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のんの
105
tamaki
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《秋の随に》 snjn
*釣殿:御屋敷の池の水面に張り出して建てられた建物。屋根はあっても壁が無く、柱だけで見晴らしが良い。
*御簾:和室におけるカーテン的存在。
*几帳:持ち運び可能な小型カーテンみたいなもの。
*龍頭鷁首の舟:龍の頭×鳥の首が船首に付いた、不思議な小型船。平安時代の御屋敷の池で浮かべるのが流行ったらしい。
*《古今観月集》より再掲。次ページより新作
*佐野
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「釣殿にまで几帳を持ち込む月観なんて
信じられない」
仁宮は呆れたように呟くが
仲秋の月の光の
強いことこの上なく
あまりに美しく清廉な輝きが
むしろ 禍々しく
仁宮にこれ以上、月光を浴びせるなど
有難しことだ。
「では舟から水面の月を眺める誘いを
断らねばよかったのに」
「舟は酔うので、無理なのです」
「波ひとつ立たぬ池に浮かべてる舟で
動かぬのに。酔うわけない」
新しく誂えた
龍頭鷁首の舟に乗せたかったものを
仁宮が断るゆえ
釣殿で 池の水面に映る月を
眺むることにしたが…
御簾の無い ここでは
強く射し込む 月明かりが
仁宮の白き肌を照らし
宵闇に まざまざと艶かしく浮かび上げ
その通った鼻筋や
伏せた睫毛に
月光が落とす影は 妖しく
常より、殊更に儚げに美しく見える
仁宮の姿に驚いて
月明かりを浴び過ぎぬよう
釣殿に几帳を運ばせたのであった。
さても
あちらの景色が透けて見えるような
この心許ない几帳では
愛しき者を 月光から
護れぬようにすら思うのに
あぁ 今からでも屏風を持って来させようか
「竹取の語りや巻物を知っているか?
この霊力の強そうな月の光に照らされたら
仁が月へ攫われそうだ」
「池まで覗くなって…
何しにここに来たのよ」
ため息を零し
首を傾ぐ様が愛らしいその身へ
つい、腕をまわし、こちらへ引き寄せる
「さればこそ盃を、酒で満たすのであろう?」
盃に映された月は 小さいが
これはこれで 奥床しく 趣深い
何しろ 盃を二人で覗く折に
頭を寄せることになるのだから。
腕の中
おとなしく収まる仁宮を見ては
安堵して
僅かに盃で揺れる月姿ごと 口に含み
「さっきから酒を注げば
たちまち月ごと飲んでるくせに。
これでは月観になりませ、、」
その柔らかな唇を直ぐに 塞ぎ
酒と舌を注ぐことも、出来る
己の手は
いつの間にか その細き頸を支え
身じろぐことを許さず
口の中を 舌で隈無く探れば
未だ 盃を持ったままの
こちらの袂を握り締めながら
あえかな声を 微かに上げる仁宮
月の光が照らさずとも
わかるのは
伏せった目蓋が上がれば
飴色のまなこが
水面の如く潤み
朱が滲む様に 染まる耳と頰
観月の宴などより
早く
その纏うもの全てを解き
白絹の肌を
味わうよう
指と唇でなぞって……
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コメント
1件
何度拝読しても美しく溜息が漏れ出ます… 飴色のまなこが 水面の如く潤み お気に入りです✨