第三章〜再会と後悔〜
俺は思わずかけ走った。
あの髪、あの身長、あの見た目、全て笹峰に似ていた。
笹峰に後ろから話しかけた。
「あの。笹峰?」俺はそう声をかけた。
振り返るとやはり笹峰だった。白杖を持ったその姿。
「その、あのさ。」
「原西くんだよね?どうしたの?」
笹峰は覚えていた。何一つ嫌な顔をせず、こちらを向いて、明るく話していた。
「あの。時はごめん。謝って許されることでもないのは分かってるけど。謝りたくて、この3年間。」俺は何を言ってるんだ。ただ、、笹峰には笑みが浮かんでいた。
「そっか。嬉しいな。ねぇ。原西くん。こっち来てくれない?」笹峰にそう言われて俺はついて行った。白杖の使い方が上手だ。
ふと足を見ると、あの時俺が作ってしまった傷跡がまだ残っていた。謝ったからと言ってまだ後悔をしている。笹峰に許して貰えた保証はない。この後どこに連れていかれるのかなんて分からない。でも、着いていった。
ついて行った先には、笹峰が講師としてやっている視覚障害教室だった。
「原西くん。今日から手伝ってくれない?」
俺はそう言われた。一瞬戸惑ったが、うん。と答え教室の中に入っていった。
教室までの道は曲がりが多くて、白杖でもなかなかきつい。ただ、笹峰はスラスラ行った。感覚というものはすごい。
「あと。原西くん。このあとも少しあの日についてはなそっか。」やはり俺は怒られるんだな。と思い、恐る恐る「わかった。」と聞こえるように言った。
この教室は視覚障害について知ろうとする人で溢れ返っていた。どうやら、講師を雇うより、笹峰が自ら教えたい。と立候補し、今は無償で教えているそうだ。
俺は笹峰から紹介された。
「この方は今日から手伝ってくれる原西くん!」
俺は少し照れ臭くなって声が小さくなってしまった。
生徒に教えているときの笹峰はすごく、自信があって、明るかった。俺とは真反対だった。
白杖の使い方、視覚障害者から見える視点、視覚障害者への対応の仕方などを教えていた。俺が手伝うって言うのは、書記だった。笹峰はほぼ完全に見えない状態でホワイトボードに字を書くのができなかった。俺は笹峰が言ったことを重点的にまとめ、それをホワイトボードに書いた。最初は合わせるのに精一杯、追いつくのに精一杯でところどころおかしかった。でも、笹峰は「ありがとう。」と言ってくれた。
俺は感謝されるべき人ではない。感謝したい。謝罪したいという気持ちが大きかった。
授業が終わると俺は笹峰に言われた通り話をされた。あの日のこと。2人とも鮮明に覚えている。しばらく沈黙が続いた中笹峰が口を開いた
「あの時さ。原西くん。自分の意思ではしてないよね。」
俺は一瞬困惑した。
原西「なんで?」
笹峰「いや。なんか、白杖取られた時、やけに白杖が震えていたもん。だから、命令されてやったのかなみたいな。」
原西「でもやったのは俺だし」
笹峰「やらなかったら痛い目に遭うかもしれないからやっちゃったんだよね。あのね。あの時とても怖かった。白杖がない状態でたつことなんて。でも原西くんも怖かったんだよね。きっと。 」
俺は喋ることが出来なかった。
笹峰「私ね。原西くんのことがあれからずっと気になってたの。でも、転校しちゃってさ。あんな殺伐として、原西くんをいじめたりしているクラスにいるのが嫌で。」
俺はその時初めて転校した理由を知った。
そして笹峰は立て続きにこういった。
「私のせいで、原西くんの人生がめちゃくちゃになっちゃったよね。ごめんなさい。」
そんなことは無い。違う。俺のせいだ。笹峰は悪くない。でも、言葉に上手くできない。
「そんな事ないよ。俺のせい」
それだけしか言えなかった。
笹峰は 上を向いた。 俺は 下を向いた。
そして笹峰はなにか言いたそうにしていた。
笹峰「あのね。つき、なの」
俺「月?」
笹峰「なんでもないよ!さ!帰ろ」
笹峰「これ。私の連絡先!」
そう言ってそそくさと帰って行った。
俺は月の意味を理解できなかった。
今日の夜は月が綺麗だ。丸に輝く黄金の光
自分のことを全く言えなかった。ずっと後悔したまま。そのまま俺は眠りについた。
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