誰かが隣に座っていた。
俺よりも背が高い。
けど、不思議と怖くはなかった。
逆になんだかほっとした。
お気に入りのブランケットに包まれたような、そんな安心感があった。
みことがまどろんでいると、その誰かはゆっくり振り向いた。
緋色の瞳。深緑色の髪。
その端正な顔立ちに、見覚えがある。
「大丈夫だよ。」
ああ、この声。
ざらっとしてて、暖かくて、 ずっと聞きたかった声。
視界がゆっくりぼやけていく。
やだ。やだよ。
はっきりそう思う。
まだ彼と一緒にいたい。
この幸せな夢から、覚めたくない。
薄れゆく意識の中、低い囁きが耳元に落ちた。
「みこちゃんは、俺が守るから。」
ーーーーーーーー
寝室中に響くスマホのアラーム音。
目に入ったのは、いつもの天井だった。
分かりきっていることなのに、僅かな落胆を覚える。
ベットに倒れ込んだまま、アラームの息の根を止める。
部屋着のTシャツは、汗でぐっしょりと濡れていた。
肌に纏わりつき、少し気持ち悪い。
この夢を見るのは、いったい何回目だろう。
目を瞑り、ぼんやりと考える。
夢の中で、自分は小学生になっていて、彼の隣に座っている。
そして、彼が振り向いた瞬間で、いつも目が覚めるのだ。
まるで、彼の笑顔に蓋をしているみたいに。
どくり、と心臓が音を立てた。
少し気を緩めれば、抑えているものが溢れそうだ。
小さく深呼吸をし、立ち上がる。
大丈夫、大丈夫だよ。
自分に優しく語りかける。
あんなこと、忘れた方がいいんだ。
あの緋色の瞳も、
あの深緑色の髪も、
あの声も、話し方も、
全部、全部、
ドアノブに手をかけ、みことは小さく呟いた。
「ーーもう、過去のことなんだから。」
コメント
2件
なぜバレた、、、、、コメントありがとね!
アラームの息の根とかいちいち表現が好きすぎる…ッ✨絶対国語得意なタイプ…(偏見 ほんと天才すぎる☺️