星神の使いである白い鳥たちが、 闇夜を駆け抜けていく。
風を切る音とともに、 地上に降り注ぐ光の軌跡……。
それはまるで、流れ星のようであった。
「ねぇ、君」
呼びかけられて振り向くと、 そこには見覚えのない顔がある。
長い髪を二つに分けて結った女の子。
「君はどうして、こんなところにいるの?」
「あなたこそ……」
私は答える。
「わたしはね、探し物をしてるのよ」
「探し物って……なんですか?」
すると彼女は、少し困った顔をして言った。
「わからないわ。でも、大切なものなの。だからこうして探しているんだけど……なかなか見つからないのよね」
彼女は少し困ったように笑うと、また空を見上げた。……流れ星。
願いごとを唱える間もなく、それはあっけなく消えた。
「……もう行かないと……」
そう言って立ち上がる彼女。
俺は、何も言わずにそれを見送った。……彼女と会うようになってからどれくらい経ったろうか。
毎日のようにここを訪れるようになった彼女は、いつしか俺にとって特別な存在になっていた。
不思議な雰囲気を持った女性だった。
彼女は僕を見て微笑みを浮かべると、小さく手招きをした。
「こんにちわ」
僕は彼女のもとへ歩み寄りながら言った。
「はい、こんにちわ」
彼女が応えてくれた。
ふいに僕の中に不安が生まれた。
ここはどこなのか? どうしてここにいるのか? 何もわからないのだ。
そんなことを考えているうちに、ますます不安が大きくなってきた。
すると女性が不思議そうな顔をしてこう言った。
「どうしました?」
僕は答えられなかった。何を言って良いかわからなかったからだ。
しばらく沈黙が続いたあと、女性が突然笑い出した。
僕は驚いて彼女を見つめた。
女性は楽しそうに笑っていた。
ひとしき笑うと、彼女は笑顔のまま僕を見上げてこう続けた。
「あなたはきっと、迷子なんでしょうね……」
僕はまた驚いた。なぜわかったんだろうと思った。
そして少し考えてみたけれど、やっぱりわからなかった。
黙ったままの僕に向かって、女性はさらに続けて言った。
「私も同じなんです。でも大丈夫ですよ」
彼女は、微笑みながら言った。
「私はあなたを知っていますよ。あなたのこと、ちゃんと見ていますから……」
それはまるで、自分に言い聞かせているようでもあった。
「だから安心してくださいね」
彼女の瞳の奥に映るのは、俺ではなく別の誰かのように思えた。
「えっと……じゃあ、また来ますね!」
彼女が駆けていく音が聞こえた。
俺は、しばらく動けずにその場に立ちつくしていた。
そして、彼女の言葉を反すうしながら、考えていた。
同じというのはどういうことなのか。
彼女もまた、自分と同じように不安を抱えているということだろうか。
それとも、もっと違う何かを意味しているのか……。
結局、いくら考えてみても答えが出ることはなかった。
彼女の言う”知っている”とは、一体何をどこまで知っているのだろう。
例えば……
俺の記憶を覗いてみたとか、そういうことなんじゃないだろうか。
いや……そんなことはありえないか……。
でも……だとしたら何故、あんなことを言ってきたんだろうか……。
そもそもどうして、あの時彼女は泣いていたんだろう……。
まぁ、いいや。
深く考えるのは止めにしておこう。
きっと、またそのうち会えるよ。
だから……その時までお別れね。
私のことを忘れないでいてくれるかしら? 私はあなたを覚えてるわ。
だって……あなたは私の親友なんだもの! 私が覚えていてあげるから安心して。
じゃあね、バイバーイ!! また会いましょうねー!!! 空を見上げてごらんなさい。
そこには、たくさんの流れ星があるでしょう。
願いごとをする時は、よく気をつけないといけません。
どんなお願い事にも応えてもらえますけど、 叶えてもらった後はきちんと対価を支払う必要があるんですって。
えっ!? 何を支払えばいいのかって? それは自分で考えなくちゃダメですよ。
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