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柘榴とAI

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マリモとメンヒルの勢いに押されて、俺たちは結局ひとり1回ずつ『ガチャ』をやることになった。
俺とナガラは控えようと思ったんだが、やはりふたりだけでは嫌だったらしい。
ふたりだけで金を無駄にしたら、あとから俺たちに責められてしまうかもしれない。
それなら、俺たちを巻き込んで予防線を張っておくのが良いと思ったのだろう。
一旦建物から外に出て、別の入口から入り直す。
最初よりも行列は|捌《は》けていたとは言え、それでもやはり並んで待たなければいけなかった。
俺たちは期待に胸を躍らせ、緊張しながら、Sランクを当てる未来をそれぞれ夢見ていた。
そして30分後――
「それでは次の方、どうぞ!」
明るい声で、俺たちはガチャの装置の前へと案内された。
「えっと……誰から行く?」
「もちろんリーダーでしょ!? リーダーなんだから!!」
俺の言葉に、マリモが身も蓋もないことを言ってくる。
しかし確かに、こういう場合は『リーダー』が先に行くべきか。
「よし、分かった。俺が行こう」
「おう! 景気良く当たりを引いて来いよ!!」
「流れを作ってね!!」
「頑張ってください……!!」
仲間の声援を受けて、俺はガチャの装置の前に歩み出た。
その横では、女性職員が優しい笑みを俺に向けてくれる。
……残念だが、俺は当たりを引くぜ?
その穏やかな顔を、興奮した顔に変えてやる。
親父も、しっかり見ててくれよな。
ここで『スピードスター』の剣を手に入れて、Dランク冒険者から卒業してやるぞ……!!
「――それでは金貨3枚を、取っ手の上に乗せてください」
「お? ……なるほど、金はここで払うんだな」
俺は女性職員の言う通り、取っ手の上の|窪《くぼ》みに金貨を乗せた。
きっとこれで良いはずだ。
あとは取っ手をまわして――
……取っ手に触れた瞬間、俺の背筋をぞくっとしたものが駆け抜けた。
魔女の試練のものとはまったく違う、自身の中から湧き起る何か……。
その正体はよく分からないが、おそらくはきっと武者震いのようなものだろう。
俺の未来は今|開《ひら》ける。
ここが俺の、人生のターニングポイント――
――ガチャッ
……コロン♪
取っ手をまわすと、下の穴から透明な玉が出てきた。
……この玉は、何だ?
今までに触ったことの無い質感。透明だけど、ガラスではない。……少し柔らかい感じもする。
「ご自身でも開けられますよ」
「そうなんですか? それではせっかくなので……」
女性職員の説明の通り、玉の上下を持って軽く捻ると、簡単に分かれて開けることができた。
なるほど、これはそもそもそういう入れ物だったのか。
そんなことを考えながら、中の金属製のプレートを出して、女性職員にそのまま渡す。
……あ、しまった。
あのプレートに、何が当たるのかが書いてあるんだっけ?
全然見てなかった……。
そんな俺をよそに、女性職員は小さなプレートを確認してから、俺の結果を施設内に響かせた。
「――おめでとうございます!
Dランクのアイアンロッドです!」
「……なん……だと……!?」
慌ててプレートを見せてもらって確認すると、確かに『Dランク アイアンロッド』と書いてあった。
まさかのDランク。そして自分では使えない杖――
「何やってんだよ……」
「最低……」
「信じられません……」
――仲間の酷い呟きが、俺の胸を鋭く射貫く。
ちょっと待て、俺が悪いのか? いや、Dランクが当たる確率って、そもそも50%もあるんだぞ!?
「お疲れ様でした。
それでは当たったものは後ろのカウンターでお受け取りください」
「は、はい……」
女性職員は相変わらずの笑顔で、俺を優しく誘導した。
……ただ、仲間の全員が終わるまでは、ここで観ていても良いようだ。
それなら俺は、全員の勇姿を見届けていくことにしよう……。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
――ガチャッ
「おめでとうございます!
Dランクのシルバーネックレスです!」
「は、はあああぁあっ!!!?」
女性職員の声を聞いて、ナガラが絶叫した。
ナガラはお洒落に気を遣うヤツではないから、ネックレスが当たったところでどうしようもない。
彼女なんてのもいないから、マリモかメンヒルにあげるくらいしか選択肢は無いだろう。
「お疲れ……」
「マジか……。これで、金貨3枚か……」
ナガラの言う通り、当たったモノに対しての値段が高すぎる。
俺の当たったアイアンロッドなんて、店で買えば銀貨10枚か15枚くらいのものだ。
ナガラの当たったシルバーネックレスに至っては、銀貨3枚くらいのものだろう。
「今回は高い勉強代だと思って……。
マリモとメンヒルの結果も、しっかり見届けることにしよう……」
「……そうだな」
ナガラが力無く頷いたのを見てから、俺はガチャの装置前のマリモに目を移した。
マリモは必要なものは買う、必要で無いものは買わない――そんな性格なのに、今回は積極的だった。
やはり女性は『美容効果』を持つものに弱いのだろう。
あの効果を聞いたあと、本当に目の色が変わっていたからな……。
「リーダー、まわすよ! 応援してて!!」
「おう! 頑張れ!
マリモなら良いものが絶対に出るッ!!」
「うんっ!!」
俺の応援に、マリモは深呼吸をしてから、ガチャの装置の取っ手をまわした。
――ガチャッ
「おめでとうございます!
Dランクのポカポカ耳当てです!」
「……ッ!?」
信じられない――という表情を浮かべて固まったあと、マリモは女性職人に促されて、俺たちの元にやって来た。
こういうときに掛ける言葉なんて、そんなに多くは無いんだよな……。
「お、お疲れ……」
「ポカポカ……って、冬場に良いかもな……。
ほ、ほら? 最近夜は涼しいし?」
ナガラが珍しく、一生懸命フォローをしてくれた。
耳当てがどんなものかはまだ分からないが、名前から考えれば、冬場に最適な装飾品に違いない。
「うぅ……。……耳当てが、金貨3枚……」
マリモが呟いた言葉に、俺もナガラもしみじみと頷いた。
きっと耳当ても、値段にすれば銀貨10枚はいかないはずだ。
まさか、まさかの、ここまで当たりが無しだとは――
「リーダー! 私のことも応援してくださいーっ」
俺たちが|項垂《うなだ》れていると、ガチャの装置の前にいるメンヒルが応援を求めてきた。
そうだ、俺たちはまだ終わっていない。まだメンヒルが残っているんだ……!!
「よし、頑張れ! Sランクだ!
俺たちのことは気にしないでいいから、がつんと大物を当ててくれ!!」
「無念を晴らしてくれ……! 頼む……!!」
「メンヒルちゃん! 神様にお祈りを捧げてまわすのよ!!」
俺たちの声援を受けながら、メンヒルはガチャの装置に立ち向かった。
そうだ、困ったときは神頼みだ!!
俺たちは少なからず、それなりの信仰心を持ち合わせている。
きっと俺たちの頑張りを見てきた神様が、最後の最後で希望を与えてくれるはず――
――ガチャッ
「おめでとうございます!
Dランクのアイアンナイフです!」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
…………。
コメント
1件
ああー、これは……見事なまでに全員Dランクとは(苦笑)。リーダーが最初に引いたアイアンロッドで空気が一気に冷えたのに、ナガラのシルバーネックレス、マリモの耳当てときて、最後メンヒルのアイアンナイフで「…………」の静寂がめちゃくちゃ刺さったわ。期待して並んで、仲間同士で励まし合ってからのこの結末。金貨3枚の代償デカすぎるけど、この“全員撃沈”の流れ、笑いと切なさが半々で来るいいシーンだった。次回どう挽回すんのか気になる…!