コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
今のチームでの新しいプロジェクトの打ち合わせで、俺は山本菜々子さんと一緒にクライアントに会いに行った。
クライアントは有名旅行会社。
ある温泉地のCMを手掛けることになった。
人気の俳優もCMキャラクターに決まった。
ポスターやCM撮影の前には、実際に何度か現場に足を運んで視察もする。
カメラマンとして腕がなる仕事だ。
恭香がいないのは寂しいが…
それでも、毎日の彼女の笑顔が俺の力になっていた。
『本宮さん…さっきからずっと黙ってて、どうしたんですか?』
助手席に乗る山本さんが、俺に言った。
『…ちょっと考え事してた』
『いろいろ考える事があるんですね。御曹司ともなると』
『そういうわけじゃない』
山本さんが言ってる言葉の意図がわからない。
『本宮さん、今度…良かったらお食事でも行きませんか?』
俺は、突然の誘いに戸惑った。
『悪い。そういうの苦手だから』
『そんな風には見えないですよ。いっぱいガールフレンドもいるんですよね、きっと。本宮さんなら周りが放っておかないですよね』
苦手だ…こういう女性は。
『ガールフレンドか…』
『いるんですか?』
隣から注がれる視線。
止めて欲しい。
『…今は、いない…』
『本当に?本宮さんみたいなイケメンが彼女いないなんて、嘘みたい。じゃあ、私、立候補していいですよね?』
嘘だろ…
『それは…』
『本宮さん。私、あなたの彼女になりたいです。初めて会った時から、本宮さんのこと…』
『悪い、今は仕事のことだけ考えたい。それに、彼女はいないが、俺には…ちゃんと想ってる相手がいる』
思わず言ってしまった。
『嘘…誰なんですか…?その人』
俺はまた黙ってる。
『まさか…最近よく話してますけど、恭香ちゃんじゃないですよね?』
え…
思わず息を飲み込んだ。
『まさか本当に…?どうしてあんな子』
『あんな子?ってどういう意味?』
イラッとした。
『…恭香ちゃん、いい子ですけど、やっぱり華がないって言うか…こんな言い方したら可哀想ですけど、そんなに容姿も良くないのにどうしてなんですか?本宮さんみたいなカッコいい御曹司なら選び放題でしょ』
『それが山本さんの本音か』
『…』
『御曹司なんて、俺をそんな風にしか見れない女は…到底彼女にはしたくない。同じ会社の仲間をそんな風に言う山本さんの根性が嫌いだ。仕事が出来るところは評価されてるだろうが、人間としてどうかと思う』
女性にこんな言い方をしたのは、初めてだった。
『ひどい言い方。恭香ちゃんなんかのどこがいいのか全く気が知れないわ』
『森咲は…心が綺麗なんだ。それに…顔も可愛い。あいつの笑顔は、周りを癒して俺を元気にしてくれる』
山本さんは厳しい顔付きだ。
出来れば、仕事の打ち合わせの前にはしたくない会話だったのに。