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バタン
あいつに別れを告げて家を出た。
近くのネカフェに泊まった。何も考えたくなくてその日はすぐに眠りについた。
なぜだろう。ちゃんと寝たつもりなのに疲れは取れず、ただ体がだるかった。
数日前
「お母さん、少し話があるんだけどいいかな?」
あいつと本格的に籍を入れたりとか少し小さくても結婚式みたいなのをしたりしてあげたいなとか思ってた。だから話しておこうと思った。
わたしのことも、あいつのことも。
「なに?どうしたの?」
いつものような優しい口調でお母さんはそう言った。
「わたしは今付き合ってる人がいる。その人はわたしと同じ女の子、つまりわたしたちは同性同士で付き合ってる。普通のことでないのは重々承知の上だよ。だけどわたしたちはお互い愛し合ってて、あいつにはわたししかいないし、わたしにはあいつしかいない。そう思えるくらい愛してる。性別なんて関係な…」
「何を言ってるの?おかしい。」
わたしの言葉を遮るようにお母さんは言った。
いちばん聞きたくなかった。女手一つで育てくれたお母さん。いつもわたしの考え方を尊重して否定することはなかった。
だけど
わたしはこのとき初めてお母さんに否定された。とても悲しかった。何も考えたくなかった。そんなわたしのことはお構い無しにお母さんは続けて言った。
「どうして急にそんなこと言うの?普通は女の子は男の子のことを好きになるのよ?いつからそんな子になっちゃったのよ。それに同性同士なんてそんなの世間で通用すると思ってるの?」
『はぁ。ほんとはやく普通になってほしい。』
否定したかった。そんなことないって言ってやりたかった。だけどわたしの口から出たのはそんな望んだような言葉じゃなかった。
「そうだよね。」
出てきたのは肯定の言葉だった。
そう言ってわたしはお母さんのいる部屋から出て自分の部屋に行った。
何も考えたくなかった。とても大きな無力感に襲われて気づいたら寝ていた。
起きても気持ちはスッキリとしなくてずっと体がだるいまま。
『ほんとに別れた方がいいのかもしれない』
1度でもそう思ってしまうともう後には戻れなかった。
その日の夜にあいつのとこへ行って別れを告げた。自分で決めたことなのにどうしてもあいつの顔を見ることはできなかった。その後の反応も見ることができなくて足早に家を出た。
気づいたときには海に来ていた。
あぁ。あいつに会いたいな。