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あの人が自虐を言ってその場を盛り上げるたびに、キュッと胸が詰まる切なさを感じるようになったのはいつからだろう。
そういう言葉が、あの人に潜む自己肯定感の低さの現れなのか、それとも案外リアリストの彼のことだから「事実を言ったまで」という認識なのかもわからなくて、「そんなことはないでしょう」とやんわり否定してみても、それはそれであの人の誇りを傷つけるような気もする。
「今やLove Yourselfのメッセンジャーでもある俺たちに、そんな自虐は相応しくないですよ」
と得意の理詰めで説得するのは簡単だ。
あの人のことだから、「ヤアー、ナムジュナは頭が堅いなあ。それでみんなが笑うならいいじゃないの」
とブツブツ言いながらも、チームの足を引っ張るならと自重するに決まっている。
でもそれは、俺のこの切なさの本心じゃない。
その日も、俺たちには珍しい国内のトーク番組で、目一杯照れながらも素直に伝えたホビの誉め言葉を、あの人はいつものようにまぜっかえした。
どうして長男らしく厳しくしなかったの?というMCの問いに
「みんなの溢れる才能に比べたら自分はダメだと思ったんです。みんな平凡だったら(最年長として)厳しくしていた」と自虐で笑いを取りに行く。
(ほらまた、そうやって)
心はそう叫ぶけど、言葉にはしない。
あなたがそれを望まないのをわかっているから。
そうしてただ歯がゆさを噛みしめる俺を後目に、ひどく優しい顔であの人を見つめたテヒョンが口を開く。
「それって、僕たちみんなへの褒め言葉みたい」
気遣いや考えすぎで雁字搦めになっている俺には到底まねのできない眩しいほどの率直さで、敬愛する兄への愛情を躊躇なく表すその言葉に、俺は間髪入れずに乗っかった。
「かっこいい、さすがだな」
畳み掛ける俺たちに、あの人は少し困ったような、はにかんだような、一本取られたなみたいな顔をする。
それはまさに、時々考えすぎてネガティブになりがちな俺たちに、あの人がいつもくれたリフレーミング(違う枠組みから物事を見る視点)そのものだったからだ。
本当は理屈なんかない。
ただ俺が大好きなあなたが、ねじ曲がって伝わるのが悔しいんだ。
もうこれ以上、あなたが侮られるのも嗤われるのもイヤなんだ。
たとえそれが、あなた自身からであっても。
いつか駄々っ子のようにそう打ち明けたら、
あなたはそのキレイな眉尻を下げて、やっぱり困ったように笑うだろうか。