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正輝
付き合って三年の彼女と同棲している家に無事に帰宅した。
いつも出迎えてくれる彼女の姿がないことに疑問を覚えた。
唯
部屋の奥からうめき声が聞こえる。
正輝
彼女の名前を呼んでも返事がない。
俺は急いでリビングへと駆け付けた。
するとそこには、 血だらけの彼女の姿があった。
正輝
血で汚れた首元に噛み跡、 身体を揺さぶってみるが反応がない。
正輝
俺は怒りに震え、 うなだれていると、 彼女の身体は急に動き出し、 俺を襲ってきた。
唯
正輝
誰もゾンビにならないように、 ワクチンは打っていたはず。
正輝
俺は暴れ襲い来る彼女を必死に抑えながら、 一つの結論にたどり着く。
正輝
どうして彼女がゾンビになってしまったのかは分からない。
しかし、今までのワクチンでは対処できない、 新種だということは明確だ。
だから、もう、 選択肢は一つしかない。
正輝
俺は護身用に持っていた銃を、 彼女の頭に突きつけ、 思いきり引き金を引いた。
一度ゾンビ・パンデミックに陥った、 日本の法律は少し変わってしまった。
パンデミックから回復したはずだった現代では、 一般人の銃や武器の所持、 使用が例外なく認められている。
街は、パニックになっていた。
「助けてくれ……!」
「いや、いやあああああ!」
各場所から悲鳴やうめき声が聞こえてくる。
俺はそんな雑音に耳を塞ぎながら、 車で友人の家へと向かった。
友人の家に着くと、 ドアが開けっ放しになっていた。
恐る恐る入ると、 友人が何かを見つめ、 部屋の真ん中に立ち尽くしていた。
正輝
幸次
正輝
俺の暗く淀んだ表情を見た友人は、 俺の肩に手をそっと置いた。
幸次
お互い、大事な人を失う気持ちは、 前回のパンデミックで十分に味わっていたつもりだった。
しかし、本当に身近な人間がいなくなるということは、 こんなにもやるせない気持ちになるのだと実感した。
正輝
友人の手には一本の注射器が握られていた。
幸次
正輝
幸次
友人の話では、ゾンビに追われ、 目の前で事故を起こした車には、 怪しげな黒スーツの二人組が乗っていたと言う。
武器でも探そうと思っていたところ、 近くに五本の注射器が入ったケースを見つけたらしい。
正輝
幸次
POLONOIDとは、 前回のパンデミック終息の際に使われたワクチンの名前だ。
これを打てばゾンビになるのを防ぐことが出来る。
正輝
幸次
こんな奴らのせいで俺の彼女は……唯は……。
正輝
幸次
前回のこととは、 別の友人がPOLONOIDを打った時、 副作用で心臓発作を起こし、 そのまま亡くなってしまったのだ。
だから、俺は今回のワクチンを打つのが怖い。
正輝
幸次
正輝
俺たちは覚悟を決めた。
ケースに入っていた五本のうちの二本を取り出し、 同時に腕に注射を刺した。
幸次
正輝
二人でそっと胸を撫でおろした。
安心したのも束の間、 後ろからうめき声が聞こえてきた。
ついにこの家にもゾンビが入ってきてしまった。
幸次
正輝
幸次
ゾンビの弱点は頭。
脳はもちろん機能していないが、 本能で動いていることには変わりない。
その根幹を潰せば、 ゾンビは動かなくなる。
正輝
幸次
正輝
友人が俺を制止した。
ゾンビをよく見てみると、 それは会社の後輩だった。
幸次
正輝
幸次
友人はケースから注射器を一本取り出し、 針のカバーを外す。
正輝
幸次
正輝
俺はゾンビに銃を向ける。
一度は頭に照準を合わせるが、 すぐに数センチずらして後ろの花瓶を撃った。
するとゾンビはそっちに反応し、 一瞬の隙を見せた。
幸次
友人がダッシュでゾンビに近づき、 首元に注射を打つ。
暴れ出したゾンビに友人は吹き飛ばされた。
正輝
幸次
ゾンビはしばらく暴れた後、 急に倒れた。
そして、むくりと起き上がる。
小雨
正輝
小雨
小雨里奈はゾンビから人間に戻ったようだ。
正輝
小雨
俺は後輩の手を引っ張り、 友人、後輩とともに車に乗り込んだ。
車を走らせること数時間、 俺は自分の変化に気づいていた。
正輝
小雨
正輝
言葉が上手く喋れない。
幸次
小雨
幸次
そんなことを言われても、 上手く喋れなくてムズムズする。
正輝
幸次
正輝
友人はなぜか俺の言葉が分かるようだ。
仕方がないから、 通訳をしてもらうことになった。
さらに数時間走ると、 田舎の町に着いた。
俺たちは車を降りて、 人を探してみることに。
幸次
小雨
正輝
俺たちは湧き出てくるゾンビを倒しつつ、 古い病院へとたどり着いた。
中には数十人の避難者が一つの部屋に集まっていた。
俺たちはここまで来た経緯を長老に話す。
長老
なんだか希望を持たれてしまった。
ただ、ゾンビの量が非常に多く、 この病院ももうもたない。
俺たちは町にあったバスを借り、 避難者を全員乗せ、 町を後にした。
数時間走り続けていたが、 さすがにガソリンが足らず、 俺たちは全員歩きになった。
「いやあ! ゾンビよ!」
「助けてくれ!」
もちろん全員を助けられるはずがない。
その混乱の中、 何かにぶつかり、 俺は顔からやわらかいものにダイブした。
ヤンキー
ぶつかったのは巨乳で美人の女ヤンキー。
あろうことか、 胸に顔を突っ込んでしまっていた。
正輝
なんとかヤンキーを説得し、 共にゾンビと戦う仲間になった。
俺たちは歩き続けた結果、 ある研究所に着いた。
そこでは元々POLONOIDの研究をしていたらしい。
避難していた研究者が何人かおり、 残っていた二本の新しいワクチンから増産をお願いした。
数か月が経ち、 軍人ばりに俺たちは強くなっていた。
しかし、事件は起こる。
ヤンキー
ヤンキーが叫び、危険を知らせる。
正輝
俺は意気消沈し、諦めかけていた。
しかし、友人と後輩は、 そんな俺の心を叩き起こした。
幸次
小雨
そうだ、俺たちは、 このゾンビ・パンデミックを終わらせるんだ……!
決死の覚悟で巨大ゾンビに挑んだ。
腕を切り落とし、 目を突き刺し、 頭をボコボコに潰した。
ゾンビ・パンデミックから一年が経った。
ワクチンの増産が完了、 日本からゾンビは消え去った。
あの時の巨大ゾンビを倒した俺たちは、 英雄として日本中に名前を轟かせたのだった。