
でも。
確実に。
何かが、重なり始めている。
体育館を出るとき。
ちぐさは、ふと立ち止まった。
「……らお。」
「どうした。」
「俺、たぶん……」
言葉が、途中で切れる。
どう言えばいいのか、わからない。
らおは、静かに待った。
ちぐさは、小さく息を吸う。
「……思い出しそう。」
らおの指が、わずかに動いた。
「……そうか。」
それ以上、聞かない。
でも、その背中は。
*守る位置*に、自然と入っていた。
帰り道。
夕焼けが、校舎を赤く染める。
あっきぃが振り返って言った。
「ねえ、ちぐちゃん。」
「なに?」
「ここ、楽しいよね。」
ちぐさは、少し考えてから答えた。
「……うん。」
それは、嘘じゃない。
でも。
胸の奥で、静かに波紋が広がっている。
(もうすぐ……戻る)
戻る、という言葉の意味は、まだわからない。
ただ。
風はもう、止まらない。
お疲れ様です。
まったねー