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第18話 〚迎えに来た現実〛
放課後の校舎は、静かすぎた。
夕方の光が、長い影を床に落とす。
澪は、胸の奥の嫌な予感を抱えたまま、足を進めていた。
(……来てる)
予知で見た場所。
予知で見た時間。
階段下に差しかかった、そのとき。
「……澪」
背後から、声。
振り向いた瞬間、
視界の端で――
倒れている人影が見えた。
「……海翔、くん……?」
海翔が、床に倒れていた。
動かない。
「っ……!」
駆け寄ろうとした、その腕を――
強く掴まれる。
「やっと、二人きりだね」
恒一だった。
近すぎる距離。
逃げ道を塞ぐ位置。
予知と、同じ。
「離して……!」
澪の声が震える。
「大丈夫」
「澪は、俺といればいい」
その瞬間。
「――離せ」
低く、鋭い声。
恒一の動きが止まる。
「澪から、手を離せ」
倒れていたはずの海翔が、
立ち上がっていた。
ふらつきながらも、
澪の前に立つ。
「……まだ、邪魔するのか」
恒一の声に、苛立ちが混じる。
だが――
次の瞬間。
「澪!!」
「下がって!!」
えまの声。
しおりとみさとが、全力で駆け寄ってくる。
さらに――
別方向から、足音が重なる。
「西園寺!」
「動くな!」
海翔の親友と、友達。
そして――
校長先生と担任が、そこにいた。
恒一の顔から、血の気が引く。
「……なんで」
校長が、静かに、しかしはっきりと言った。
「昨日、橘くんから話を聞いていた」
「白雪さんの身に起きていることも含めて、だ」
海翔は、昨日、
自分の親友と友達に、
澪のこと、怪我のこと、
すべてを話していた。
「一人じゃ、無理だと思った」
「だから……頼った」
その言葉に、
澪の目から、涙が溢れた。
「……西園寺恒一」
担任が、一歩前に出る。
「君を、保護する」
恒一は、逃げなかった。
逃げられなかった。
周囲の視線。
状況。
すべてが、揃ってしまったから。
「……違う」
そう言いかけて、
言葉は続かなかった。
澪は、震える足で、
えまたちの方へ下がる。
みさとが、そっと澪の肩を抱いた。
「……大丈夫」
「もう、一人じゃない」
海翔は、澪を見て、
小さく笑った。
「迎えに来たって……言っただろ」
予知は、確かに現実になった。
――でも。
最後の結末だけは、
違っていた。
澪は、初めて理解した。
未来は、当たるものじゃない。
変えられるものなんだ。