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長尾side
入学式の日、裏庭にでっかい桜の木があるのを見た。
桜は表の庭にもあって、そちらに気を取られ裏庭のこの桜を見に来る人が少ないようだった。
あの日から2年経った。
3年生の新学期、いつものように裏庭へと足を運ぶ。
僕が近付くとふっと風が吹いて、花びらを散らす。
長「なんや、もう散ってまうんか…」
手に落ちた花びらを見て、少し寂しくなる。
道「遅かったやん」
ふと声がして、前を見る。
木のそばに立つ、スラッとした美青年。
長「ごめん、待った?」
道「待った。帰ろか」
長「うん」
彼は僕の友達、道枝駿佑 通称 みっちー
僕の親友。
初めて出会ったのは高1の2学期。
“同級生にヤバいぐらいのイケメンが居る”
という噂は、度々友達から耳にしていた。
僕も結構うるさい友達とツルんでいたので、色んな噂を耳にしては他人事として聞いて笑っていた。
ある日
友A「なぁ謙杜!道枝が5人の女子に追いかけられてるぜ!!見に行こうぜ!」
という話が突然飛び込んできた。
それは面白そうだなぁと他人事に思った僕は、友達とそれを見に行った。
道「ッは、ほんまにやめて、俺誰とも付き合ってへんよッはぁ、勘違いや、」
現場に行くと走って息を切らしながら女の子に囲まれる道枝くんと、発狂気味に話す女の子たち。
割と修羅場だった。
女A「嘘だよ!だって私Bから聞いたの、付き合ってるって!」
女B「付き合ってないなんて言わせないよ、?!あんなに思わせぶりな態度取っといて、返事も濁して!」
女C「道枝くんは私と付き合うの!早くどいてよ勘違い女!」
女D「Aはリーダー気取らないでよね?!あんた道枝くんの家までストーカーしたの知ってんだから!そんなやつ相応しくない!」
女E「ちょっと押さないでよ、私が告白してたのよ!?邪魔すんな!」
道「ッちが、全員無理やって!!」
女達「誰か一人を選ばないと離さない!」
道「…俺は誰も好きじゃないし、誰とも付き合ってないし、誰の事も嫌いじゃないし、告白の返事もお断り。もう離してくれへん?」
女A「そんな…」
女D「道枝くーん待ってー!」
道「しつこい…俺目立つの嫌いなんよ。あんなにギャラリー集めて、大事にしないでくれる?迷惑や。」
最後はハッキリと言い切って閉めた道枝くん。
他の女の子たちも唖然としていた。
友A「なーんだ、もう終わっちまったなー」
友B「だなー、つかまじ女子の顔やばかったくね?笑 おーい謙杜!戻ろうぜー!」
長「あー…後で行く、ちょっと飲み物買うわ」
友A「お、そう?じゃあ後でなー!」
なんだかかれが気になって
友人と別れて、僕は彼を追いかけた。
たどり着いたのは裏庭の桜の木の下。
もう葉になっていて、彼はその木の下で座ってうずくまっていた。
長「なぁ、水飲まへん?」
かける言葉が分からなくて、さっき買った冷たい水を咄嗟に彼の首に当てた。
道「ひゃい!!ッ冷た…だ、誰?」
長「ふふ、ぼく長尾謙杜っていうねん!1-5やで!」
道「…!俺、1-7の道枝、この水貰ってええの?」
長「ええよー!さっき猛ダッシュしてたもんなぁ!」
道「み、見てたん…?」
長「見てたで、モテモテやなぁみっちー!」
道「みっ…ちー?」
長「道枝やから、みっちー!」
道「…ふは、なんやねんそれ」
風が吹いて、夏の匂い。
彼はとても綺麗な笑顔だった。
彼とはそんな感じで仲良くなって、その後お昼はいつも裏庭の桜の木の影で食べている事を知った。
長「俺もここで一緒に食べてええ?」
道「ええけど…暑いで?」
長「影やから大丈夫やって、それにみっちーもここで食べてるやん。暑ないん?」
道「暑いで?」
長「暑いんかい!」
道「でも、ここなら声かけられへんから。」
なにかに脅えて、いつもここで1人で食べてるんだと知った時、切なくなった。
長「…これからは俺と一緒に食べよや、2人の方が美味しいやん?」
道「…!ええで!」
彼は嬉しそうで、本当はひとりは苦手なんだろうなぁと分かった。
後日___
長「なぁ、この桜の木で影になる空き教室があんねん。裏校舎やし1番奥で誰も知らへん」
道「それがどうしたん?」
長「そこやったらエアコン付いてるし、暑い日はそっちで食べへん?寒い日も、そっちで食べよや」
道「!ええなぁそれ!」
長「じゃあ決まりやな!」
道「ありがとう…空き教室なんか思いつかんやったわ」
長「…みっちーって犬みたいやな」
道「き、急にバカにすんなや!」
長「いやバカにしてへんよ!可愛ええなぁって思って」
ほんまにみっちーは可愛い。
この人を好きだと気づくのに、時間はかからなかった。
道「…長尾の方がかわええやん」
そう微笑む彼の顔を、よく見れなかった。
道枝side
分かってた。
俺が、他の人から距離を取られていること。
入学して、たくさんの女子に話しかけられて、みんなから1目置かれて。
何故か男は話しかけて来なくて、それがわざと1人で居るのだと思われて、クールでかっこいいと噂になって。
1人は嫌いなのに、1人になった。
何度も友達を作ろうとしたけど、結局ひとつ壁を作られている。
そんな時、長尾が現れた。
長「俺、みっちーの事好きやで?」
空き教室、廊下側の鍵とカーテンを閉めて、たった二人きりの空間。
長尾は俺と普通の友達で居てくれる。
長尾は友達が沢山いる。
なのに、俺と一緒に居てくれる。
俺の事を好きだと言う。
道「…ありがとう、俺も長尾のこと、、」
好き。
大好き。
ずっと、一緒に居たい。
道「…友達として、ほんまにめっちゃ好きやわ」
俺の言葉を聞いて笑った長尾の顔を見て、ほっとした。
長「嬉しい、やっぱ俺の親友はみっちーだけやわ!」
俺と、親友だと言ってくれる。
これ以上に良い奴おらへんやろ。
居らんよ
お前以外おらんねん。
お前は俺以外おっても
俺はお前だけやねん。
長尾は…
道「長尾とおるんが一番安心するわ」
長「おれもー!」
ほんまに俺だけ?
長尾side
長「今年もよろしくな、みっちー」
道「最後の年やなー、将来のこと考えな。」
長「ほんまや、みっちーはどうすんの?」
道「俺は…東京出るかなぁ」
みっちーはモデルになりたいらしい。
高身長とルックスを活かして働くには、ピッタリの職業だろう。
もう既に事務所は何件か目に着けているらしい。
道「長尾は?」
長「俺?俺は…大阪残るで」
道「…進学?就職?」
長「大学行こうかなーって」
親からは東京の大学を進められていた。
でもまたみっちーと同じ所にいると、更に好きになってしまいそうで。
これ以上を求めてしまいそうで。
長「…あかんのよ、東京には行けへん」
離れる事にした。
道「…そっか」
長「うん、みっちーがんばりや?応援してんで」
道「長尾も受験頑張るんやでー!」
ケラケラと笑う彼は、とても可愛い。
触れたい。
ぶわっと上がってくる感情をまたいつものように押さえ込んで、笑顔を作る。
長「がんばるわ、ありがとうな」
また今日から、桜の木の下で彼の親友として話す。