◻︎お隣の来栖さんのご主人
日曜日の朝、資源ゴミを出しに行こうと自転車にゴミ袋を積んだ。
よっこらしょと来栖さんの家の前を通った時、玄関になんだか違和感が…
自転車をとめて門を入ると、玄関ドアが少し開いていた。
_____こんなに朝早く?
「来栖さーん?いらっしゃいますか?」
恐る恐るドアを開けて中へ入ると、そこは足の踏み場もなかった。
_____うそっ!来栖さんのご主人はどこ?
「来栖さん、どこですか?いらっしゃいますか?」
声をかけながら中へ入って行く。
玄関からダイニングへ続く廊下にも、物が散乱していて歩きにくい。
足で両側へよけて、道を作りながら進む。
二階の寝室にはいない。
和室の襖が開いていて、足が見えた。
「ひゃっ!!えっ!く、くるすさん!!」
そっと足に触ったらあったかい。
_____よかった、生きてる…いや、熱い!
「来栖さん、大丈夫ですか?ねぇ!しっかりして!」
起こしても目を覚さない。
高熱があるようだ。
救急車、呼ばないと。
急いで電話をかける。
「はい、そうです。高熱があるようですが、声をかけても目を覚ましません、はい、わかりました」
救急車が駆けつけるまで、声をかけ続けてくださいとのこと。
「来栖さん、しっかりして、もうすぐ救急車が来ますから」
10分ほどでサイレンが聞こえた。
「奥さんですか?乗ってください」
「え?あ、はい、わかりました」
違うとは言えず、とりあえず言われた通りに従う。
救急車は、市立の医療センターに向かうようだ。
_____あー、ゴミ出し途中だった!それに、旦那と息子の朝ごはんも
「すみません、ちょっとだけ家に電話を」
旦那に電話して、簡単に事情を話した。
「了解!鍵かけて家出るから」
「よろしく」
ついでに洗濯物干しといて、とは言えなかった。
それにしても、来栖さん、どうしたんだろ?
奥さんが出て行ってからは、これまで以上に距離を置かれている気がしていたけど、まさかこんなことになっているとは…。
〈ご主人が倒れました。過労と睡眠不足と栄養失調…による発熱らしいです。市立の医療センターに入院します。これから詳しい検査もするみたいだけど〉
弥生さんにそれだけメッセージを送っておいた。
少しして返事があった。
《ご迷惑をおかけして、すみませんでした。あとはこちらでなんとかします》
「ホントだよ」
つい、本音が口に出た。
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