「お邪魔します…」
重い扉を押しのけ、加奈は部屋の中に入った。
「入ってきなさい」
加奈は驚いた。部屋の中にはなんと、老婆ではなく、1人の女性とその娘らしき姉妹がいたのだ。
「あなた……、エラ?」
加奈は慌てて言い訳を考える。
「あ、私は……姫沢」
いつの間にか戻っていたユキが口をはさんだ。
「あんたはエラや。エラとして振舞わなあかん」
「私は、エラです」
「そうや」
姉妹のうちの1人が、加奈に雑巾やら箒やら掃除セットを突き出した。
「エラ、そこの汚すぎるキッチンの掃除、頼んだわよ」
加奈は何一つ文句を言わず、掃除セットを持ってキッチンに向かった。







