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「ふんふふ〜ん♪」
彼女は、よほど上機嫌なのか、鼻歌を歌っている。何を歌っているんだろう?まぁ、流行りの曲とかだろう。
「山村和真くん、なんの曲か気になる?」
図星をつかれて驚く。無言を肯定と捉えたのか、ふふん、と鼻を鳴らす。
「聴く?」
と俺の顔を覗き込んで、片方のイヤホンを差し出される。受け取って耳につけると、彼女は、スマホを取り出してもう片方のイヤホンをつける。そして、先程彼女が歌っていた曲を流した。意外にも悲しげな曲で、歌詞に感情移入してしまい、泣いてしまった。
「山村和真くん…?な、泣いてる!?」
また、俺の顔を覗き込んで、今度はすごくびっくりしている。俺は涙を拭うと彼女の顔を見た。見つめると分かることがある。
きれいな二重の猫目。肩まで届かないくらいの茶髪。口紅を塗ったかのような赤い唇。美人だな…。………。何考えてんだろ。
「感動的だった?」
「うん…。」
突然、彼女の性格に合わないような真剣な顔をするもんだから、こっちも緊張してしまう。俺は耳の中で響いている音楽と、彼女の顔を合体させて、勝手に感情移入し、また涙を流してしまった。
「山村和真くん、君、不登校なんだよね?」
コクリと頷く。
「勝手に解釈してごめんなんだけど、辛いことが、あったんだよね?」
さっきよりゆっくり頷く。
「そっか。ちょっとでもその辛いことがなくなったら…、いいね!」
まるで自分のことのように泣いて、つらそうな笑顔を見せる彼女は、一体何者なんだろうか…。
俺は、その晩、彼女のことが頭から離れなかった…。