テラーノベル
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夕暮れの浅草寺裏の公園。
子どもたちの笑い声が遠くに聞こえる。
ベンチに座り、缶コーヒーを手にしたふたりは、しばらく無言だった。
「……堪忍な」
リコが口を開いた。
「いえ、私こそ……」
「ちゃうちゃう、ウチのツッコミが良ぉなかった。最初の“紅白婚”のくだりはよかってんけど…途中から、どこで返してええか分からんくなってん」
「私も……ボケを詰め込みすぎました」
しばらくの沈黙。
リコが空を見て、ぽつりと笑う。
「でもさ、センセ言うてたやろ?“ネタは悪くなくて練習不足”とか、ほな、今は練習しまくればええんちゃう?簡単なことやん」
「……そうですね」
「せやせや。もっと練り直して、次はウケとったるで」
寿司子は静かに、でも確かに頷いた。
「……ツッコミ、合わせられるようにします」
「うちも。寿司子の変化球、ちゃんとキャッチできるようになるわ。甘辛で煮付けたキツネさんのように、キッチリ包みこんだる!」
「変化球……だったんですね」
「ナチュラルに狂気入っとったで?」
ふたり、思わず笑った。
「……よければ、また一緒に」
「当たり前やろ! “イナリズシ”は、これからやで!」
空の缶をゴミ箱に放り投げ、ふたりはゆっくり立ち上がる。
浅草の街に夜の灯がともる。
まだバラバラなシャリとキツネ。
けれど、“握り方と包み方”さえ見つかれば──きっと、うまくいく。
📍次章予告:「初舞台!二貫分の笑い」
「す、寿司子!いよいよ初舞台やな…緊張するわ…」
「知ってる?舞台前に緊張してるときは“鮪”って手に書いて飲み込むといいんだよ」
「ちゃうわ!“鮭”って書くんや!」
「……あれ?」
ふたり「アレ?」
続く
コメント
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♡50達成ありがとうございます✨