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五甚短編集

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五甚短編集

4 - 夢なら醒めないで

♥

64

2023年12月07日

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気がつくとそこは海の上

水面の上に文字通り"立っている"

不思議と沈んだりすることはしない

意識はしっかりしているが これが"夢"だということはわかる

つまり『明晰夢』だ

五条悟

それにしても…ここどこ

空には視界の端から端までを覆う星空

辺り一面には空を反射する水面

小さな星々が輝く中 大きくあかるい、まあるい月

全てがなかなか体験できない 幻想的な景色なのに

どれもが自分の目を惹かない

それでも"夢"だというのなら 何処かに必ず大切な何かがあるのだ

五条悟

どこだ…

辺りを見回す

五条悟

……っ、どこだ…

焦燥に駆られる

五条悟

っ、どこだよ…!

どこも探すが見当たらない

そもそも"何"を探しているかも わからない

ただひたすらに"何か"を求める

自分の中にポッカリと空いた穴を埋める "何か"を

その中でぼうっと月が輝き出した

五条悟

…どこ、いくんだよ

それにつられるように ふらふらとついていく

行き着いた先はそう遠くない 景色も変わらないところ

一つだけ違うのは 目を凝らしてやっと見えるところに

着物姿の男が1人

五条悟

……おい

声をかける

男は答えない

五条悟

…オマエ、名前は?

問いかける

それでもまだ、答えない

五条悟

…なあ、聞こえてんだろ?

一歩ずつ、距離を縮める

男は立ったまま動かない

やっと、ちゃんと見えるところまで来て 顔を確認する

五条悟

…オマ、エ…は…

一度だけ、この男に会ったことがある

その時は気にも留めてなかったが この男は"特別"だ

世界にとっても 自分にとっても

五条悟

なあ

五条悟

オマエ、名前は?

一歩近づく

五条悟

昔、どっかで会っただろ

五条悟

それこそ家の周りとか
会合とかでさぁ

さらに一歩、近づく

ようやく手が届く___ それだけの距離になったその時

ようやく男が口を開いた

着物の男

___

だが、言葉は音にならず それに合わせて体は"海"に引っ張られ

五条悟

あっ!…っおい!

意識はそのまま沈んでいった

この"夢"はここで終わった

夏油傑

…る

夏油傑

悟!

五条悟

っ、あ…

夏油傑

次の任務の話

夏油傑

ちゃんと聞いてた?

五条悟

あー……

五条悟

ワリ、聞いてなかったわ

夏油傑

聞いてなかったんじゃなくて、寝ていたんだろう?

五条悟

…マジ?

ヤベ…寝てた、のか

夏油傑

それで?

五条悟

何が

夏油傑

任務の話そっちのけで寝続けるほどいい夢見ていたんだろう?

五条悟

あー…いや、それがさぁ…

五条悟

なんっつーか

五条悟

よく、わかんなくて

五条悟

星の…海、の中に

五条悟

着物を着ている人がいて

五条悟

ソイツのこと、どっかで見たことあんだけど

五条悟

思い出せなくて…

五条悟

まあ多分、家関連だとは思うけど

五条悟

でもソイツが俺にとっての"何か"で

五条悟

"夢の中"では俺はソイツを求めてた

五条悟

………多分

夏油傑

…へえ

五条悟

そんで!

五条悟

名前とか聞いたけど答えてくんなくて

五条悟

…あ、でも、最後何か言いかけてたよな…

五条悟

ま、夢はここで終わったけど

夏油傑

ふ〜〜〜〜ん

五条悟

…んだよ

夏油傑

いや、別に?

夏油傑

悟はその人のこと好きなのかなって

……………………………………は?

五条悟

…………っは?

五条悟

いや

五条悟

いやいやいや

いや、そんなはずは

夏油傑

そんなに否定すると余計怪しいよ、悟

五条悟

は?うっぜ

そんな、はずは

五条悟

…………ない、と思うけど

夏油傑

何か言った?

五条悟

………なんも

俺が

アイツを…?

好き、とか

五条悟

っ、ねぇよ!!

夏油傑

うわ、うるさ

そんなわけねぇじゃん

ふと気づくとあの"夢の中"にいた

五条悟

…また夢かよ

五条悟

どんだけ寝てんだよ、俺

それだけ任務に追われて 寝不足なのかもしれないが

ぐるりと辺りを見回すと前回同様 満点の星空とそれを映す海

それから、ぽっかりと浮かぶ まあるい月

前回と違うのは あの着物の男が隣で 腰掛けていることだった

五条悟

…え、なんで

着物の男

『なんで近くにいるのか』

着物の男

ってか?

ニヤリと悟の顔を覗き込むように笑う

五条悟

っ、は!?

五条悟

オマエ喋れんじゃん!

着物の男

喋れねぇなんて言ってねぇよ

嬉しかった

自分の問いかけに 答えが返ってくることに

五条悟

じゃ、じゃあ名前は?

着物の男

名前は言えねぇ

五条悟

は?

五条悟

…じゃあ俺とどこで会ったか覚えてる?

着物の男

さぁな

五条悟

何それ答えになってねぇじゃん

五条悟

じゃあ歳は?20?もっと若い?

着物の男

どうだろうな

五条悟

何一つ答えてくんねぇじゃん!

憤慨した勢いで詰め寄る

着物の男

そりゃあオマエ、"夢"だからな

五条悟

……"夢"…?

そう

そうだ

夢なのだ

五条悟

…ああ、そっか…夢か

着物の男

夢で自分の知り得ない情報が聞き出せるわけねぇだろ

五条悟

そうだけど……

この男のことを知る機会がなくなった

そう思うだけで何故か、気分が落ち込む

五条悟

あれ

ふと、疑問に思った

会ったことがあるだけで この男のことは何も知らないはずなのに

『何故コイツは喋るのか』と

五条悟

じゃあなんでアンタここにいんの?

五条悟

1回かそこら会ったことがあるってだけで?

五条悟

アンタの言う『知り得ない情報が得られるわけがない』って法則に従うなら

五条悟

喋るワケなくね?

着物の男

……チッ

着物の男

変なところ鋭くなってんじゃねぇよ

五条悟

なるほどね

五条悟

じゃあアンタも"夢"でここにいる

五条悟

現実では生きた人間ってことであってる?

着物の男

残念ながらあってる

男は心底残念だという顔で肯定する

ただの幻ではなかったことに歓喜し 片っ端から質問攻めにしていく

五条悟

俺に話しかけたってことはやっぱ俺たち会ったことあるよな?

五条悟

じゃあ改めて名前教えろよ

五条悟

現実では何してんの?学生?

五条悟

もしかして初めて会った時もこの着物着てた?

着物の男

……はぁ

着物の男

ぴーぴーうるせぇな、坊ちゃん

着物の男

名前は教えねぇっつったろ

五条悟

名前くらいいいじゃんケチ!

五条悟

てか坊ちゃんって何?アンタは俺のこと知ってるってこと?

五条悟

てことは呪術師?

五条悟

着物を着てるのをみると御三家あたり?

着物の男

オマエな…

これでもかというほど眉間に皺を寄せ 大きなため息をつき うざったそうに遇らう

着物の男

詮索すんな

着物の男

そーゆーコトする男はモテねぇぞ

五条悟

そう?

五条悟

これでもキャーキャー言われてるケド?

着物の男

付き合ったら3日ももたねぇだろ

五条悟

んなことねぇし!

膝の上で頬杖をついたまま 視線だけ悟に向け、笑う

着物の男

どうだかな

初めて見る楽しそうに笑う表情に 心拍数が上がる

五条悟

(…ほんとに、傑の言う通りだったかも)

高鳴る鼓動と上がる体温 2人しかいない空間 楽しげに笑う気になっている人

この状況全てが 悟の味方をしている気がした

五条悟

(今なら、言ってもいいんじゃね…?)

人生初めての一世一代の告白

五条悟

…じゃあアンタが俺と付き合って

五条悟

俺がいい男だって証明してよ

固唾を飲む

緊張してじっとりと汗ばむ手

視線も落ち着きがなく 男の顔と自分の足元を行ったり来たり

着物の男

着物の男

ふは

着物の男

寝言は寝て言えよ

着物の男

ああ、でも今は寝てるんだっけか

フラれてしまった それも

五条悟

(誤魔化された…)

落ち込んだ 一世一代の告白だっただけに

膝を抱えて顔を伏せる

五条悟

(ああ、どうしよう…)

恥ずかしいし、悔しい

五条悟

(告白するのって、こんなに大変だったんだ…)

会ったのがいつだかわからなくて 話したのは今回が初めて

五条悟

(そんなの、オッケーしてくれるワケねぇじゃん…)

暫くの沈黙

隣からの反応がないのが怖くなって ちらりと横目で様子を伺う

するとそこには 目を見開いて固まる男の姿

着物の男

…オマエ

着物の男

冗談じゃねぇのかよ

心底信じられないという目で問われる

五条悟

こんなこと

五条悟

冗談なんかで言うかよ

相手から視線を外し ぶっきらぼうに返す

着物の男

はぁ…

着物の男

五条の坊ちゃんは見る目ねぇのな

五条悟

…俺に、とって…

自嘲気味に笑う姿を見て 目の前がカッと赤くなる

五条悟

俺にとってアンタが足りない"何か"だった!

五条悟

俺にとってアンタが!

五条悟

唯一だと感じた!

五条悟

それだけじゃダメなのかよ!?

立ち上がり怒鳴り散らす

五条悟

それに!

五条悟

真っ黒な髪も!

五条悟

切れ長で周りをよく見る目も!

五条悟

着物着てるのに足癖悪いところも!

五条悟

ちょっと乾燥してる手も!

五条悟

笑うと片側だけ上がる口角も!

五条悟

口元にある傷痕だって!

五条悟

俺には全部!綺麗に見える!

五条悟

これでも見る目がないって言えるか!

言いたいことは言い切った

全力で伝え、息切れがする

どうだと言わんばかりの顔で相手を見る

すると男も先ほどより 信じられないと言う顔をしていた

五条悟

……なに

五条悟

言いたいことでもあんの

着物の男

っ、はぁ…

着物の男

オマエ、馬鹿だろ

五条悟

っ、は、はぁ!?

五条悟

告白した男に馬鹿って何!?

着物の男

俺なら恥ずかしすぎて死ねる

五条悟

ヴッ…

五条悟

お、れは…!恥ずかし、かったけど

五条悟

気持ちを知ってもらいたかったからで…!

着物の男

わーってる

男は頬杖をついていた手を ひらひらさせる

着物の男

……空も、白んできたな

五条悟

え…?

男の呟きにつられて辺りを見回す

男の言う通り、空は白んできていて もうじき夜が明けることを示す

五条悟

夜が明けたらどうなんの

着物の男

そりゃオマエ、"夢"から醒めるに決まってんだろ

"夢"から醒める

それはこの男との別れを意味していた

五条悟

や、やだやだ!

五条悟

やっと会えたじゃん!

五条悟

やっと見つけた、俺の足りないもの!

五条悟

夢から醒めたら、もう…

五条悟

会えないじゃん…

別れの空気にあからさまに落ち込み 顔を伏せる悟

それを見て何を思ったのか 男は悟の頭を撫で始めた

着物の男

別に

着物の男

お互い生きてるんだし、一生会えねぇわけでもねぇだろ

五条悟

えっ!?

五条悟

会ってくれんの!?

五条悟

じゃ、じゃあ連絡先!

五条悟

連絡先交換しよ!

男の励ましを聞いた悟は機嫌を取り戻し わたわたと携帯を探し出す

五条悟

あっ、あれっ?

五条悟

携帯ない…

着物の男

夢の中に持って来れるわけねぇだろ

着物の男

つか連絡先教えるなんて言ってねぇよ

携帯がない事と教えてもらえない事で またしても目に見えて落ち込む

着物の男

…オマエ、忙しい奴だな

着物の男

まあ

着物の男

術師やってんならどっかで会えんだろ

五条悟

…!

五条悟

そっか

着物の男

味方とは限らねぇけどな

五条悟

……そこは、味方でいて欲しいんだけど

着物の男

はは

膨れっ面になる悟 そんな悟の頬をつつく男

五条悟

(その時間が)

五条悟

(いつまでも続いたらいいのに)

その願いは届かず 白む空と昇る太陽

五条悟

はあ〜

五条悟

もう時間、か

五条悟

ありがとう

五条悟

アンタに会えて、よかった

着物の男

…甚爾

五条悟

…え?

甚爾

甚爾。俺の名前

甚爾

次会う時まで忘れんなよ

甚爾

じゃあな、悟

五条悟

あっ、ちょっと…!

そう言い残し、男_甚爾は消えていった

五条悟

急に消えんな、ばーか

そう言いしゃがみ込むが ふと、あることに気づく

五条悟

あっ、アイツ…俺の名前…!

悟も、この"夢"から消えていった

夏油傑

…悟

五条悟

……んぁ…?

夏油傑

今日はよく寝るね

五条悟

うっわ、デジャヴ

頭をガシガシと掻いて 唸り出す悟

夏油傑

それで?

夏油傑

気になるあの人には会えたかな?

五条悟

………とんでもねぇ爆弾落としてったっつの

夏油傑

へぇ

夏油傑

気になるな

五条悟

教えるわけねぇだろ!ばーか!ばーか!

夏油傑

君、頭いいのにたまに馬鹿になるよね

五条悟

うっせ!

真っ赤な顔は夕日に隠れないほど赤く 夕日に負けないほど熱くなっていた

五条悟

次、会ったら覚えてろよ…

ぼそりと呟かれた音は誰にも届かず 2人が再開するのはまだ、先の話

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