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私
にとって一番身近な異性は母だった。母はいつも私の味方だったが、それは母が私のことを理解してくれているからではなくて、単に母自身が誰からも理解されない人間だからに過ぎないということを私は幼い頃からよくわかっていた。しかしそれでも私は母のことが大好きだったので、いつだって母のために何かしてあげたかったのだけれど、私がそうすればするほど、母はますます私に対して苛立ちを募らせていった。
母に気に入られようと頑張っていたつもりなのに、気がついたら私はすっかり嫌われていて、何をしても駄目になっていた。それどころか私はどんどん馬鹿になっていった。その証拠に中学三年のとき受けた全国模試の結果は惨々たるものだった。私は自分が馬鹿だとわかっていたから勉強していたつもりだったけれど、それでもやっぱり馬鹿だったのだ。高校に入ってからもそれは変わらず、成績は落ちていった。このままではいけないと思って塾にも通いだしたがそれもうまくいかず、成績が落ちている原因がわからないまま、ずるずると二年間を過ごした。その結果がこれだ。
今更になってわかったことだが、そもそも私は自分のことが好きじゃなかったらしい。だから努力して結果を出しても嬉しくないわけだし、それで人に褒められても納得できなかったのだ。私が嫌うのは自分の価値を信じられないところだろうと思う。
こんなふうに書くとまるで私には何かすごい才能があるように聞こえるかもしれないけどそうではない。ただ単に自信がないだけだ。この歳になってもまだ自分には何の才能もないと思っている。小説を書いたことがあるなんて嘘っぱちで本当は何も書いたことがないんじゃないかとか思うくらいだ。それに私はいつも誰かの顔色ばかり窺っている気がする。自分では何も決められないし、他人に言われるままに動くだけの人生を送ってきた。それが悪いことだとは思ってはいないけれど、あまりよくないことだという自覚はある。だってそれって誰にとっても都合の良い人間だということなのだから。
今の職場は居心地が良い。仕事仲間も良い人たちばかりだし。でもそれは私がこの会社を選んだ理由ではない。ただ単に家から近くて時給が高いから選んだだけ。その証拠に辞めたいとは思わないけど、だからといって続けようと思うほどの熱意はない。こんなんじゃ駄目だって分かっていても、どうしても今の生活を変える気にはなれない。
でもさすがにそろそろ本気で考えないとまずいかなって思う。このままだと本当に一生働いて生活して行かなきゃいけなくなる。別にそれが嫌ってわけじゃないんだけど、なんかそういう人生は違う気がするんだよねぇ……。あーあ、誰か私を見つけてくれないかしら。
―――
「おはようございます」
「ああ、お疲れ様です」
いつものように挨拶をしてタイムカードを切る。そしてそのまま更衣室に向かう。
「あれ? 今日は早かったですね?」
「ええ、ちょっと用事がありまして」
「そうですか。それじゃあお先に失礼しますね」
仕事を終えて帰宅しようと席を立つ。今日はいつも以上に疲れた。それもこれもあのクソ上司のせいで……! 会社を出て駅へと向かう道すがらコンビニに寄った。目的は晩ご飯の材料を買う為ではなく、ストレス解消の為に飲む酒を買いに来たのだ。
(あービール飲みたいなぁ)
しかし残念なことに残業してまで仕事を頑張って終わらせたというのに給料から天引きされるお金というのはほんの一割程度しかないのです。この一割というのがとても大きいわけですよ。例えばコンビニ弁当一つ買うにしても百円のものを買うとしても消費税分を引かれると結局五十九円しか手元には残りません。つまりはそれだけお小遣いが少ないということなのです。
それではあまりにも生活していく上で不便極まりないのでどうにかならないものなのかと思いました。
そこで色々と調べたところやはり副業というものをするべきではないかと思い立ちました。サラリーマンにとっての副業といえば本業の仕事が終わった後の時間を使って行うものというイメージが強いと思います。実際僕もそのイメージ通りで、平日は仕事を終え帰宅して家事をこなしてから就寝するまでの二時間を有効活用しようと思っていました。しかし僕は毎日残業をして帰宅するのは夜遅くになっていますから、正直言って二時間の空き時間はあまりに中途半端なのです。だからといって趣味もない僕の唯一の楽しみである睡眠時間を削ることはできませんでした。
ならばどうするかと考えた結果、小説を書いてみることにしました